後遺障害14級9号の慰謝料相場は?認定基準・むちうち申請のポイントを弁護士が解説
後遺障害14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」に認定される等級で、交通事故のむちうち(頸椎捻挫)で残った首や腰の痛み・しびれが典型例です。
「14級9号の慰謝料の相場はいくら?」
「計算ツールで出た金額は、そのまま受け取れるの?」
と気になっている方も多いのではないでしょうか。実は、受け取れるお金は慰謝料だけではありません。逸失利益(いっしつりえき)などを合わせた「総額」で考えることが、とても大切です。
この記事では、次のことが分かります。
- 後遺障害14級9号の慰謝料の相場
(自賠責基準と弁護士基準の違い) - 慰謝料だけでなく逸失利益まで含めた
「総額」の計算方法とシミュレーション - 慰謝料計算ツールの金額を
そのまま信じてはいけない理由 - 14級9号でもらえる金額を
左右する具体的なポイント
後遺障害14級9号の慰謝料相場
【3つの基準で比較】
後遺障害14級9号の慰謝料は、どの「基準」で計算するかによって金額が大きく変わります。まずは相場の全体像から確認していきましょう。
慰謝料には3つの基準があり、
金額が大きく変わる
交通事故の慰謝料の計算基準には、次の3つがあります。
- 自賠責基準:国が定める最低限の補償で、
もっとも低額になりやすい基準 - 任意保険基準:各保険会社が独自に
定める基準で、自賠責基準に
近い水準のことが多い - 弁護士(裁判)基準:過去の裁判例を
ふまえた基準で、
もっとも高額になりやすい
同じ14級9号でも、どの基準で交渉するかによって受け取れる金額が変わります。保険会社が最初に提示してくるのは、多くのケースで自賠責基準や任意保険基準に近い金額です。
14級9号の後遺障害慰謝料の
相場は自賠責32万円・
弁護士基準110万円
後遺障害14級の後遺障害慰謝料の相場は、自賠責基準で32万円、弁護士(裁判)基準で110万円が目安です。その差は約3.4倍にもなります。
弁護士基準の金額は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する『損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)に記載された水準にもとづくものです。
なお、14級には1号から9号までの種類があり、症状の内容ごとに認定基準が異なります。各号の認定基準の詳細や、14級9号と12級13号の違いについては、次の記事で詳しく解説しています。
14級9号で受け取れる「総額」は
いくら?慰謝料 + 逸失利益で計算
ここが本記事のいちばん大切なところです。14級9号で受け取れるお金は、後遺障害慰謝料の110万円だけではありません。実際には、慰謝料に加えて「逸失利益」なども請求できるため、総額でみると慰謝料単体の金額を大きく上回ることが少なくありません。
総額を構成する4つのお金
後遺障害14級9号で請求できる主なお金は、次の4つです。
- 入通院慰謝料:ケガの治療で
入院・通院した期間に対する慰謝料 - 後遺障害慰謝料:後遺障害が残った
こと自体に対する慰謝料
(14級は弁護士基準110万円) - 後遺障害逸失利益:後遺障害で
将来の収入が減ることへの補償 - 休業損害:治療のため仕事を休んで
減った収入への補償
この中でも見落とされやすいのが「後遺障害逸失利益」です。1つずつ詳しく解説します。
見落とされやすい
「後遺障害逸失利益」とは
逸失利益とは、後遺障害が残ったことで将来得られるはずだった収入が減る分を、あらかじめ補償してもらうお金です。慰謝料とは別に請求できるため、総額を計算するうえで欠かせない項目です。
14級9号の
逸失利益の計算方法
後遺障害逸失利益は、次の計算式で求めます。
労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
後遺障害14級の労働能力喪失率は原則として5%です。また、14級9号のようなむちうち等の神経症状の場合、労働能力喪失期間は多くのケースで5年程度に制限されることが多い点に注意が必要です。痛みやしびれは時間の経過とともに軽くなっていくと考えられているためです。
ライプニッツ係数とは、将来受け取るお金を今の価値に置き換えるための数字です。2020年4月の民法改正で法定利率が年3%となり、喪失期間5年の場合の係数は4.5797です。
総額シミュレーション:
年収400万円・通院6か月のケース
具体的にイメージできるよう、会社員(事故時40歳・年収400万円)がむちうちで14級9号に認定され、6か月通院したケースで総額を計算してみます。
- 入通院慰謝料(弁護士基準・通院6か月):
約89万円 - 後遺障害慰謝料(弁護士基準・14級):
110万円 - 後遺障害逸失利益:
400万円 × 5% × 4.5797 = 約92万円
これらを合計すると、慰謝料と逸失利益だけで約291万円になります(治療費や休業損害は別途)。
