逆走車と衝突!?逆走事故の過失割合をケース別に解説
逆走事故は、重大な被害を伴うことが多い交通事故の一つです。
基本的には加害者側の過失が重くなるのが一般的ですが、事故の状況によっては、被害者にも過失が認められる場合があるので注意が必要です。
本記事では、逆走事故の過失割合と、被害者となった際の適切な対応方法について解説します。
※本期日は、2025年6月15日時点の法令や統計に基づいています。
目次
逆走事故とは
逆走事故は車だけでなく、バイクや自転車が逆走した際に起きた事故も含まれます。
逆走事故の定義
逆走事故とは、車両が本来の進行方向とは逆に走行し、他の車両と衝突する事故をいいます。
右左折時の事故と違い、正面衝突の形で事故が発生するため、他の事故に比べて衝撃が大きくなりやすい傾向があります。
また、高速道路上での逆走事故は、逆走車と通常走行車の速度が加算されることで、重大事故へと発展しやすく、死亡リスクが高いのも特徴です。
逆走事故が起こりやすい場所
一般道での逆走事故は、一方通行の道路への誤進入、右折時の誤進入などが原因で発生することが多いです。
高速道路では、インターチェンジ(IC)やジャンクション(JCT)、サービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)の出入口が特に危険なポイントです。
国土交通省の調査によると、高速道路の逆走事故の約60%がICやJCTで発生しており、SAやPAでも事故が報告されています。
【参考資料】:道路データブック2024(国土交通省)
逆走事故の特徴
国土交通省の「道路データブック2024」によると、逆走事故は逆走した運転者の年齢が高いという特徴があります。
75歳以上の事故率が顕著で、免許保有者の年齢構成において、75歳以上の免許保有率は全体の9%ですが、逆走事故を起こした割合は45%を占めています。
逆走開始時の認識については、過失または故意による事例が約60%である一方、逆走の認識がない事例も約30%を占めています。
そのため、運転者が意図しない状態で逆走しているケースが多いのも、事故の特徴です。
また、逆走事故は事故全体と比較して、重大な事故へと発展しやすい傾向があります。
死傷事故となる割合が約4倍、死亡事故となる割合が約38倍とされており、極めて深刻な結果をもたらす可能性がある事故の一つです。
【運転者の年齢】
【逆走開始時の認識】
【逆走事故の内訳】
逆走運転の罰則・違反点数
逆走運転は重大な交通違反であり、事故を招く可能性が非常に高い行為です。
そのため、違反した際には相応の罰則が適用されます。
逆走運転の法律上の規定
逆走運転は、道路交通法において「通行区分違反」として位置付けられています。
通行区分違反とは、道路交通法で定められた通行方法を守らない行為をいいます。
道路交通法第17条(通行区分)では、車両が道路の左側部分を通行することを義務付けているため、逆走した場合には同規定に反するとして罰則が適用されます。
逆走運転に対する行政処分
逆走運転が確認された場合、行政処分として違反点数が加算され、反則金が科されます。
通行区分違反の反則金は、普通車の場合9,000円、違反点数は2点に設定されています。
<通行区分違反に伴う反則金・違反点数>
車両の種類 | 反則金 | 違反点数 |
---|---|---|
大型車 | 12,000円 | 2点 |
普通自動車 | 9,000円 | 2点 |
二輪車 | 7,000円 | 2点 |
原付 | 6,000円 | 2点 |
上記の反則金・違反点数は、通行区分違反に該当する場合のみ適用されます。
逆走運転によって事故を引き起こしたときは、事故の内容や被害の程度に応じて、より厳しい処分が科されることになります。
たとえば、逆走運転が原因で人身事故を起こした場合、事故の重大性に応じて刑事罰の対象となる可能性があるので注意が必要です。
高速道路での逆走運転に対する罰則
高速道路での逆走は、極めて危険な行為として認識されており、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(通称:自動車運転死傷行為処罰法)に基づく危険運転致死傷罪が適用される場合があります。
危険運転致死傷罪が成立した場合、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑が、人を死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑が科せられるなど、極めて重い法的責任が発生します。
したがって、高速道路における逆走運転は、運転者自身のみならず周囲の安全に重大な影響を及ぼす行為であるため、法令遵守が不可欠です。
