70歳の交通事故(死亡、後遺障害)の慰謝料額をシミュレーション

高齢者人口の増加にともない、近年では高齢者による交通事故が増えています。

高齢者が加害者となる交通事故の報道を見ない日はないくらいですが、被害者になってしまうケースも後を絶ちません。

年間の交通事故死亡者のうち、65歳以上の高齢者の割合が半数を超えているという現実があるのです。

そこで今回は、70歳の方(主婦・夫と2人暮らし)が交通事故にあった場合の慰謝料額は一体いくらくらいになるのかについて解説します。

被害者が死亡した場合

交通事故でご家族がなくなった場合、ご遺族が保険金や慰謝料などの賠償金を受け取ることになります。

まず、ここで関係してくる保険には「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」と「任意保険」があります。

自賠責保険とは?

自動車やバイクを運転する者すべてに対して加入が義務付けられているのが自賠責保険です。

自賠責保険は、人身事故の被害者を救済するために作られたものですから、自損事故による自身のケガや物損事故には適用されません。

被害者が人身事故でケガや死亡をした場合にのみ保険金が支払われことになっています。

法律により補償される金額が決まっており、自賠責保険の上限は死亡の場合で3000万円です。

なお、傷害(ケガ)による損害の場合は120万円介護を要する後遺障害の場合4000万~3000万円その他の後遺障害の場合は1級から14級の後遺障害等級に応じて3000万円~75万円となっています。

自賠責法別表第1

第1級 4000万円
第2級 3000万円

自賠責法別表第2

第1級 3000万円
第2級 2590万円
第3級 2219万円
第4級 1889万円
第5級 1574万円
第6級 1296万円
第7級 1051万円
第8級 819万円
第9級 616万円
第10級 461万円
第11級 331万円
第12級 224万円
第13級 139万円
第14級 75万円

任意保険とは?

任意保険は、ドライバーや自動車の所有者などが自賠責保険だけでは損害賠償しきれない時のために任意で加入するものです。

被害者の損害賠償金額が、自賠責保険の補償額だけでは足りない場合、それを補うために、ご遺族は加害者側の任意保険会社と示談交渉を進めていくことになります。

遺族が受け取ることができる損害賠償項目

保険会社に請求した場合、ご遺族が受け取ることができる損害賠償金の項目には、主に次のものがあります。

①葬儀関係費
②死亡逸失利益
③死亡慰謝料
④弁護士費用

被害者が生きていれば、将来的に得られたはずの収入などを「死亡逸失利益」といいます。

交通事故に関わる慰謝料には「傷害慰謝料」、「後遺症慰謝料」、「死亡慰謝料」3つの種類があります。

被害者が死亡したことにより被った精神的損害を償うものが死亡慰謝料です。

詳しい解説はこちら⇒
交通死亡事故の慰謝料はいくら?ご遺族がやるべきこととは?

