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交通事故によるケガの治療の注意点と治療費打ち切りの対応策

最終更新日 2024年 06月17日

【交通事故の治療費・慰謝料】ケガの治療の注意点と支払い打ち切りの対応策
交通事故でケガを負った場合、被害者の方は入院・通院をして治療を受けると思いますが、その際に治療費や慰謝料にも関係してくる、気をつけるべきポイントがあります。

じつは通院中、突然に加害者側の保険会社から治療費の支払いが停止されたり、治療費の支払い自体を拒否されることがあります。

精神的、肉体的につらい思いをしているのに、さらに金銭的な損害を受けることは避けたいところです。

そのために大切なこと、また交通事故でもっとも多いケガである「むち打ち」についてもお話ししていきます。

交通事故の発生からケガの治療中で気をつけるポイント

(1)事故後は必ず病院に行く

交通事故の被害にあった場合、「たいしたケガではない」などといって病院に行かない方がいますが、これはいけません。

たとえば、むち打ち症などでは、日にちが経ってから痛みが出てきたり、首が動かないといった運動障害が起きてくる場合があります。

しかし、事故後すぐに病院に行っていないと、交通事故と後遺症の因果関係が認められない可能性があり、すると治療費や慰謝料などを受け取れなくなってしまいます。

勝手な自己判断はせず、少しでも身体に異常があれば、必ず病院に行って医師の診察を受けてください。

(2)自分の体の状態を正しく医師に伝える

ケガによる自分の体の状態は、自分がいちばんよくわかっている、と思います。

しかし、どのように表現したらいいのか、どう伝えたらいいのかわからず、戸惑うこともあると思います。

また、医師も一人の人間ですから、それぞれの考えや判断、とらえ方に個人差があるでしょう。

ですから、「自分は素人で、医師は専門家なのだから」といって相手任せにせず、主治医とはしっかりコミュニケーションをとりながら、自分の体の状態をできるだけ正確に伝えることが大切です。

自分の体の様子をよく見て、感じ、気になる症状はできるだけ医師に伝えることで、医師も正しい診断ができ、正確な診断書を提出することで、治療費や慰謝料などで被害者の方が損をすることを防ぐことができます。

(3)通院を途中でやめたり不定期にしない

通院を続けていると、そのうち症状が回復してきて、途中で治療をやめてしまったり、1か月以上も通院を中断してしまう、といった方がいますが、これもNGです。

継続して通院をしていないと、治療の必要性を疑われてしまうことがあります。

すると、治療費や入通院慰謝料が認められない可能性がでてきてしまいます。

入通院慰謝料は原則として、入通院した期間を基準に算定されます。

ですから、本当は治療が必要なのに通院しないでいると、その期間は慰謝料の対象とは認められなくなってしまいます。

「仕事が忙しくて…」「時間の余裕がなくて…」といった理由は認められないので気をつけてください。

(4)通院しすぎるのも問題…過剰診療や高額診療に気をつける

逆に、通院しすぎてしまうのも問題があります。

必要以上に治療を受けていると、「過剰診療」を疑われる場合がありますし、「高額診療」と判断される場合があるので注意が必要です。

たとえば、病院で受けた治療がケガの状態と照らし合わせたところ、医学的にみて必要ないと判断されてしまうと、次のようなデメリットが発生してしまいます。

・加害者側の保険会社から治療費の支払いを打ち切られ、自己負担しなければいけなくなる。
・慰謝料などの損害賠償金を受け取ることができなくなってしまうおそれがある。
・保険金詐欺と疑われてしまう可能性もある。

(5)整骨院や鍼灸、マッサージなどに通う際の注意点

ケガの状態が落ち着いてくると、待ち時間が長い病院へ行くのは面倒だ、といった理由などから、病院への通院をやめて整骨院や整体院、鍼灸院、マッサージなどに通う方がいますが、これには注意が必要です。

というのは、交通事故の治療費や慰謝料などの損害賠償というのは原則、医学的にその必要性と相当性が求められる場合に被害者の方に支払われるものだからです。

また、整骨院や整体院では診断書を作成することはできません。

ただし、「自動車損害賠償責任保険の保険金及び自動車損害賠償責任共済金等の支払基準」(平成13年 金融庁 国土交通省 告示第1号)には、「柔道整復等の費用」として、「免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。」とされているので、保険会社から実費として治療費の支払いを受けられる可能性があります。

その場合、「必要かつ妥当な実費」であるという証明が必要となるので、主治医から整骨院などでの治療が必要である旨の診断書や指示書を書いてもらうことが必要になります。

ですから、整形外科と整骨院などは両方を併用して通院するのがいいでしょう。

なお過去には、医師の指示がない場合でも、施術により症状が軽減したとして一定程度の必要性と相当性が認められた裁判例があります。

ただし、施術の実費は全額ではなく、期間などが制限される場合もあります。

詳しくは弁護士に相談してみるといいでしょう。

治療費の支払いが打ち切られる!?対処法は?