逆走事故で被害者にも過失割合が
ついてしまう理由
逆走事故では、加害者側に大きな責任がある一方、過失割合は必ずしも10対0になるとは限りません。
交通事故の過失割合とは
交通事故の過失割合は、事故の責任を当事者間でどの程度負担するかを示す割合です。
たとえば、過失割合が8対2の場合、一方の当事者が事故の責任の80%を負い、もう一方が20%を負担します。
過失割合は、事故の状況や過去の判例を基に決定されるため、信号無視や追突事故では加害者側の責任が大きくなる傾向があります。
しかし、被害者にも過失がある場合は、被害者の割合分だけ賠償額から差し引かれる「過失相殺」が適用されるため、過失割合によって受け取れる賠償金の額が変動します。
逆走事故における過失割合の
基本的な考え方
逆走事故では、逆走した車両が道路交通法に反する行動を取っているため、通常は逆走車の過失が大きくなります。
しかし、被害者側にも一定の注意義務があることから、被害者の過失が認められることがあります。
過失割合は示談交渉の場で決定されるため、交渉で不利にならないよう、事故の詳細を正確に記録し、適切な対応を取ることが重要です。
被害者に過失があると
認められる場合
逆走事故において、被害者側に過失が認められるケースはいくつか存在します。
たとえば、被害者が法定速度を大幅に超えて走行していた場合、事故を回避できなかった責任を問われるため、被害者の過失が加算される可能性があります。
また、逆走車が視認できる状況でありながら適切な回避行動を取らなかった場合にも、被害者側の注意義務違反が問われることがあります。
被害者側に過失があると判断されれば、その分だけ損害賠償額が減額されるので注意してください。
逆走事故のケース別過失割合
逆走事故の過失割合は、事故の状況だけでなく、当事者の属性によっても変動するため、具体的なケースごとの過失割合を解説します。
自動車同士の逆走事故の
基本過失割合
車同士の逆走事故では、基本的に逆走した車両の過失が大きくなります。
たとえば、一方通行の道路で逆走した車と交差点で衝突した場合、基本過失割合は「逆走車:非逆走車=8:2」となります。
この場合、逆走車の過失は80%ですが、非逆走車にも20%の過失が認められるため、事故責任が全面的に逆走車側にあるとは限りません。
センターラインを超えた
逆走事故の過失割合
センターラインから大幅に逸脱して逆走した車両との衝突では、「逆走車:非逆走車=10:0」になることが多いです。
逆走車の過失割合が100%になるのは、センターラインを超えて逆走してきた車に対して、非逆走車側が回避行動を取ることが非常に困難であると判断されるためです。
自動車とバイクの逆走事故の
過失割合
交通事故の過失割合は、車両の種類や事故の状況によって変動します。
車側が逆走してバイクと接触事故を起こした場合、過失割合は「自動車:バイク=9:1」となることが一般的です。
バイクは車に比べて交通弱者であるため、車側の過失がより問われることになります。
車がセンターラインを超えて逆走し、対向するバイクと衝突した場合の基本過失割合は「自動車:バイク=10:0」です。
バイクが一方通行の交差点を逆走したことで車と衝突した場合、過失割合は「自動車:バイク=3:7」となります。
車同士の逆走事故に比べて被害者の車の過失割合が高くなりますが、バイクがセンターラインを超えて逆走した場合は、車とバイクの事故でも逆走車側に全面的な非があると判断されます。
自動車と自転車の逆走事故の
過失割合
車側が逆走して車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車:自転車=9:1」となります。
車がセンターラインを超えて逆走し、対向する自転車と衝突した場合の過失割合は、「自動車:自転車=10:0」です。
自転車が一方通行の道路を逆走し、交差点で車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車:自転車=5:5」となることが多いです。
過失割合が同程度になるのは、自転車が道路交通法に違反しているものの、車側にも周囲の安全確認義務があるため、被害者側にも一定の過失が認められるためです。
また、自転車がセンターラインを超えて逆走し、交差点で自動車と衝突した場合でも、基本過失割合は「自動車:自転車=5:5」となります。
高速道路での逆走事故の
過失割合
高速道路での逆走事故は極めて危険であり、死亡事故に発展する可能性が非常に高いです。
そのため、高速道路で逆走した車両と通常走行車が衝突した場合、基本過失割合は「逆走車:非逆走車=10:0」となります。
ただし、非逆走車がかなり前から逆走車を確認できたにもかかわらず、事故を回避できる状況で適切な対応を取らなかった場合は、非逆走車側にも一定の過失が認められることがあります。