弁護士費用は、死亡事故のご遺族が示談交渉を依頼したり、裁判になった場合にかかる費用です。

たとえば、弁護士に依頼して裁判を起こした場合には、判決による損害賠償認容額の10%程度が弁護士費用として認められます。

ちなみに、ここで認められる弁護士費用は実際に弁護士に支払う費用のことではありませんので注意してください。

この他にも、ご遺族は「損害賠償関係費」を請求できます。

これは、損害賠償金を請求する際に必要となる「診断書」、「診療報酬明細書」、「交通事故証明書」等の文書を取得するためにかかった文書費用などのことです。

なお、交通事故後に治療をしたものの、残念ながら被害者が死亡した場合は、「治療費」、「付添看護費」などの実費を請求することができます。

損害賠償金を計算してみる

実際に損害賠償金額はいくらくらいになるのか、ここでは70歳の女性で夫と2人暮らしの主婦の方が交通事故で死亡した場合を例に算出してみます。

<葬儀関係費>
自賠責保険では定額で60万円、任意保険では120万円以内が大半です。

なお、弁護士に依頼して訴訟を起こした時に認められる金額は原則、150万円となりますが、かかった費用が150万円より低い時は実際に支出した金額になります。

なお、墓石建立費や仏壇購入費、永代供養料などは、それぞれ個別の事案ごとで判断されます。

<死亡逸失利益>
死亡逸失利益は、被害者が生きていれば将来、労働によって得られたはずの収入です。

被害者が死亡した場合は、その時点で100%所得がなくなるので後遺障害を負った場合とは異なり、労働能力喪失率は100%となります。

主婦の場合、実際の収入はありませんが、家事労働を行なっているので、逸失利益は認められます。

計算式は次の通りです。

基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

<基礎収入>
基礎収入とは、前年の年収です(国民年金などの年金収入も含まれます)。

裁判例では、高齢の家事従事者の基礎収入については、次のように分類されています。

ⅰ)女性労働者の全年齢平均賃金としたもの

ⅱ)女性労働者の全年齢平均賃金から何割か減額した額としたもの

ⅲ)年齢別の女性労働者の平均賃金としたもの

ⅳ)年齢別の女性労働者の平均賃金から何割か減額した額としたもの

被害者が行なっていた家事はどの程度だったのかなど、実際のケースでは個別の事案ごとに具体的な事情を評価して決定されますが、ここでは「平成29年の賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金」である、377万8200円を基礎収入として考えていきます。

<生活費控除>
生きていればかかったはずの生活費分を、基礎収入から差し引くことを生活費控除といいます。

生活費控除率の目安は次のようになります。

・被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合
⇒40%

・一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合
⇒30%

・女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合
⇒30%

・男性(独身、幼児等含む)の場合
⇒50%

<就労可能年数>
原則として、18歳から67歳までとされています。

なお、被害者の職種、地位、能力等によって67歳を過ぎても就労することが可能だったと思われる場合には、67歳を過ぎた分についても認められる場合もあります。

ここでは、「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省)による70歳の就労可能年数である「8年」を使って計算していきます。

<ライプニッツ係数>
被害者が損害賠償金として受け取る金額は、本来は将来に仕事をして受け取るはずであった収入を現在に前倒しで受け取ることになります。

その際、現時点のお金の価値と将来のお金の価値は違うため、損害賠償金を支払う保険会社としては被害者の方に多くのお金を支払ってしまうことにならないよう、その差を調整します。

そのため、将来の収入時までの年5%の利息を複利で差し引く必要が出てくるのですが、その計数を、ライプニッツ係数(中間利息控除)といいます。

ここでは、「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省)による70歳のライプニッツ係数である「6.463」を使って計算します。

では、実際に死亡逸失利益を計算してみます。

3,778,200円(平成29年の賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金)×(1-0.3)×6.463(ライプニッツ係数)
=17,092,955円

<死亡慰謝料>
これまでの交通事故の民事裁判で認定された慰謝料額の総計などから慰謝料額の相場が定められています。

弁護士が被害者遺族から依頼を受けて、加害者側の任意保険会社と交渉したり、裁判を行なう場合は、日弁連交通事故相談センターが出している書籍『民事交通事故訴訟損害賠償算定基準』(通称「赤い本」)に記載されている金額を用います。

なお、損害賠償金の基準には「自賠責基準」、「任意保険基準」、「裁判(弁護士)基準」の3つの基準があります。
「赤い本」に書かれている基準を「裁判基準」といい、3つの基準の中でもっとも高額になります。

詳しい解説はこちら⇒「交通事故を弁護士基準で示談する方法
          
裁判基準で定められている死亡慰謝料の相場は、被害者が置かれている状況によって以下のようになっています。

・被害者が一家の支柱の場合
⇒2800万円

・被害者が母親、配偶者の場合
⇒2500万円

・被害者がその他の場合
⇒2000万~2500万円

一家の支柱の方が亡くなったときの慰謝料は、ご遺族の扶養を支える人がいなくなることに対する補償となるため他よりも高めになっています。

ここでは、被害者は配偶者ではありますが、70歳の高齢者なので、仮に、慰謝料を2200万円として計算していきます。

<弁護士費用>
被害者側の任意保険会社との示談交渉が決裂し、ご遺族が損害賠償請求をするために弁護士に依頼して裁判を起こした場合は、請求認容額の10%程度が弁護士費用として認められます。

