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会社員の交通事故の慰謝料・逸失利益・休業損害の計算方法

最終更新日 2024年 03月06日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【会社員】の交通事故の慰謝料・逸失利益・休業損害の計算方法

交通事故の被害といっても、さまざまあります。

・交通事故でケガをしたが治療で完治した。
・治療を続けたが残念ながら後遺症が残ってしまった。
・交通事故で大切な人が亡くなってしまった。

 

そして、被害の状況によって請求できる損害賠償項目と金額は変わってきます。

また、知らなかったために、肉体的・精神的な損害だけでなく、さらに損害賠償金でも大きな損害を被ってしまうケースが後を絶たないという現実があります。

本記事では、会社員の方が交通事故で、さらなる損害を被らないために大切な慰謝料、休業損害、逸失利益の内容から計算方法までを解説していきます。

会社員の休業損害の内容と計算方法について

(1)休業損害とは?

交通事故で負った傷害(ケガ)の治療のために仕事を休まざるを得なくなり、その間、得ることができなかった収入のことを休業損害といいます。

休業損害は、ケガの治療が始まってから、①完治するまで、あるいは②医師から症状固定の診断をされるまでの間の休業について自賠責保険に請求することができます。

ケガの治療をしたものの完治せず、症状固定により後遺症が残ってしまった場合は入院慰謝料と休業損害は受け取ることができなくなります。

その代わり、ご自身の後遺障害等級が認定されれば、新たに「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」などを受け取ることができます。

なお、休業補償というものもありますが、これは勤務中に負った交通事故の場合に適用されるもので労災保険から支払われます。

(2)交通事故の休業損害の計算のポイント

休業損害の金額は次の計算式で求めます。

<休業損害の計算式>
基礎収入(日額) × 休業日数

※給与所得者の場合の日額 = 3か月の給与額の合計額 ÷ 90日

 
季節によって繁閑があったり、仕事内容が変わるために給与額が大きく変動するような場合では、直近の3ヵ月の平均賃金とせずに、前年同期の収入を参考にすることがある。

<認められる金額>
ケガで休業したことによる現実の収入減分(交通事故前の収入を基礎とする)。

<認められる条件>
休業の原因が交通事故によるケガであること。

有給休暇を使用した時も休業損害と認められる。

休業に伴う賞与の減額・不支給、昇給・昇格遅延による損害も休業損害と認められる。

【参考記事】
【休業損害】主婦・自営業・役員・学生など職業別の計算

 

逸失利益の種類と内容、計算方法を解説


逸失利益とは、交通事故が原因で以前のように働くことができなくなったために、将来的に得ることができなくなってしまった収入分のことです。

後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に受け取ることができるのが後遺障害逸失利益

被害者の方が死亡した場合に受け取ることができる(受取人は相続人)ものを死亡逸失利益といいます。

(1)後遺障害逸失利益の計算方法

主治医から症状固定の診断を受けて後遺症が残った場合は休業損害を受けられなくなります。が、その代わりにご自身の後遺障害等級が認定されると後遺障害逸失利益を受けることができます。

【動画で解説】交通事故で後遺障害等級はどのように認定されるのか?

参考記事:「自賠責後遺障害等級表」(国土交通省)

<後遺障害逸失利益の計算式>

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
= 後遺障害逸失利益

 
「基礎収入」

原則として、事故前の収入額を基礎とする。

ただし、将来的に現実収入額以上の収入を得られる立証があれば、その金額を基礎収入として計算する。

また、現実の収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っている場合でも、将来的に平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入として計算する。

概ね、事故時に30歳くらいの若年労働者については、学生との均衡の点もあることから全年齢平均の賃金センサスを用いるのが原則。

【動画で解説】30歳くらいの若い会社員が交通事故で死亡した時の逸失利益の算定について

※賃金センサス:厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果から出されているもので、職業や年齢、性別等によって労働者の平均賃金がわかるようになっている。

※蓋然性:ある事柄が起こる確実性、真実として認められる確実性の度合い。

「労働能力喪失率」

後遺障害等級ごとに定められた率があり、基本的にはこれを用いる。

※ただし実際の算定では、被害者の方の「職業」「年齢」「性別」「後遺症の部位と程度」「事故前後の労働状況」などを勘案し、総合的に判断していく。

<労働能力喪失率早見表>

等級 労働能力喪失率
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 35%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

【出典】「労働能力喪失率表」(厚生労働省)

「労働能力喪失期間」

被害者の方が、あと何年間働くことができたのかを仮定するもので、原則として67歳までとする。

労働能力喪失期間の始期は症状固定日とされるが、期間も含めて被害者の方の職種や地位、能力、健康状態などによって別の判断をされる場合もある。

※たとえば、交通事故のケガでもっとも多い「むち打ち症」の場合、後遺障害12級で10年ほど、14級で5年程度とされる場合が多いため、個々の具体的な症状で判断していくことが重要になる。

