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交通事故の通勤災害で労災保険と自賠責保険のどちらを使う?

最終更新日 2024年 10月03日

この記事を読むとわかること

仕事中にケガをしたり、死亡した場合は「労働災害(労災)」になります。

そして、労災の中でも、通勤途中の交通事故によるものを「通勤災害」といいます。

では、通勤災害の労災が認められる条件とは、どのようなものなのでしょうか?

一体、誰が損害を補償してくれるのでしょうか?

この記事では、知っているようで知らない交通事故の労災(通勤災害)における、労災保険と自賠責保険の関係、どちらを使うと得かなどについて弁護士が解説します。

この記事を読むと次のことがわかります。

  • 労働災害(労災)とは?
  • 業務災害と通勤災害について
  • 労災保険と自賠責保険の関係とは? どちらを使うべきか?
  • 交通事故の通勤災害を弁護士に相談・依頼するメリット

ぜひ最後まで読んでください!

労働災害(労災)とは?

労働中のケガや病気、障害、死亡を労働災害(労災)といいます。

労災には、大きく分けると「業務災害」と「通勤災害」の2種類があります。

「業務災害」とは、業務中にケガをしたり、病気にかかった場合、または死亡した場合などです。
「通勤災害」とは、通勤中の交通事故などによるケガや後遺障害、死亡の場合です。

【参考情報】
厚生労働省「労働災害が発生したとき」

労災が認められる条件とは?

「業務災害」

業務災害は、業務と労働者の負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺障害)、死亡との間に因果関係がある場合に労災と認定されます。

労災認定されるためには、次の2つの基準で判定します。

(1) 業務遂行性=労働者が使用者(会社)の支配下にある状態
(2) 業務起因性=業務に内在する危険性が現実化し、業務と死傷病の間に一定の因果関係があること。

なお、業務中のケガや死亡であっても、すべてが労災認定されるわけではないことに注意が必要です。

【参考情報】
厚生労働省「業務災害について」

「通勤災害」

通勤災害は通勤中のケガなどが対象になるため、仕事と関連していることが必要になります。

通勤とは、次のような移動を合理的な経路と方法で行なうことをいいます。

(1)住居と就業場所との往復
(2)就業場所から他の就業場所への移動
(3)単身赴任先住居と帰省先住居との移動

たとえば、通勤途中にお酒を飲むために飲食店に立ち寄るなど、通勤とは関係のない場所に行ったりすると、通勤ではないとみなされ、通勤労災は認定されないことになります。

ただし、日常生活を送るうえでの必要な行為として、たとえば日用品を買うためにスーパーやコンビニなどに立ち寄り、短時間で買い物を終えて合理的な通勤経路に戻れば、通勤途上となります。

しかし、買った物が日常生活に必要のない商品であったり、仕事とは関係のない場所(飲食店やアミューズメント施設など)に行ったような場合は「逸脱中」ということになり、通勤災害とは認められません。

【参考情報】
東京労働局「通勤災害について」

通勤災害(交通事故)の解決までの流れ

交通事故で通勤災害にあった場合、通常は次のような流れで、手続きを進めていきながら解決を目指します。

ここでは、ケガをした場合を例に説明します。

(1) 事故発生時

まずは落ち着いて、次のことを確認し、手続きを行なってください。

・事故状況、自分と相手のケガ、物損の状況などを確認
・加害者の身元を確認して警察へ連絡(届け出)
・加害者の車検証、自賠責保険、任意保険の確認
・自分の任意保険などの確認

(2)入通院をして治療開始

初めは「たいしたことない」と思っても、交通事故後に時間が経過していくにつれ、痛みがひどくなることもあります。

必ず、すぐに病院で診察、治療を受けることが大切です。

(3)症状固定の診断

治療のかいなく、ケガが完治せず、これ以上の治療効果が見込めない場合、主治医から「症状固定」の診断を受けることになります。

症状固定となると、後遺症が残ってしまうことになるので、保険会社から「自賠責後遺障害診断書」をもらい、主治医に書いてもらい、自賠責後遺障害等級の認定を受けることになります。

【参考記事】
後遺障害等級認定とは?認定の仕組みと異議申立のポイント

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(4)自賠責後遺障害等級の認定と確定

等級が1つでも違うと、被害者の方が受け取ることのできる損害賠償金(保険金とも示談金ともいいます)が数百万円、場合によっては数千万円も違ってくるので、後遺障害等級はとても重要なものです。

ところが、じつは認定される後遺障害等級は絶対に正しいわけではありません

かといって、等級が本当に正しいかどうかの判断をするのは、交通事故の素人である被害者の方には難しいでしょう。

ですから、ここでは交通事故や通勤災害(労災)に強い、実務経験が豊富な弁護士に相談することを検討するのがいいと思います。

(5)示談交渉

通常、後遺障害等級が確定すると、加害者側の任意保険会社から示談金の提示があります。

この金額で納得がいけば示談成立となりますが、不満がある場合は示談交渉に入ります。

しかし、この金額、本来であれば被害者の方が受け取ることができる金額よりも低いことがほとんどです。

それは、なぜなのか? 