加害者が任意保険に加入しているなら、被害者の方は病院に治療費を支払わなくていいケースが多いです。

というのは、治療費については任意保険会社がまず病院に支払い、その後に自賠責保険に請求するという制度があるからです。

しかし、注意しなければいけないのは、支払いが中止されたり、拒否されてしまう場合です。

(1)通院回数・頻度が少ない場合

被害者の方の通院の回数が少ない場合、加害者側の保険会社は、「もうケガは治った」「治療は必要ない」として治療費の支払いを打ち切ってしまう場合があります。

また、ケガをした場合の入通院慰謝料(傷害慰謝料)は、原則として入通院した期間でみていきますが、場合によっては、入通院した日数によって計算されるため、通院日数が少なければ当然、金額は少なくなってしまいます。

ですから、通院が必要であれば、きちんと通院して治療を受けることが大切です。

(2)漫然治療と判断される場合

ケガの状態に合っていない治療を続けていると、「効果が期待できない治療をしている」とみなされてしまう場合があります。

漫然とは、ぼんやりしている、はっきりしない、というような意味ですから、たとえば次のような場合、「効果がないような治療」として、治療費の支払いを拒否される場合があります。

・同じ種類のビタミン剤や湿布薬などをもらい続ける
・長期間、頸椎カラーを装着し続ける
・リハビリで行なうことがマッサージばかり

治療費の支払い停止を避けるためには、
・使っているビタミン剤や湿布薬の効果・効能をきちんと理解していて説明できる。
・マッサージをしていることでどのような効果が出ているのか、その経過や関係性を説明できる。

ということが大切になってきます。

(3)保険会社には、どう対応すればいいのか?

そして、(1)(2)ともに、治療費の支払い打ち切りをされないためには、保険会社の担当者と定期的にコミュニケーションをとって理解してもらっておくことも大切になります。

保険会社の担当者がケガの治療を受けているわけではないのですから、被害者の方の考えや思い、ケガの状態を正確に理解しているわけではありません。

ですから、ご自身のケガの状態や治療の内容とその必要性などについては定期的に話をして、理解を得ておくことが重要になってきます。

症状固定とは?気をつけるべきポイント解説

(1)保険会社から症状固定を求められることがある!?

「もう、このあたりで症状固定としてください。これ以降の治療費は支払えません」

こんなことを保険会社の担当者が言ってくることがあります。

被害者の方としては、理不尽なことだと感じるでしょう。

しかし、保険会社は営利法人ですから、利益を上げて支出を減らそうとします。

被害者の方への治療費や慰謝料などの保険金(状況によって、損害賠償金とも示談金ともいいます)は支出ですから、当然これを減らすためにこんなことを言ってくるのです。

ところで、症状固定とは、これ以上の治療を続けても改善の見込みがない、完治はしないという状態のことで、医師が診断をします。

つまり、症状が固定するということは、被害者の方には後遺症が残ってしまうことになります。

詳しい動画解説はこちら

(2)症状固定に関する注意ポイント

ここで被害者の方に知っておいていただきたいのは、症状固定というのは、あくまで医学的なことですから医師が診断するものであって、保険会社が判断することではないということです。

ですから、保険会社の言うことを信じて、受け入れてはいけません。

医師から症状固定の診断がないなら、まだ治療効果は上がっているということですから、治療を続けていくべきです。

ただし、注意するべきポイントがあります。

① 症状固定と保険、治療費の関係は?

前述したように、治療費については、加害者が任意保険に加入していれば、通常は、この任意保険会社が被害者の方の代わりに病院に支払ってくれます。

そして、任意保険会社はその治療費分を後から自賠責保険に請求するという仕組みになっています。

ただし、その金額は法的に120万円が上限となっています。

つまり、120万円までは任意保険会社は自ら支払わなくていいので、被害者の方の治療費を支払ってくれるのです。

しかし、それを超えた分からは任意保険会社の支出になるので、治療の必要性を厳しく判断してくることになるのです。

② 治療費の支払いはどうする?
では、治療費の支払いはどうなるのかというと、医師から症状固定の診断がないなら、まずは被害者ご自身で支払っていかなければいけません。

ただし、その後の示談交渉で任意保険会社に損害賠償金として請求することができるので、支払明細書や領収書などは必ず、すべて保管・整理しておいてください。

③ 後遺症が残ったあとの対応はどうすればいい?