症状固定時の年齢が67歳以上の場合は、原則として労働能力喪失期間を簡易生命表の平均予命の2分の1とする。

なお、症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる場合は、原則として平均余命の2分の1とする。

参考(厚生労働省):令和2年簡易生命表(男)

参考(厚生労働省):令和2年簡易生命表(女)

「ライプニッツ係数」

現在と将来ではお金の価値に変動があるため、将来的な金利分の差を調整するために用いる係数。

※逸失利益は、将来に受け取るはずだった金額(収入)を前倒しで現在、被害者の方が受け取ることになるので、金利分を差し引かずに、そのまま支払ってしまうと保険会社が損をするため。

ライプニッツ係数の算出は複雑で難しいため、あらかじめ算出されている「ライプニッツ係数表」を使用する。

【参考】就労可能年数とライプニッツ係数表(国土交通省)

2020年4月1日以降に起きた交通事故の場合は、ライプニッツ係数の法定利率は3%で計算する。(以降は3年ごとに見直される)

(2)実際に後遺障害逸失利益を計算してみる


ここでは、次のような条件で実際に後遺障害逸失利益を計算してみます。

<後遺障害逸失利益の計算例>

・40歳の男性会社員(症状固定時)
・後遺障害等級:8級2号(脊柱圧迫骨折による脊柱変形で運動障害の後遺症)
・基礎収入:480万円(前年度の年収)
・労働能力喪失率:45%(後遺障害等級8級と仮定)
・ライプニッツ係数:18.327(就労可能期間27年の数値)

「計算式」
4,800,000円 × 0.45 × 18.327 = 39,586,320円

後遺障害逸失利益は、3958万6320円

なお、実際の交通事故の損害賠償実務では、上記の算定式を基本としながら、さまざまな要因、たとえば①労働能力の低下・喪失の程度、②収入の変化、③将来の昇進、転職、失業などの可能性、④日常生活でどのような不便があるのか等を考慮しながら算定します。

【動画で解説】後遺障害等級が認定された場合の逸失利益の算定方法とは?

(3)死亡逸失利益の具体的な計算方法


次の計算式で死亡逸失利益を算出します。

<死亡逸失利益の計算式>

(基礎年収額)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数)×(1-生活費控除率)
=(死亡逸失利益)

原則として、後遺症がある場合は生活費を控除しないが、死亡事故の場合は控除する。

生活費控除率は、被害者の方の家庭での立場や状況によって、概ねの相場の割合が決まっている。

<生活費控除率の目安>

被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 40%
被害者が一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合 30%
被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 30%
被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合 50%
被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 40%
被害者が一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合 30%
被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 30%
被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合 50%

<死亡逸失利益の計算例>

ここでは、次の条件で計算をしてみます

・50歳(男性)
・基礎収入:5,500,000円(事故前年度の年収)
・労働能力喪失率:100%
・ライプニッツ係数:13.166(67歳までの就労可能期間17年の数値を用いる)
・生活費控除率:30%

「計算式」
5,500,000円 ×13.166
× (1-0.3) = 50,689,100円

死亡逸失利益は、5068万9100円

【参考ページ】
【死亡事故の逸失利益】職業別の計算と早見表
【動画】会社員が交通事故で死亡した場合の逸失利益は?

 

交通事故被害の慰謝料の種類と計算方法

(1)1つではない!交通事故の慰謝料は4つ

慰謝料には、次の4つがあることを覚えておいてください。

①入通院慰謝料
入通院して治療をした場合に受け取ることができる慰謝料。

②後遺障害慰謝料
ケガが完治せずに後遺症が残ってしまい、後遺障害等級が認定された場合に受け取ることができる慰謝料。

③死亡慰謝料
被害者の方が亡くなった場合に支払われるもの(受取人は相続人)。

詳細記事:交通死亡事故の示談金の相場と慰謝料の計算

④近親者慰謝料
被害者の方に重度の後遺症が残った場合や亡くなった場合に、ご家族などの近親者が被った精神的苦痛や損害に対して支払われるもの。

詳細記事:【近親者慰謝料】被害者の家族が受け取れる固有の慰謝料

(2)慰謝料は弁護士(裁判)基準で計算する

慰謝料等の計算では、①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士(裁判)基準の3つが使われます。

加害者が任意保険に加入しているなら、示談交渉の相手はその保険会社になりますが、ここで知っておくべきは、保険会社はもっとも安い自賠責基準の金額を提示してくる場合がほとんどだということです。

しかし本来、被害者やご遺族が受け取るべきは、もっとも高額になる弁護士(裁判)基準で計算した金額です。

ですから、被害者やご遺族は、弁護士(裁判)基準による慰謝料を主張し、示談をすることが大切になってくるのです。

詳細記事:【弁護士基準】交通事故の慰謝料をできるだけ高額で示談する方法とは?

