図解で解説!交通事故の過失割合で損をしないために

「喧嘩両成敗(けんかりょうせいばい)」という考え方があります。

ケンカや争いをした者は、その理由に関わらず双方とも均しく罰するというものです。

今では、ことわざにもなっている喧嘩両成敗ですが、日本では武家社会となった中世以降に生まれ、戦国時代には各大名家が「法」として取り入れていったようです。

交通事故の場合、現代の法律では「過失割合」というものがあります。

交通事故には被害者と加害者がいますが、どちらも公平に罰するというわけにはいきません。

そのため、示談交渉や裁判では、どちらに過失があったのか、その割合が激しく争われることが多いのです。

そこで今回は、交通事故における過失割合について解説します。

交通事故の過失割合とは?

交通事故が発生した場合、自損事故でなければ被害者と加害者が存在することになります。

被害者には損害が発生することになりますので、加害者との間で示談交渉をすることになります。

その示談交渉の過程で、加害者側が「過失割合」を主張してくることがあります。

過失割合とは、その事故における被害者と加害者の過失の度合いの割合、責任の割合のことです。

被害者としては、突然の交通事故でケガを負って、身体に後遺障害が残ってしまう場合もあるのですから、心理的には自分に過失などないと考える人が多いでしょう。

しかし実際のところ、過失割合では被害者にも「過失」が関わってくる場合があります。

法律上、加害者の不法行為に対する被害者の損害賠償請求権は、そもそも損害の公平な分担という理念から認められた権利であるため、被害者にも一定の事情がある場合には、その割合を損害賠償金から差し引くことが公平である、という考えがあるからです。

そのため、損害賠償では被害者に生じた損害のうち、どれほどの割合を加害者と被害者それぞれに負担させるべきか、ということが問題になってくるのです。

被害者に過失割合が発生する場合とは?

被害車両が適法に駐停車中に加害車両が後ろから追突した事故は、100対0で加害者の過失になるのが原則です。

その他にも、信号無視やセンターラインオーバーによる事故でも加害者の過失が100と判断されることが多くあります。

しかし、被害車両が走行中に後ろから加害車両が追突した場合は、被害者側にも過失があったとみなされる場合があります。

たとえば、追い越し妨害や不要な急ブレーキによる追突事故などです。

また、駐停車禁止場所に駐停車していた場合の追突事故も被害者の過失が問われます。

このようなケースでは、被害者側にも交通事故発生の原因となる過失や不注意があったとして、加害者側が賠償するべき金額から過失割合分を差し引いた金額が支払われることになります。

これを「過失相殺(かしつそうさい)」といいます。

交通死亡事故では過失割合が大きな争点になることが多い

交通事故に関わる保険には、自賠責保険と任意保険があります。

自賠責保険は、法律により自動車やオートバイなどを運転する者は必ず加入しなければいけないものです。

被害者の損害賠償に対する保険金は、まず自賠責保険から最小限度額が支払われ、それでは足りない分を加害者が加入している任意保険会社が支払うという仕組みになっています。

ただし、実務上は、任意保険会社が自賠責保険分も一括して被害者に対して支払い、その後で自賠責保険会社に求償する、という方法が一般的です。

詳しい解説はこちら⇒
交通事故の自賠責保険の保障内容は?

自賠責保険について、被害者請求という手続きがあると聞いたのですが、どのようなものですか?

