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むちうちの後遺障害(12級、14級)の慰謝料の相場と計算【弁護士基準】

最終更新日 2021年 09月23日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

この記事は、交通事故において「むちうち症」になり、後遺障害等級12級あるいは14級が認定された場合に必要となる知識を弁護士が専門的見地から、包括的かつ網羅的に解説するものです。

私たちが実際に解決したむち打ち後遺障害に関するオリジナルの事例も紹介します。

交通事故のむち打ち後遺障害(12級、14級)のポイントと増額事例

後遺障害12級と14級でどれだけ慰謝料額が違うのか?

交通事故の後遺障害で、最も多いもののひとつに「頸椎捻挫」(むちうち症)と「腰椎捻挫」による神経障害があります。

診断書に書かれる傷病名としては、首であれば、

・頸椎捻挫
・頚部挫傷
・外傷性頚部症候群
・外傷性頚部捻挫
・バレ・リュー症候群

などがあります。

そこで今回は、むちうち症で認定される後遺障害等級や損害賠償金額の算定方法などについて、その注意点を解説します。

・むちうち症や腰椎捻挫による後遺障害等級は、12級13号または14級9号に該当します。

・12級13号の要件は「局部に頑固な神経症状を残すもの」で、損害賠償額のうち、被害者の方に支払われる慰謝料額の相場金額は、290万円です。

・14級9号の要件は「局部に神経症状を残すもの」で、損害賠償額のうち、被害者の方に支払われる慰謝料の相場金額は、110万円です。

つまり、該当要件の中に「頑固な」という文言があるかないかの違いだけで、後遺障害等級が2級下がり、慰謝料の相場金額は約180万円も少なくなってしまうわけです。

最終的に加害者側から支払われる損害賠償金も大きく変わってくることになるので、実際の損害賠償額になると、さらに大きな差が出てきます。

これは、被害者の方にとっては大きな問題でしょう。

【参考記事】
「外傷性頚部症候群」公益社団法人日本整形外科学会

当法律事務所の解決事例

ここでは、むちうちの事案ではありませんが、12級と14級の違いで、いかに大きな違いが出てくるのかをまず知っていただくための実際の事例をご紹介したいと思います。

ある男性が、交通事故で右膝骨折の傷害を負いました。

治療のかいなく後遺症が残り、自賠責後遺障害等級14級10号が認定されました。

保険会社からの示談金額提示は、248万6647円。

そこで被害者の方は、みらい総合法律事務所に後遺障害等級の確認と示談交渉を依頼しました。

弁護士が検討したところ、後遺障害等級に誤りが見つかったため、異議申立をしたところ、後遺障害等級は、12級13号に上がりました。

そのうえで、保険会社と示談交渉をした結果、最終的に、4500万円で解決しました。

当初提示額が、248万6647円ですから、金額として約4250万円の増額です。

じつに、18倍に増額したことになります。

この例を見ても、後遺障害等級の12級と14級がいかに違うかがわかると思います。

【参考記事】「交通事故の後遺障害等級が間違っていたら?」

後遺障害等級12級13号と14級9号の判断基準とは?

むちうちの後遺障害等級

むちうちの後遺障害等級認定としては、12級13号と14級9号があります。

12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号は、「局部に神経症状jを残すもの」です。

そして、12級13号は「他覚所見により神経系統の障害が証明されるもの」とされています。

これはどういうことかというと、首が痛くて動かせない、手がしびれるといった自覚症状と、それを裏づける外傷性の画像所見(MRI画像上の異常状態など)、および神経学的所見(スパーリングテストなどにおける異常所見)が認められ、医学的に証明されていると判断されれば、12級13号の後遺障害等級が認められるということです。

これに対して、14級9号は「神経系統の障害が医学的に説明可能なもの」とされています。

手のしびれの自覚症状がある場合、画像所見としては神経圧迫があり、原因は加齢性によるものか、それとも外傷性によるものかの判断ができないが、神経学的異常所見が認められ、神経系統の障害が医学的に説明可能であれば、14級9号の後遺障害等級が認定されるということになります。