次の解説を読んでいただくと、その理由がわかってしまいます。

(6)示談交渉が決裂したら裁判へ

示談交渉が不成立となった場合は訴訟を提起して、裁判に入ることになります。

「裁判となると気が引ける」、「できればしたくない」という人もいますが、じつは裁判で判決が出た場合、被害者の方が受け取る損害賠償金が増額する可能性が一段と高まります。

詳しいことは弁護士に問い合わせてみるといいでしょう。

最終的に和解が成立すれば、保険会社から示談金が支払われて解決となります。

労災保険と自賠責保険の違いについて

労災保険

業務中や通勤中に交通事故にあった場合(通勤災害)には、労災保険を使うことができます。

労災保険とは、被害者の方が労災認定を受けた場合、本人やご遺族に対して保険給付を行なう制度です。

災害補償制度が「労働基準法」や「労働者災害補償保険法(労災保険法)」といった法律で定められているため、労災保険は国から補償を受けることになります。

労災保険は、健康保険とは違い、労働者の自己負担額がないというメリットがあります。

【参考情報】
厚生労働省「労災保険給付の概要」パンフレット

自賠責保険

自賠責保険は、自動車を運行する場合は必ず加入しなければならない強制保険ですから、業務中や通勤中の交通事故の場合でも、もちろん使うことができます。

ただし、労災保険と自賠責保険で、同じ損害項目について両方から二重に支払いを受けることはできません

どちらか一方から支払いを受けたら、他の分は控除されます。

労災保険と自賠責保険について、どちらを優先させるかについて法律の規定はありませんが、労災保険を管轄する厚生労働省から次のような通達が出ています。

「労災保険の給付と自賠責保険の損害賠償額の支払との先後の調整については、給付事務の円滑化をはかるため、原則として自賠責保険の支払を労災保険の給付に先行させるよう取り扱うこと」(昭和41年12月16日基発1305号)

ただ、通達というのは下級行政庁を拘束しますが、労働者に対する強制力はないので、労働者はどちらの保険を優先させるのかを自由に決定することができます

労災保険と自賠責保険はどちらを優先するべきか?

ただし、次のような事情がある場合には、労災保険を優先させたほうが有利になる場合があります。

自分の過失が大きい場合

・交通事故に関して自分の過失が大きい場合
・過失割合について相手方と争いになっていて解決のめどが立っていないような場合
・自賠責保険では過失割合が7割以上の者

これらに対しては、5割~2割の範囲で保険金額が減額されてしまうのですが、これを、重過失減額といいます。

なお、労災保険には過失割合による減額はありません。

加害者が無保険(自賠責保険に加入していない)の場合、または自賠責保険しか加入していない場合

交通事故の通勤災害(労災)で加害者が無保険の場合、自賠責保険は使えないので選択肢はありません。

加害者が、自賠責保険には加入しているが、任意保険には加入していないような場合は、労災保険を優先させたほうがいい場合があります。

しかし、労災保険には慰謝料がないので、自賠責保険を優先させて傷害部分の支払い限度額である120万円を治療費で使い切ってしまうと、慰謝料がもらえなくなってしまう場合があります。

この時、労災保険を優先させて治療を行ない、労災保険から自賠責保険への求償が行なわれる前に自賠責保険に請求すれば、自賠責保険から慰謝料を回収することができる場合があります。

また、診療単価についても、自賠責保険の場合で自由診療などになると、労災保険より高額になります。

すると、上限の120万円をすぐに使い切ってしまうことも考えられます。

したがって、相手方が任意保険に加入していない場合には、労災保険で治療を行なったほうがいいでしょう。

なお、被害者の方に後遺障害がある場合、後遺障害の審査については、労災保険と自賠責保険で別々に審査されることになります。

同じ基準で審査されているのですが、労災保険に比べて自賠責保険の後遺障害等級のほうが低く認定されることが多い傾向にあるので注意が必要です。

このように、労災保険については難しい部分があるので、まずは一度、交通事故と通勤災害(労災)に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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