一方、同じケースを自賠責基準でみると、後遺障害部分は慰謝料と逸失利益を合わせても限度額の75万円までしか支払われません。つまり、後遺障害部分だけで比べても、弁護士基準(慰謝料110万円 + 逸失利益約92万円 = 約202万円)と自賠責基準(上限75万円)で100万円以上の差が生じる計算になります。
収入や年齢、通院期間によって金額は変わりますが、「慰謝料だけ」で考えると総額を大きく取りこぼすおそれがあることが分かります。会社員・自営業者それぞれの逸失利益・休業損害の計算方法は、次の記事で詳しく解説しています。
「慰謝料計算ツール」の
金額をそのまま信じては
いけない3つの理由
インターネット上の慰謝料計算ツールは、おおよその目安をつかむには便利です。しかし、出てきた金額を「必ずもらえる金額」と考えるのは危険です。実務では、次の3つの理由でツールの金額と実際の受取額がずれることがあります。
1つずつ詳しく解説します。
逸失利益の喪失期間が
過大に計算されやすい
多くのツールは、労働能力喪失期間を就労可能な67歳までの全期間で自動計算するものが多いです。しかし14級9号では、前述のとおり喪失期間が5年程度に制限されるのが実務上一般的です。そのため、ツールの金額が実際より大きく出てしまうことがあります。
素因減額や
過失相殺が反映されない
被害者側にもともとあった体質や持病(素因)が損害の拡大に影響した場合、「素因減額」として賠償額が減らされることがあります。また、事故の状況によっては被害者にも過失が認められ、その分だけ減額(過失相殺)されます。これらはツールでは反映されないため、金額が変わる要因になります。
自賠責基準の別表
(IとII)を取り違えやすい
入通院慰謝料の弁護士基準には、通常の別表Iと、むちうちなど他覚所見のない場合の別表IIがあります。14級9号のむちうちは原則として金額が低い別表IIで計算されますが、ツールで別表Iを選ぶと金額が過大に表示されてしまいます。正確な金額を知りたい場合は、資料をもとに弁護士へ確認することをおすすめします。
14級9号の慰謝料・総額を
左右する3つのポイント
最後に、実際に受け取れる総額を大きく左右する3つのポイントを整理します。
1つずつ詳しく解説します。
14級9号として
正しく認定されること
むちうちの神経症状は、14級9号と12級13号のどちらに認定されるかで金額が大きく変わります。画像などで症状を医学的に「証明」できれば12級13号、「医学的に説明」できる場合は14級9号が目安とされています。また、症状が軽いと判断されると「非該当」となることもあります。14級は後遺障害の中でも認定件数が多い一方で、非該当となるケースも少なくありません。
通院の実績(頻度・継続)が
十分であること
14級9号の認定では、症状が一貫して続いていることが重視されます。そのため、自己判断で通院をやめたり、通院の間隔が空きすぎたりすると、認定に不利になることがあります。
目安として、痛みが続く間は週2〜3回程度の通院を6か月ほど継続することが一つの参考になります。ただし通院回数は多ければよいというものではなく、医師の指示に沿うことが基本です。
弁護士基準で交渉すること
ここまで見てきたとおり、自賠責基準と弁護士基準では総額が大きく異なります。被害者本人が交渉しても、保険会社が弁護士基準の金額をそのまま認めることは多くありません。弁護士が代理人として交渉することで、弁護士基準に近い金額での解決を目指せます。
よくある質問
Q. 後遺障害14級9号の
慰謝料はいくらですか?
A. 後遺障害慰謝料の相場は、自賠責基準で32万円、弁護士(裁判)基準で110万円が目安です。ただし実際に受け取れる総額は、これに逸失利益や入通院慰謝料などが加わるため、慰謝料単体の金額よりも大きくなるのが一般的です。
Q. 慰謝料計算ツールで出た
金額は、
そのまま受け取れますか?
A. そのまま受け取れるとは限りません。ツールは喪失期間を長めに計算しがちで、素因減額や過失相殺、別表の選択も反映されません。あくまで目安として使い、正確な金額は資料をもとに弁護士へ確認することをおすすめします。
Q. 14級9号でも逸失利益は
もらえますか?
期間はどれくらいですか?
A. 14級9号でも逸失利益を請求できます。労働能力喪失率は5%です。ただし、むちうち等の神経症状では労働能力喪失期間が5年程度に制限されることが多く、この点で保険会社と争いになりやすいため注意が必要です。
Q. 14級9号の認定率や、
必要な通院回数の目安は
ありますか?
A. 14級は後遺障害の中でも認定件数が多い等級ですが、非該当となる例も少なくありません。通院は、痛みが続く間は週2〜3回を6か月ほど継続することが一つの目安ですが、回数よりも症状の一貫性と医師の指示に沿うことが大切です。
まとめ
後遺障害14級9号の後遺障害慰謝料は、自賠責基準で32万円、弁護士基準で110万円が目安です。しかし、実際に受け取れる総額は慰謝料だけでは決まりません。逸失利益や入通院慰謝料まで含めると、弁護士基準では総額が大きく変わってきます。
計算ツールの金額はあくまで目安であり、喪失期間や素因減額などによって実際の金額はずれます。適切な等級認定を受け、弁護士基準で交渉することが、総額を大きく左右します。
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