このように、神経障害における12級と14級の差異は、自覚症状を裏づける外傷性の画像所見と神経学的所見の有無にあるのです。

そのため、神経障害が残存したときは、必ずMRIの撮影を行なわなければいけません。

そして、その画像上の異常所見が本件交通事故によるものであると判断された場合には、医師にその旨を後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。

また、スパーリングテストや徒手筋力テスト、知覚検査などを実施して、その結果も後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。

なお、事故当初からのMRI画像は神経根圧迫状態などの経緯を観察するうえで重要な役割を果たすので、できる限り早いうちからMRIの撮影装置を常備した病院に通院したほうがよいでしょう。

むちうちに関する神経学的検査

むちうち症に対して行われる検査としては、X線、CT、MRIなどの画像診断の他、各種神経学的検査があります。

主に以下の検査が行われます。

(頸椎)
・ジャクソンテスト
・スパーリングテスト
・イートンテスト
・アドソンテスト
・ライトテスト
・エデンテスト
・モーレイテスト
・ルーステスト
・反射テスト
・徒手筋力テスト

(腰椎)
・下肢伸展挙上テスト
・ラセーグテスト
・ブラガードテスト
・大腿神経伸長テスト
・反射テスト
・徒手筋力テスト

(参考記事)公益社団法人日本整形外科学会「むち打ち症」

裁判でむちうち後遺障害が争われた事例

後遺障害等級14級を認定した裁判例

当初、打撲程度とされた交通事故の被害者が、疼痛・嘔気のほか、左手の指の軽度の持続的なしびれを訴えるようになり、MRIにより頸椎椎間板ヘルニアが認められたにもかかわらず、自賠責後遺障害等級は非該当となりました。

しかし、裁判所は、本件事故前は肉体労働が支障なくできていたことなどから、後遺障害等級を14級程度であると認めました(京都地裁平成12年7月13日判決、出典:自動車保険ジャーナル1367号3頁)。

症状は、頚部捻挫後の、頚部痛、項部痛、頭痛、上肢の痛み、上肢のシビレ、両手の把握困難、嘔気等でした。

裁判所は、提出の画像上、本件事故による骨折、脱臼等の器質的損傷は認められないものの、下位頚椎に経年性の変性所見が窺われ、受傷から症状の訴えの一貫性が認められ、治療経過、症状所見等を勘案すれば、本件事故を契機に症状が発現したことを否定し難く、頚部並びに頚部由来の神経症状と捉え、「局部に神経症状を残すもの」として、自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断した自賠責調査事務所の判断を是認しました(大阪地裁平成25年1月10日判決:出典:交民46巻1号1頁)。

裁判所は、残存する症状については、頚部の画像上、外傷による骨折や脱臼などの器質的変化は認められず、自覚症状を裏付ける神経学的異常所見は認められないものの、頚部痛や左上肢の神経症状等、長期の治療後においても一貫する頚部由来の神経症状は、将来においても回復が困難と見込まれることから「局部に神経症状を残すもの」として等級表第14級10号と判断すると判断した自賠責調査事務所の判断を是認しました(神戸地裁平成21年6月24日判決、出典:交民42巻3号774頁)。
症状は、頚部捻挫後の耳鳴り、頚部痛、全身倦怠感、頸の拘縮感、左肩部痛、左上肢痛、左上肢のしびれ、心窩部痛、吐き気等でした。

裁判所は、症状を裏付ける有意な他覚的所見に乏しいが、画像上変形性変化が認められ、症状経過、治療経過等も勘案すると、症状の将来にわたる残存は否定し難いから、「局部に神経症状を残すもの」として自動車損害賠償保障法施行令別表第二14級10号に該当すると判断した自賠責調査事務所の判断を是認しました(京都地裁平成23年6月10日判決、出典:交民44巻3号765頁)。