さて、症状固定となると後遺症が残ってしまうことになるので、治療費や入通院慰謝料の支払いは、ここで終了します。

その代わり、今後は、後遺障害慰謝料や逸失利益(ケガや後遺症で仕事ができなくなったために失ってしまった収入・利益)などを請求していくことができます。

④ 後遺障害等級認定の申請をする

そのためには、ご自身の後遺症がどのくらいのものなのかの判断として、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

後遺障害等級は、1級から14級までが設定されており、1級がもっとも重度になります。

後遺障害等級が認定されることで初めて、加害者側の任意保険会社は後遺障害慰謝料や逸失利益、休業損害、将来介護費などの計算ができるので、この等級はとても重要なものになってきます。

【参考情報】国土交通省「自賠責後遺障害等級表」

【参考記事】【後遺障害】交通事故の被害者が等級申請でやってはいけない5つのこと

⑤ 示談交渉とは?注意するべきポイントは?

通常、被害者の方の後遺障害等級が確定すると、加害者側の任意保険会社から慰謝料などの示談金(損害賠償金)の提示があります。

この金額で納得がいくなら、示談成立となりますが、注意しなければいけないのは、保険会社が提示してくる金額は本来であれば被害者の方が受け取るべき金額よりも低いことがほとんど、ということです。

実際、保険会社は2分の1、3分の1、さらにはそれ以下の金額を被害者の方に提示してくることがあります。

なぜ、そんなことが起きるのでしょうか?
被害者の方は、どう対応していけばいいのでしょうか?

詳しくは次の記事をぜひお読みください。
被害者の方が知りにくい、交通事故の真実がわかってしまうと思います。

交通事故の慰謝料で被害者がやってはいけない6つのこと

加害者が保険に入っていなかった場合どうすればいい?


交通事故に関わる保険には、「自賠責保険」と「任意保険」があります。

自賠責保険は法律によって、すべてのドライバーが加入することを義務づけられている保険です。

被害者保護の観点から設立されたものであるため、自賠責保険には最低限の補償としての金額の限度があります。

ご自身が認定された等級によって、次のように補償金額が変わってくるので覚えておいていただきたいと思います。

支払限度額1
神経系統の機能、精神、胸腹部臓器への著しい障害により介護が必要な場合(被害者1名につき)

自賠責法別表第1

常時介護を要する場合
(後遺障害等級1級)
最高で4000万円
随時介護を要する場合
(後遺障害等級2級)
最高で3000万円

支払限度額2
上記以外の後遺障害の場合
第1級:最高で3000万円~第14級:最高で75万円

自賠責法別表第2

第1級 3000万円
第2級 2590万円
第3級 2219万円
第4級 1889万円
第5級 1574万円
第6級 1296万円
第7級 1051万円
第8級 819万円
第9級 616万円
第10級 461万円
第11級 331万円
第12級 224万円
第13級 139万円
第14級 75万円

通常、被害者の方は自賠責保険からまず保険金を受け取ります。

そして、足りない部分については加害者側の任意保険会社から受け取ることになります。

ですから、被害者の損害が大きい場合に備えてドライバーが加入するのが任意保険なのですが、困ったことに加害者が任意保険に加入していないケースがあります。

それどころが、自賠責保険に加入していないという、とんでもないケースもあります。

そうした場合、被害者の方は損害賠償を誰から受ければいいのでしょうか?

むち打ち症の治療での注意ポイント

交通事故が原因のケガで、もっとも多いのが「むち打ち症」です。

しかし、この「むち打ち症」、交通事故の損害賠償では、じつはとても難しいものです。

というのは、症状が外からわかりにくいため、判断が難しいからです。

現在、むち打ち症でお困りの方は、次の記事で詳しく解説しているので、ぜひお読みください。

むちうちの後遺障害(12級、14級)の慰謝料額と増額事例

実際の慰謝料増額事例を紹介!

交通事故の損害賠償金は、前述したように保険会社はかなり低い金額を被害者の方に提示してきます。

これを覆して、増額を勝ち取るのは、じつは被害者の方単独では非常に難しいのです。

それは、なぜなのか?
なぜ弁護士に依頼すると増額するのか?

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【動画解説】 治療費はどこまで請求できるか?

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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