示談交渉で被害者がやってはいけない7つのこと

被害者側にも過失があったと認められる場合、加害者が加入している任意保険会社は過失相殺を主張してきます。

仮に、損害賠償金額が3000万円で、過失割合が加害者70対被害者30だった場合を考えてみましょう。

被害者にとっては30%の減額ですから、請求できる金額は2100万円ということになります。

これだけ減額されてしまうとしたら、被害者にとっては大きな損失です。

特に死亡事故の場合、被害者はもはや話すことができません。

事故の状況や被害者側の主張ができないために、過失割合が加害者側の言い分に基づいて決められてしまう恐れもあります。

そのため、被害者と加害者側の任意保険会社との示談交渉が成立しにくいという現実があるのです。

自賠責保険の過失減額に要注意

自賠責保険では「重過失減額」というものがあります。

ここで注意しなければいけないキーワードは「7割」です。

自賠責保険では、被害者の過失割合がある程度高くても、自賠責保険では損害賠償金(保険金)の減額はなく、満額が支払われます。

これは、そもそも自賠責保険が被害者救済を目的として設立されたものだからです。

ただし、減額されないのは被害者の過失割合が7割未満の場合です。

では、被害者の過失割合が7割を超えた時はどうなるのかというと、損害賠償金から次の割合が減額されてしまいます。

・被害者の過失が7割以上8割未満 → 2割の減額
・被害者の過失が8割以上9割未満 → 3割の減額
・被害者の過失が9割以上10割未満 → 5割の減額

これを「重過失減額」といいます。

過失割合は誰が決めているのか?

ここで、ひとつ疑問が湧いてきます。

過失割合は一体誰が決めているのでしょうか? 警察や検察でしょうか? それとも保険会社でしょうか?

警察には「民事不介入」のルールがあるので、交通事故において警察が行なうのは現場検証や実況見分書の作成までです。

その後、刑事事件においては、加害者を起訴するかどうするかを決めるのは検察です。

刑事事件とは別に示談交渉が行われるのですが、ここで初めて「過失割合」が出てきます。

つまり、加害者側の保険会社が主張してくるのが過失割合だ、ということです。

しかし、保険会社が主張する過失割合が法律上正しい過失割合だとは限りません。

では、過失割合は、どのように決められるのでしょうか。

過失割合に基準はあるのか?

過失割合について絶対的な判断はないにしても、やはり基準が必要です。

過失割合の基準については、東京地裁にある「民事27部」という部署が中心となって作成しています。

民事27部は交通事故を専門に扱っている部署で、ここで出された基準が全国の基準になっています。

そのため、裁判所も弁護士も保険会社もこの基準を用いて過失割合を算出していきます。

ところで、交通事故の状況はすべてが違うものですから一律に過失割合が決まるものではありません。

過失割合の基準については、まず基本となる過失割合を出したうえで、その後に修正要素によって加害者と被害者双方に5~20%程度の過失を加算していきながら調整を図っていきます。

詳しい解説はこちら⇒
交通事故の過失割合で損をしないための知識

次に、交通事故の状況別に見た過失割合の事例を見ていきたいと思います。

過失割合の事例

1.横断歩道を歩行中の歩行者に自動車が追突した事故

横断歩道を横断している歩行者は、車に対して完全に優先するので、直進でも右左折でも、基本的に歩行者の過失は0%がスタートです。

ただし、信号機が設置されていて、黄色点滅、赤信号などの場合には、歩行者に過失あり、ということになります。

基本:歩行者       0%
   自動車       100%

修正要素:夜間           +5%
     幹線道路         +5%
     直前直後横断
     佇立・後退        +5~15%
     住宅街・商店街等     -5%
     歩行者が児童・高齢者    -5%
     歩行者が幼児・身体障害者等 -10%
     集団横断          -5%
     自動車の著しい過去     -5%
     自動車の重過失       -10%
     歩車道の区別なし      -5%

2.横断歩道のない場所で車道を横断した歩行者に自動車が追突した事故

横断歩道のない道路を歩行者が横断するときは、左右の安全を確認した上で横断しなければなりませんので、歩行者の基本過失割合は、20%となります。

基本:歩行者       20%
   自動車       80%

修正要素:夜間            +5%
     幹線道路          +10%
     横断禁止の規制あり     +5~10%

直前直後横断
     佇立・後退         +10%
     住宅街・商店街等      -5%
     歩行者が児童・高齢者    -5%
     歩行者が幼児・身体障害者等 -10%
     集団横断          -10%
     自動車の著しい過去     -10%
     自動車の重過失       -20%
     歩車道の区別なし      -5%

3.交差点の進入時における自動車同士の衝突事故

この場合、交差点進入時点と衝突場所との距離に差があるため、その距離を考慮して、40対60となっています。

そして、交差点に進入する時に減速していたかどうかにより、両者の過失割合が変動するようになっています。

「車両ⒶとⒷが同程度の速度の場合」
基本:車両Ⓐ(左方車)    40%
   車両Ⓑ(右方車)    60%

修正要素:車両Ⓐの著しい過失    +10%
     車両Ⓐの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     夜間           -5%
     車両Ⓑの著しい過失    -10%
     車両Ⓑの重過失      -20%