以上の裁判例から考えると、後遺障害等級14級は、障害を医学的には証明できないものの、

・症状の一貫性
・画像上の変性
・治療経過

などが重視されることがわかります。

後遺障害等級12級を認定した裁判例

症状は、両下腿・足部、両手のしびれ等でした。

裁判所は、画像上は明らかな所見はないものの、治療経過、医証上の神経学的所見等より中心性頚髄損傷によるものと認められ、障害程度については、明らかな四肢の運動障害等はみられず、労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる脊髄症状を残すものと捉えられることから、「局部に頑固な神経症状を残すもの」である第12級12号に該当すると判断した自賠責調査事務所の判断を是認しました(東京地裁平成21年2月5日判決、出典:交民42巻1号110頁)。

症状は、受傷当初から左上肢の脱力感、痺れの神経症状が存在していた事案です。

裁判所は、

・整形外科は左手指の腫脹を、病院は左手のうっ血、冷感等を認めており、カラー写真上もこれを確認できること、

・したがって、頸椎捻挫後の頸部から左上肢にかけての神経症状は、他覚的に証明されたといえること

から、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12級12号を適用するのが相当であると判断した自賠責調査事務所の判断を是認しました(大阪高裁平成18年9月28日判決、出典:交民39巻5号1227頁)。

交通事故の被害者が、事故の前から椎間板ヘルニアの既往症がありました。

交通事故直後には、特段の自覚症状がありませんでしたが、事故後約10日くらいから、しびれや麻痺が出現し、右足外側全体の疼痛も生じて、MRIで異常所見が見られました。

自賠責は非該当でしたが、裁判所は、交通事故との因果関係を認め、後遺障害等級12級に相当すると認めた上、50%の素因減額をしました(東京地裁平成10年2月26日判決、交民31巻1号262頁)。

以上の裁判例から見ると、後遺障害等級12級が認定されるには、

・症状の一貫性
・画像所見
・神経学的所見

が重視されていることがわかります。

後遺障害等級認定が間違っている時は異議申立

異議申立とは

自賠責後遺障害等級認定が非該当となり、あるいは14級が認定された場合でも、その等級が間違っていることがあります。

その場合には、正しい等級に認定しなおしてもらう「異議申立」という手続があります。

この異議申立は、何度でも行うことができます。

後遺障害等級認定を加害者側の保険会社が「事前認定」の手続で行った場合には、任意保険会社から認定結果の通知がなされます。

そこで、この任意保険会社に対して異議申立書を提出することができます。

保険会社は、異議申立書が提出された場合には、損保料率機構に対して送付することになります。

このような任意保険会社による「一括払い」が行われている場合でも、被害者は、「被害者請求」に切り替えて、自ら自賠責保険会社に異議申立書を提出することもできます。

この場合には、損害賠償額の請求となるので、認定された後遺障害等級に応じた損害賠償額の支払いがなされることになります。

被害者請求について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
【交通事故の保険金】自賠責保険への被害者請求の方法を解説

異議申立のポイント

異議申立は、認定された等級に対する不服申立です。

ただ単に異議申立をするだけでは、同じ等級が認定されて終わります。

異議申立では、認定結果はどこが間違っているのかを明らかにする必要があります。

そのため、異議申立書には、以下のような内容を記載することになります。

(1)自覚症状について

・症状の一貫性

・事故の状況と傷害部位の一致

・残存した障害は、医学的知見に照らして合理性があるか

(2)他覚所見

・画像診断による異常所見の指摘

・神経学的検査による異常所見の指摘

・自覚症状、画像所見による異常所見と神経学的検査による異常所見の整合性

多くの場合、医学的資料が不足しているので、新たな診断書や医師の意見書、検査の実施等を行って、異議申立をすることになります。

後遺障害等級認定の異議申立について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
後遺障害等級認定とは?認定の仕組みと異議申立のポイント