(3)ケガが完治した場合の慰謝料の計算例

①入通院慰謝料(自賠責基準の場合)

自賠責基準での入通院慰謝料は、1日あたりの金額が定められています。

そのため、慰謝料の対象となる入通院が何日間になったのかによって金額が決まります。

<入通院慰謝料の計算式>
4300円(1日あたり) × 入通院日数
= 入通院慰謝料

自賠責基準により、1日あたりの金額は4300円と定められている。

※この金額は、改正民法(2020年4月1日施行)により改定されたもので、2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は4200円(1日あたり)で計算する。

入通院をして治療した場合の対象日数は、次のどちらか短いほうが採用される。

A)「実際の治療期間」
B)「実際に治療した日数×2」

たとえば、むちうち症で、入院せず、治療期間が3か月(90日)で、3日に1回(計30日間)通院した場合、A)で計算すると、4300円×90日=387,00円になります。

しかし、B)で計算すると、4300円×(30日×2)=258,000円となるので、入通院慰謝料は258,000円が採用されることになります。

自賠責保険金には上限があり、後遺症のないケガの場合は120万円が限度額です。

しかし現実には、治療費や入通院慰謝料などで上限を超えてしまうケースもあります。

その場合は、120万円を超えた分については加害者側の任意保険会社に請求して、交渉をしていくことになります。

②入通院慰謝料(弁護士(裁判)基準の場合)

弁護士(裁判)基準での入通院慰謝料は計算が複雑なため、弁護士や裁判所では『損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故相談センター東京支部刊)に記載されている算定表を使います。

ケガの程度によって、「軽傷用」と「重傷用」の2種類の算定表があります。

「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料(むち打ちなど軽傷)の算定表」

「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料(重傷)の算定表」

たとえば前述と同条件の、入院は0、治療期間が3か月(90日)で、3日に1回(計30日間)通院した場合、軽傷用の「入院0か月」と「通院3か月」が交わったところの「53万円」が慰謝料額になります。

弁護士(裁判)基準と自賠責基準で比較すると、金額は2倍以上も違うという事実がおわかりいただけるでしょう。

(4)後遺障害が残った場合の慰謝料の計算方法

後遺症が残った場合、後遺障害等級を申請するとその程度によって、1級から14級までのいずれかの等級が認定されます。

等級によって慰謝料額は変わるのですが、そもそも後遺症による精神的苦痛の程度は事故ごと、被害者ごとで違うため、各事案によって判断するのが難しく、膨大な時間がかかってしまいます。

そうなると、損害賠償金が被害者の方に支払われるまでに、かなりの時間がかかってしまうという問題が起きてきます。

そうした事態を避けるため、次の表のように概ねの相場金額があらかじめ設定されています。

<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の金額表>

たとえば、8級の場合、自賠責基準と弁護士(裁判)基準では、被害者の方が受け取る金額は約2.5倍も違ってきます。

慰謝料などの示談は、弁護士(裁判)基準で解決することが重要なことに納得いただけると思います。

(5)死亡慰謝料の相場金額について

①自賠責基準による死亡慰謝料の相場金額

自賠責保険では、死亡慰謝料は被害者本人の死亡慰謝料と、ご家族などの近親者慰謝料の合算として扱われることを覚えておいてください。

被害者本人の死亡慰謝料:400万円(一律)

近親者慰謝料:配偶者・父母(養父母も含む)・子(養子・認知した子・胎児も含む)の人数によって金額が変わる。
・1人の場合/550万円
・2人の場合/650万円
・3人の場合/750万円
※被扶養者の場合は上記の金額に200万円が上乗せされる。

 

②弁護士(裁判)基準による死亡慰謝料の相場金額

被害者の方の家庭での立場の違いなどによって、次のように相場金額が設定されています。

被害者が一家の支柱の場合 2800万円
被害者が母親・配偶者の場合 2500万円
被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合 2000万~2500万円
被害者が一家の支柱の場合
2800万円
被害者が母親・配偶者の場合
2500万円
被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合
2000万~2500万円

※ただし、事故の状況、加害者の悪質性などによって金額が変わる場合がある。

ここまで、会社員の方が交通事故の被害にあった場合の慰謝料や逸失利益、休業損害などの計算についてお話ししてきました。

正確で、かつ適切な金額を算出して加害者側の保険会社に示談交渉で認めさせることは難しい、と感じた方もいらっしゃるでしょう。

示談交渉がなかなか進まない、損害賠償金額で争いになっている、といった時は、ぜひ一度、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

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