「車両Ⓐは減速せず、Ⓑは減速した場合」
基本:車両Ⓐ(左方車)    60%
   車両Ⓑ(右方車)    40%

修正要素:車両Ⓐの著しい過失    +10%
     車両Ⓐの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     夜間           -5%
     車両Ⓑの著しい過失    -10%
     車両Ⓑの重過失      -20%

「車両Ⓐは減速して、Ⓑは減速しなかった場合」
基本:車両Ⓐ(左方車)    20%
   車両Ⓑ(右方車)    80%

修正要素:車両Ⓐの著しい過失    +10%
     車両Ⓐの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     夜間           -5%
     車両Ⓑの著しい過失    -10%
     車両Ⓑの重過失      -20%

4.交差点の進入時における自動車同士の衝突事故(一方が明らかに広い道路の場合)

一方が明らかに広い道路である場合には、それに応じて過失割合が修正されているものです。

「車両ⒶとⒷが同程度の速度の場合」
基本:車両Ⓐ(広路車)    30%
   車両Ⓑ(狭路車)    70%

修正要素:車両Ⓑの明らかな先入   +10%
     車両Ⓐの著しい過失    +10%
     車両Ⓐの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     車両Ⓑの著しい過失    -10%
     車両Ⓑの重過失      -20%

「車両Ⓐは減速せず、Ⓑは減速した場合」
基本:車両Ⓐ(広路車)    40%
   車両Ⓑ(狭路車)    60%

修正要素:車両Ⓑの明らかな先入   +10%
     車両Ⓐの著しい過失    +10%
     車両Ⓐの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     車両Ⓑの著しい過失    -10%
     車両Ⓑの重過失      -20%

「車両Ⓐは減速して、Ⓑは減速しなかった場合」
基本:車両Ⓐ(広路車)    20%
   車両Ⓑ(狭路車)    80%

修正要素:車両Ⓑの明らかな先入   +10%
     車両Ⓐの著しい過失    +10%
     車両Ⓐの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     車両Ⓑの著しい過失    -10%
     車両Ⓑの重過失      -20%

5.交差点の進入時における自動車同士の衝突事故(一方が優先道路である場合)

優先道路を通行している場合であっても、交差点に進入するときには、注意義務があるので、基本過失割合が10%となっています。

基本:車両Ⓐ(優先車)    10%
   車両Ⓑ(劣後車)    90%

修正要素:車両Ⓑの明らかな先入   +10%
     車両Ⓐの著しい過失    +15%
     車両Ⓐの重過失      +25%
     車両Ⓑの著しい過失    -10%
     車両Ⓑの重過失      -15%

6.交差点の進入時における自動車同士の衝突事故(直進車・右折車ともに青信号で進入した場合)

右折車に比べ、直進車が優先とされますので、直進車の過失割合が20%とされています。

基本:車両Ⓐ(直進車)    20%
   車両Ⓑ(右折車)    80%

修正要素:車両Ⓑが既右折           +10%
     車両Ⓐの法50条違反の交差点進入  +10%
     車両Ⓐの15km以上の速度違反    +10%
     車両Ⓐの30km以上の速度違反    +20%
     車両Ⓐのその他の著しい過失     +10%
     車両Ⓐのその他の重過失       +20%
     車両Ⓑの徐行なし          -10%
     車両Ⓑの直近右折          -10%
     車両Ⓑの早回り右折         -5%
     車両Ⓑの大回り右折         -5%
     車両Ⓑの合図なし          -10%
     車両Ⓑのその他の著しい過失・重過失 -10%