むち打ち後遺障害の逸失利益

逸失利益とは

むち打ちで自賠責後遺障害等級認定を受けると、今後、神経障害の後遺症に悩まされ続けることになります。

仕事にも支障が出ることが予想されます。

そのため、後遺障害による将来の収入の減少の補償を求めていく必要があります。

これが逸失利益です。

逸失利益の計算式は、以下のとおりです。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

基礎収入は、事故前の収入を基礎とします。

労働能力喪失率は、12級の場合には、14%、14級の場合には5%です。

ライプニッツ係数は、将来の中間利息を差し引くものです。

逸失利益について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
【後遺障害の逸失利益】職業別の計算と早見表

自賠責等級よりも高い等級や喪失率が認定された裁判例

大阪地裁平成7年3月22日判決、交通事故民事裁判例集28巻2号458頁)

64歳女性の下請縫製業者の交通事故です。

自賠責後遺障害等級12級が認定されていましたが、裁判所は、7年間50%の労働能力喪失率を認めました。

理由としては、

・業務用ミシンを使用して縫製業を営むことは殆ど困難になったこと

・症状固定時の原告の年齢が64歳であり、就労先を得ることは困難であること

・家事労働は同居の娘がしていることなどの事情

を考慮しています。

神戸地裁平成12年11月20日判決、交通事故民事裁判例集33巻6号1904頁)

33歳女性のピアノ講師の交通事故です。

自賠責後遺障害等級14級が認定されていましたが、裁判所は、34年間10%の労働能力喪失率を認めました。

理由としては、頸部捻挫、頸椎不安定症及び右尺骨神経麻痺については、その症状固定後も、肩の凝り、右腕の痛み、しびれ感、握力低下の症状が残ったものと認められるところ、右後遺障害の部位、程度、14級10号の認定を受けたことに職業、性別、年齢等を勘案した、ということです。

神経障害における労働能力喪失期間とは?

神経障害で労働能力喪失期間が制限される理由

後遺障害が残った場合には、後遺障害がなければ将来得られたはずの収入が得られなくなったことによる損害、いわゆる逸失利益を請求することになります。

この逸失利益は、原則として、労働能力喪失期間は症状固定時から67歳までとされています。

しかし、じつは頸椎捻挫や腰椎捻挫による神経障害の後遺障害では67歳まで認められるケースは少ないです。

たとえば、神経障害における労働能力喪失期間に関する多くの裁判例では、12級13号の場合は5年から10年程度で、14級9号では5年以下の認定になっています。

これは、むちうち症などの神経障害は上記の期間が経過すれば治癒していくことが一般的であるという医学的判断に基づいているからです。

そのため、加害者側の任意保険会社との交渉では、14級9号における労働能力喪失期間を2~3年として和解案が提示されることが多くあります。

しかし、交渉の進め方次第で労働能力喪失期間が5年間と認められるケースもあるので、妥協することなく交渉を続けることも大切になります。

この場合、裁判例などを調べる余裕があるなら、できるだけ長い労働能力喪失期間が認められたものを保険会社に提示して交渉を進めていくのがよいでしょう。

長期の労働能力喪失期間が認められた裁判例

東京地裁平成12年3月15日(交民33巻2号541頁)

27歳成型工の男性の交通事故です。

裁判所は、後遺障害等級を12級12号と認定し、労働能力喪失率を等級どおり、労働能力喪失期間を相場としては10年程度のところ、39年として、逸失利益を計算しました。

理由としては、頸部捻挫による右小指、環指から前腕尺側の知覚鈍麻、第4、第5腰椎間の椎間板ヘルニアの増悪による右仙腸関節部の痛み、右上臀部の痛みが残ったことが認められる、とされています。

岡山地裁平成5年4月23日(交民26巻2号521頁)

59歳タクシー運転手の男性の交通事故です。

自賠責後遺障害等級は、神経症状が非該当、耳鳴りや難聴で14級でした。

裁判所は、労働能力喪失率について、基準としては5%のところ14%を認め、労働能力喪失期間について、相場としては5年間のところ、8年間を認めました。8年間というのは、67歳までが8年間だったためと推測されます。