修正要素による過失割合の調整
逆走事故における過失割合は、逆走車のみの責任とせず、非逆走車側の安全配慮義務の不履行も考慮した上で、公正な責任配分が行われます。
非逆走車が安全確認を怠っていた場合や速度違反をしていた場合は、その車両側の過失が加味され、過失割合が修正されることがあります。
また、非逆走車が十分に回避行動を取ることが可能な状況であれば、注意義務違反として一定の過失が認められることもあります。
交通事故が発生した際には、ドライブレコーダーの映像や目撃証言、警察の検証報告などの証拠をもとに、双方の注意義務の履行状況や回避可能性が評価され、最終的な過失割合が決定されます。
逆走事故で請求できる慰謝料の相場
逆走事故は重大な被害を伴うことが多く、被害者は精神的・身体的な苦痛を受けることになります。
適切な慰謝料を請求するためには、慰謝料の種類や算定基準を理解することが重要です。
逆走事故による慰謝料の種類
逆走事故で請求できる慰謝料には、主に「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3種類があります。
入通院慰謝料は、事故による怪我の治療期間に応じて支払われるもので、通院日数や入院期間によって金額が変動します。
後遺障害慰謝料は、事故で後遺障害を負った際に支払われるもので、後遺障害等級に応じて金額が決定されます。
死亡慰謝料は、事故によって被害者が死亡した場合に遺族へ支払われるもので、被害者の年齢や家族構成などによって金額が異なります。
慰謝料の算定基準
加害者に慰謝料を求める場合、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」のいずれかの基準を用いて算定します。
自賠責基準は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるために、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)が適用される際の損害賠償額を算定する基準です。
最低限の補償を目的としているため、自賠責基準で算定した場合、受け取れる慰謝料は低くなりやすいです。
任意保険基準は、保険会社が独自に設定する基準です。
自賠責基準に比べると慰謝料は高額になることが多いですが、保険会社ごとに基準が設けられているため、詳細な算定方法は公開されていません。
弁護士基準(裁判基準)は、裁判で認められる慰謝料の基準であり、3種類の算定基準の中で最も高額な慰謝料が認められる可能性があります。
たとえば、軽度のむち打ちの場合、弁護士基準では自賠責基準の倍以上となる50万円超の慰謝料が認められることがあります。
ただし、弁護士基準で算定するためには専門知識や交渉術が不可欠なため、必要に応じて弁護士に相談することが重要です。
逆走事故の示談交渉における
留意点
慰謝料請求には、診断書や治療記録、事故の状況を示す証拠を確実に準備してください。
示談交渉を行う際には、相手側の保険会社とのやり取りに注意し、不利な条件で合意しないよう慎重に対応しなければなりません。
たとえば、保険会社が提示する慰謝料の金額は、任意保険基準に基づいているため、提示額の妥当性を十分に確認することが求められます。
提示された金額に納得できない場合は反論することになりますが、保険会社も事故対応を専門で行っているため、一般の方が交渉を有利に進めるのは難しいです。
また、弁護士基準での慰謝料を請求する際も、根拠となる判例などを準備する必要がありますので、交渉前に専門家から助言を受けるなどの対策を講じてください。
逆走事故の示談交渉は弁護士に相談すること
逆走事故は危険性が高く、過失割合の判断が複雑になることが多いです。
示談交渉では過失割合だけでなく慰謝料の額も決定されるため、適切な補償を受けるには事前に慰謝料の算定基準などを理解しておくことが重要です。
逆走事故の対応に不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することで、適正な過失割合や慰謝料を確保するためのサポートを受けることができます。
示談交渉を弁護士に任せることで、保険会社との交渉を有利に進めることが可能になり、適正な賠償額を獲得しやすくなります。
交通事故に遭った場合は、肉体的・精神的に負担が大きいため、弁護士と協力しながら最善の解決策を見つけてください。
逆走事故の過失割合でお困りの場合は、まずは一度、みらい総合法律事務所の無料相談をご利用ください。
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代表社員 弁護士 谷原誠