7.交差点の進入時における直進車と右折車の衝突事故

信号がない交差点の場合にも、右折車よりも直進車が優先することになるので、直進車の過失割合が20%となっています。

基本:車両Ⓐ(直進車)    20%
   車両Ⓑ(右折車)    80%

修正要素:車両Ⓑが既右折           +20%
     車両Ⓐの法50条違反の交差点進入  ※修正要素として考慮しない
     車両Ⓐの15km以上の速度違反    +10%
     車両Ⓐの30km以上の速度違反    +20%
     車両Ⓐのその他の著しい過失     +10%
     車両Ⓐのその他の重過失       +20%
     車両Ⓑの徐行なし          -10%
     車両Ⓑの直近右折          -10%
     車両Ⓑの早回り右折         -5%
     車両Ⓑの大回り右折         -5%
     車両Ⓑの合図なし          -10%
     車両Ⓑのその他の著しい過失・重過失 -10%

8.同幅員の交差点の進入時におけるバイク(左方)と自動車(右方)の衝突事故

この形態の場合、四輪車同士の場合には、40対60だったのですが、バイクの場合には、30%となっています。

「バイクと自動車がともに同速度の場合」
基本:バイク    30%
   自動車    70%

修正要素:バイクの著しい過失    +10%
     バイクの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     自動車の著しい過失    -10%
     自動車の重過失      -20%

「バイクは減速、自動車は減速しなかった場合」
基本:バイク    15%
   自動車    85%

修正要素:バイクの著しい過失    +10%
     バイクの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     自動車の著しい過失    -10%
     自動車の重過失      -20%

「バイクは減速せず、自動車は減速した場合」
基本:バイク    45%
   自動車    55%

修正要素:バイクの著しい過失    +10%
     バイクの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    -10%
     自動車の著しい過失    -10%
     自動車の重過失      -20%

9.交差点の進入時におけるバイク(右方)と自動車(左方)の衝突事故

「バイクと自動車がともに同速度の場合」
基本:バイク    50%
   自動車    50%

修正要素:バイクの著しい過失    +10%
     バイクの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    +10%
     自動車の著しい過失    -10%
     自動車の重過失      -20%

「バイクは減速、自動車は減速しなかった場合」
基本:バイク    35%
   自動車    65%

修正要素:バイクの著しい過失    +10%
     バイクの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    +10%
     自動車の著しい過失    -10%
     自動車の重過失      -20%

「バイクは減速せず、自動車は減速した場合」
基本:バイク    60%
   自動車    40%

修正要素:バイクの著しい過失    +10%
     バイクの重過失      +20%
     見通しがきく交差点    +10%
     自動車の著しい過失    -10%
     自動車の重過失      -20%

10.同幅員の交差点の進入時における自転車(左方)と自動車(右方)の衝突事故

この形態の場合、四輪車同士の場合には、40対60、バイク対四輪車の場合には、30対70だったのが、自転車の場合には、過失割合が20%となっています。

基本:自転車    20%
   自動車    80%

修正要素:夜間               +5%
自転車の右側通行・左方からの進入 +5%
     自転車の著しい過失        +10%
     自転車の重過失          +10%~15%
     自転車が児童等・高齢者      -5%
     自転車の自転車横断帯通行     -10%
     自転車の横断歩道通行       -5%
     自動車の著しい過失        -10%
     自動車の重過失          -10%~20%

過失割合に納得いかない場合はどうするべきか?

提示された過失割合に納得がいかない場合は、どうしたらいいのでしょうか?

その場合には、警察の実況見分で作成された実況見分調書を検察庁から取り寄せて、事故状況を立証したり、刑事裁判になっているような時はその資料を取り寄せるなどして立証していくことになります。

ということは、事故後の実況見分がとても大切だということであり、事故の状況については、正確に警察官に報告して、実況見分調書を作成してもらうことが重要だということです。

「後で訂正すればいいや」は、通用しないと理解しておいていただきたいと思います。

その上で、加害者側の任意保険会社が主張する過失割合について、その内容を精査して問題点を指摘したり、覆すための材料を用意して交渉していくことなります。

しかし、交通事故のプロでも、法律や保険のプロでもない被害者が保険会社の担当者と渡り合って示談交渉を行なうのは、なかなか難しいと思います。

そこで強い味方となるのが交通事故に詳しい弁護士です。

みらい総合法律事務所では、後遺症と死亡事故に特化して専門性を高めています。

相談の条件に該当する方は、ぜひご相談ください。