理由は、以下のとおりです。

原告は、外傷性頸部症候群、両耳鳴り、両感音性難聴、外傷後神経症等の症状について、入通院して治療を受け、特に耳鳴りに関しては開頭手術まで受けたが、軽度の左耳鳴り、難聴、第4、第5腰椎骨棘形成、頭重感、首筋痛等の症状が残り、症状固定の診断を受け、自賠責後遺障害等級の事前認定を受けたところ、当初自賠責後遺障害の適用には達しないとして非該当とされた後、異議申立後、原告には神経学的な他覚所見は認められないものの、自覚症状としての外傷性頸部症候群による左耳鳴り、難聴が同等級14級に該当するものとされた。

原告は、本件事故以前は通常の健康体で、特段の持病もなく、タクシー運転手としての勤務に何等差支えはなかった。

しかし、本件事故による傷害の治療のため長期間の入通院の後、一旦職場に復帰したものの、従前のとおり働くことができず、現在では、左耳に虫が入っているような静かな場所では気になる程度の小さい耳鳴りが常時継続し、幾分左耳が聞こえにくい感じで、疲労時や悪天候時に頭重感、首筋の痛みや肩凝り等があり、従前タクシー運転手として昼夜通常に勤務できていたのに、肩凝り、目の疲れ、腰痛等が出やすく、夜間の勤務に耐えられない状態となっており、事故当時の勤務先タクシー会社を退職して、別会社で夜間勤務のないアルバイトの運転手として稼働している。

上記認定事実に加え、原告の後遺障害の内容程度、年齢、職種、その後の転職や勤務支障の状況等を総合考慮すると、原告は、本件事故の後遺障害により少なくともその主張にかかる14%程度の労働能力を喪失し、その期間は症状固定時(59歳)から8年間にわたるものと認めるのが相当である。

大阪地裁平成18年9月27日(自保ジャーナル1679号)

33歳会社員の女性の交通事故です。

裁判所は、後遺障害等級を14級と認定し、喪失率は5%、労働能力喪失期間は、相場としては5年間のところ、10年間と認めました。

理由としては、以下のとおりです。

本件事故により、原告が被った後遺障害は、左上肢の疼痛、運動困難、肩甲骨部の疼痛、左右の握力低下、めまい、嘔気等であり、障害の内容及び程度を考慮するならば、14級に該当し、労働能力喪失率は5%、喪失期間は10年間と認めるのが相当である。

事例①:頸椎捻挫(14級9号)の場合の慰謝料の額

では、実際の損害賠償金額の算定はどのように行なうのでしょうか?

ここでは、45歳(男性・年収600万円)の会社員が交通事故被害を受け、頸椎捻挫(むちうち)のために会社を20日間休業し、6ヵ月間の通院加療を行なったものの、14級9号の後遺障害が残ってしまったケースで考えてみます。

請求できる損害項目

通常、請求できる損害項目には次のものがあります。

①治療費
②通院交通費(病院までの交通費)
③休業損害(ケガの影響や治療のために会社を休業した期間の損害金)
④傷害慰謝料(ケガにより肉体的苦痛を受けたこと、通院加療を強いられたことに対する慰謝料)
⑤文書費(損害賠償請求関係費用の一部であり、事故証明書や後遺障害診断書などを取得するために支払った費用)
⑥後遺障害慰謝料(後遺障害が残ったことに対する慰謝料)
⑦逸失利益(後遺障害が残ったことによって収入が減少するために失われる利益)