ここでは次の計算式で金額を求めます。

1,500,000円(葬儀費)+17,092,955円(死亡逸失利益、年金除く)
+22,000,000円(慰謝料)×0.1
=4,059,296円

これらの計算から、交通事故で死亡した70歳の方(主婦・夫と2人暮らし)の損害賠償金額を計算してみます。

1,500,000円(葬儀費)+17,092,955円(死亡逸失利益)
+22,000,000円(慰謝料)+4,059,296円(弁護士費用)
=44,652,251円

なお、次のサイトでは自動で損害賠償金額を計算することができますので、参考にしてみてください。

交通死亡事故損害賠償自動シミュレーション(示談金の解説付)


 

交通事故で後遺症が残った場合の慰謝料額

交通事故で負ったケガのために後遺症が残った場合、被害者は後遺障害等級申請をする必要があります。

後遺障害等級は、重い症状の残った第1級から、比較的症状の軽い第14級まであり、さらに後遺障害のある部位によって号数が決まります。

後遺障害等級が認定された場合、被害者は加害者側の任意保険会社に損害賠償請求することができます。

詳しい解説はこちら⇒
交通事故の示談の流れを徹底解説

請求できる損害賠償項目には、さまざまなものがあるのですが、その中でも大きなものは「後遺症慰謝料」と「逸失利益」です。

後遺症慰謝料とは?

後遺症慰謝料とは、後遺症が残ってしまった場合、今後生きていくうえでの精神的損害を償うものです。

交通事故で後遺症が残った場合、上記の基準の中でもっとも高額となる裁判基準による慰謝料額は以下のようになっています。

後遺障害等級 慰謝料
第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

なお、上記は目安の金額であって、実際には事故態様、加害者の態度、後遺症の程度等の個別の事情に応じて慰謝料額が決められます。

逸失利益とは?

被害者に後遺障害が残ってしまった場合は、後遺症慰謝料の他に「逸失利益」も加算されます。

逸失利益とは、被害者が後遺障害を負ったことにより、本来は得るべきだったのに得られなくなった将来的な収入(利益)のことです。

死亡逸失利益と基本的な考え方は同じですが、後遺障害の場合の逸失利益は次の計算式によって算出されます。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
= 逸失利益

労働能力喪失率とは?

たとえば、後遺障害等級が5級と認定された場合は、その後遺障害によって被害者の労働能力が79%失われたと考えられます。

この79%が労働能力喪失率になります。

労働能力喪失率は、原則として後遺障害別等級表記載の労働能力喪失率に従って決められます。

自賠法別表第1

等級 労働能力喪失率
第1級 100/100
第2級 100/100

自賠法別表第2

等級 労働能力喪失率
第1級 100/100
第2級 100/100
第3級 100/100
第4級 92/100
第5級 79/100
第6級 67/100
第7級 56/100
第8級 45/100
第9級 35/100
第10級 27/100
第11級 20/100
第12級 14/100
第13級 9/100
第14級 5/100

表からわかるように、この率は等級が上がるごとに増えていきます。

14級では5%の喪失率、もっとも等級の高い1級では喪失率は100%になります。

後遺障害等級は、後遺症慰謝料だけでなく逸失利益にも影響を与えるものですから、認定された等級に不満があり、納得ができない場合は、異議申し立てをすることが重要になってきます。

詳しい解説はこちら⇒
自賠責後遺障害等級の認定結果に不満があるときは、どのようにすればいいですか?

なお、後遺障害おける慰謝料などを自動計算できるサイトをご用意していますので参考にしてください。

交通事故慰謝料自動計算機(後遺障害編)

このように、慰謝料や損害賠償金額の計算はとても複雑です。

一人で計算するのは大変だと思います。

そんな時、心強い味方が交通事故に詳しい弁護士です。

みらい総合法律事務所では、経験豊富な弁護士たちが無料で相談を行なっています。

1度、相談していただき、その説明に納得ができたなら依頼されるのが良いと思います。

弁護士は、後遺障害等級は間違っていないか、保険会社が提示してくる示談金は低すぎないか、といった判断の難しい問題を被害者に代わって解決します。

その結果、被害者の方やご遺族は、保険会社との煩わしい交渉から解放され、示談金も増額する可能性が高いです。

みらい総合法律事務所の相談基準に該当する方は、ぜひ1度、ご連絡いただけたらと思います。