ここでは、被害者の方が治療費として100万円、通院交通費として8万円、文書費として2万円を支払ったとします。

休業損害

会社員は給与所得者なので、事故前の収入を基礎として、ケガによって休業したことによる現実の収入減分が休業損害になります。

休業損害証明書(勤務先が発効するもので、事故直前の3ヵ月間の給与額と実際に休業した日が記載されている)や源泉徴収票などの資料に基づいて算定を行ないます。

計算式は、次のようになります。

事故前3ヵ月の給与の合計額 ÷ 90日 × 休業日数

通常、事故直前の3ヵ月間の給与額を前提として平均賃金を算出します。

たとえば、48万円、51万5000円、49万円だったなら、休業損害は、

148万5000円÷90日×20日=33万円
となります。

【参考記事】
【休業補償】交通事故で仕事や家事を休んだ時にもらえる休業損害を解説

傷害慰謝料

傷害慰謝料は、「交通事故入通院慰謝料表」を参考にして金額を算定します。

詳しく知りたい方は、以下の本をご参照ください。

【出典】「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は下の表のように等級によって決まっています。

14級の場合は、110万円になります。

後遺障害等級1級 2800万円
後遺障害等級2級 2370万円
後遺障害等級3級 1990万円
後遺障害等級4級 1670万円
後遺障害等級5級 1400万円
後遺障害等級6級 1180万円
後遺障害等級7級 1000万円
後遺障害等級8級 830万円
後遺障害等級9級 690万円
後遺障害等級10級 550万円
後遺障害等級11級 420万円
後遺障害等級12級 290万円
後遺障害等級13級 180万円
後遺障害等級14級 110万円

逸失利益

後遺障害逸失利益の計算式は次の通りです。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

ここでのケースでは、基礎収入は600万円、14級の労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は5年間とします。

前述したように、神経障害における労働能力喪失期間については争いがありますが、まず最初に請求する額としては14級であれば、5年間として算定すればいいでしょう。

5年間のライプニッツ係数は利率を5%として計算して4.579とします。

600万円 × 0.05 × 4.579 = 137万3700円

以上の金額を各項目に当てはめていくと、後遺障害等級14号9号の損害賠償金額は次のようになります。

①治療費/100万円
②通院交通費/8万円
③休業損害/33万円
④傷害慰謝料/89万円
⑤文書費/2万円
⑥後遺障害慰謝料/110万円
⑦逸失利益/137万3700円

請求金額/479万3700円

なお、事前に治療費や休業損害を保険会社から受け取っている場合には、その合計額を請求額から控除することになります。

また、訴訟になった場合は上記請求額に48万円の弁護士費用が加算される可能性があります。

当法律事務所の解決事例

ではここで、私たちが実際に解決したオリジナルの解決事例を見てみましょう。

42歳の男性が、交通事故で頸椎捻挫などのケガを負ってしまいました。

治療をしたものの、頸部痛や頭痛などの神経症状の後遺障害が残ってしまい、後遺障害等級14級が認定されました。

加害者側の保険会社は63万2280円の示談金を提示しましたが、納得がいかない被害者の方が当法律事務所に相談したところ、増額が可能ということで弁護士に依頼しました。

交渉は決裂し、裁判になりましたが、最終的な示談金は当初の約4倍の251万5358円で解決しました。

【参考記事】
みらい総合法律事務所の解決実績はこちら

事例②:頸椎捻挫(12級13号)の場合の慰謝料の額

次に、32歳の女性(主婦)が交通事故の被害を受け、頸椎捻挫(むちうち症)、右大腿骨骨折などで1ヵ月の入院加療、その後1年間の通院加療を行なったものの、神経症状の後遺症が残り、頸椎捻挫で12級13号、右大腿骨は14級9号、合わせて12級の後遺障害が残ってしまったケースで考えてみます。

請求できる損害項目

通常、請求できる損害項目には次のものがあげられます。

①治療費
②通院交通費(病院までの交通費)
③入院雑費(入院することで発生する洗面用具や軽食などの費用)
④休業損害(ケガの影響や治療のために会社を休業した期間の損害金)
⑤傷害慰謝料(ケガにより肉体的苦痛を受けたこと、通院加療を強いられたことに対する慰謝料)
⑥文書費(損害賠償請求関係費用の一部であり、事故証明書や後遺障害診断書などを取得するために支払った費用)
⑦後遺障害慰謝料(後遺障害が残ったことに対する慰謝料)
⑧逸失利益(後遺障害が残ったことによって収入が減少するために失われる利益)

ここでは、被害者の方が治療費として200万円、通院交通費として10万円、文書費として2万円を支払ったとします。

入院雑費

入院雑費は、1日につき1500円が基準とされています。

ここでは、1ヵ月間入院していることから、

1500円 × 30日 = 4万5000円

となり、この金額を請求することができます。

休業損害

主婦が日々行なっている家事も労働であり、主婦が家事を行なわない場合には家政婦を雇うなどして出費が必要となると考えられるため、家事労働自体も経済的価値があると考えられています。

主婦の平均賃金は、賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計、女子労働者の全年齢平均の賃金を基礎とします。

ここでは、372万7100円とします。

休業期間は、入院していた1ヵ月間にプラスして、退院後の1ヵ月はまともに家事を行なえなかったと考えて、2ヵ月間とします。

これらのことから、休業損害額は次のようになります。

372万7100円 ÷ 365日 × 61日(2ヵ月間)=62万2885円

【参考記事】
【休業損害】交通事故で仕事や家事を休んだ時にもらえる賠償金を解説

傷害慰謝料

傷害慰謝料は、前述の「交通事故入通院慰謝料表」を参考にして金額を算定します。

後遺障害等級12級の神経症状は、他覚的所見があることを条件としているため、ここでのケースは、むちうち症で他覚症状がある場合であることから、前述の別表1を用います。

入院期間1ヵ月、通院機関1年の欄を見ると、183万円と記載されているので、この金額が傷害慰謝料ということになります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、前述の表にあるように等級によって決まっています。

12級の場合は、290万円になります。

逸失利益

後遺障害逸失利益の計算式は次の通りです。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

ここでのケースでは、基礎収入は休業損害の算定基礎と同様に賃金センサスにより、年間372万7100円となり、12級の労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は10年間とします。

10年間のライプニッツ係数は利率を5%として計算して、8.530とします。

372万7100円 × 0.14 ×8.530 7.722 = 445万0902円

以上の金額を各項目に当てはめていくと、後遺障害等級12号13号の損害賠償金額は次のようになります。

①治療費/200万円
②通院交通費/10万円
③入院雑費/4万5000円
④休業損害/62万2885円
⑤傷害慰謝料/183万円
⑥文書費/2万円
⑦後遺障害慰謝料/290万円
⑧逸失利益/445万0902円

請求金額/1196万8787円

なお、事前に治療費や休業損害を保険会社から受け取っている場合には、その合計額を請求額から控除することになります。

また、訴訟になった場合は上記請求額に119万円の弁護士費用が加算される可能性があります。

当法律事務所の解決事例

42歳の男性が、交通事故でむちうちのケガを負ってしまい、神経症状の後遺症が残ってしまいました。

本人が申請したところ、後遺障害等級12級13号が認定されました。

加害者側の保険会社は、208万3914円の示談金を提示しましたが、この金額が妥当かどうか確認のため被害者の方が当法律事務所に相談したところ、増額が可能ということで弁護士に依頼しました。

交渉の結果、最終的には1005万0188円を獲得。

当初提示額の約4.8倍の金額で解決しました。

【参考記事】
みらい総合法律事務所の解決実績はこちら

まとめ

以上、説明してきたように、むち打ち症は、外部から障害が見えないため、後遺障害等級の認定も微妙なケースが多いです。

しかし、後遺障害等級が14級なのか、12級なのかによって慰謝料額は大きく違ってくるので、正しい後遺障害等級を認定してもらうことがとても重要です。

ところが、認定された後遺障害等級が正しいのかどうか素人が判断することはとても難しいものがあります。

したがって、後遺障害等級が認定された際には、それが正しいものかどうか、必ず交通事故に精通した弁護士に相談して判断してもらうことが大切です。

そして、保険会社が適正な示談金を提示してくれないことが多い、ということも忘れてはいけません。

以上のことをよく理解していただき、決して損をしないように気をつけていただきたいと思います。

【参考記事】
交通事故の示談交渉で被害者が避けておきたい7つのこと