過失割合10対0(100対0)とは?慰謝料はいくら・誰が決めるかを弁護士が解説

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交通事故の被害に遭った際、本来もらえるはずの慰謝料などの損害賠償金が、なぜか減らされてしまうことがあるのをご存じでしょうか?
これには「過失相殺(かしつそうさい)」という仕組みが大きく関わっています。過失相殺とは、被害者側にも不注意や落ち度(過失)があった場合、その割合に応じて賠償金額を差し引く(減額する)ことです。
しかし、もしあなたに一切の落ち度がない「過失割合10対0」(「100対0」とも表記されます)の事故であれば、賠償金を減らされることなく全額を受け取ることが可能です。
過失割合10対0(100対0)とは、加害者に事故の責任が100%あり、被害者には損害の発生・拡大について不注意その他の落ち度がない状態を指します。この場合、過失相殺による減額がないため、算定された損害賠償金を満額受け取ることが可能です。なお、この過失割合は警察が決めるものではなく、当事者同士(保険会社)の話し合いによって決定されます。
この記事では、以下の内容について分かりやすく解説していきます。
ある?
増額することはできる?
過失割合10対0(100対0)とは?
過失割合10対0とは、交通事故の責任が加害者に100%あり、被害者には落ち度がないと判断された状態のことです。「100対0」「10対ゼロ」「10:0」などと表記されることもありますが、いずれも同じ意味です。
順番にも意味があります。「0対10」と書かれている場合は、書き手から見た自分の過失が0という意味で使われていることが多いので、どちらの立場から見た数字なのかを必ず確認してください。
知っておきたい
過失相殺・過失割合の基礎知識
ここでは、過失相殺と過失割合の以下の項目について詳しく解説します。
過失相殺とは何でしょうか?
過失相殺とは、交通事故の発生、またその事故に関する損害の拡大について、被害者側にも過失がある場合、その割合に基づいて損害賠償額を差し引く = 減額することです。
つまり、事故の責任(落ち度)が被害者側にもある場合に、その割合に応じて「もらえる賠償金が減らされる仕組み」のことです。
過失割合は、被害者側と加害者側それぞれの過失、責任の割合のことになります。
たとえば、加害者側の過失割合が7の場合は、被害者側は3になります。加害者7対被害者3、というように表現されることが多いでしょう。
損害賠償金額:1,000万円
被害者側の過失割合:3割
の場合……
1,000万円 × (1 - 0.3)= 700万円
この例だと、損害賠償金が300万円も減額されてしまいます。
過失割合は誰が
決めているのでしょうか?
では、過失割合は誰が決めているのかというと、加害者側の任意保険会社が自分の見解に基づき主張してきます。
その見解は被害者の方の思いや考えとは相容れないため、示談交渉や民事裁判でしばしば争点になるのです。
警察には民事不介入のルールがあり、検察は加害者を起訴するかどうかを決めるので、交通事故の過失割合には関わりません。
ここで注意していただきたいのは、保険会社が主張してくる過失割合は正しいとは限らないということです。
保険会社は営利法人ですから利益を追求することが、その企業の大きな目的です。その目的のためには、収入を増やし、支出を減らす必要があります。
被害者の方へ支払う損害賠償金(示談金とも保険金ともいいます)は支出ですから、これをできるだけ抑えようとします。
被害者の方の過失割合を高くすれば、加害者の割合は低くなり、結果として自らの支出を削減することができます。
とてもシンプルにいうと、こういう理由があるのです。
そして、過失割合や慰謝料などの損害賠償金額は、最終的には被害者側と加害者側双方の合意によって決定されます。
(裁判まで進んだ場合は、裁判所の和解案に応じるか、最終的には裁判所の判決に従うことになります。)
とくに10対0を主張する場合は、この点が重要になります。加害者側の保険会社が「10対0」を認めれば10対0で確定しますが、認めなければ、被害者側が証拠を示して交渉するしかありません。つまり、事案によっては、10対0は「もらえるもの」ではなく「認めさせるもの」です。
実況見分調書と供述調書は
重要な証拠になります
交通事故の発生後、警察は実況見分(現場検証)を行ない、実況見分調書を作成します。
実況見分調書には、
- 見分の日時・場所・立会人名
- 現場道路や運転車両の状況
- 立会人の説明
- 最初に相手を発見した地点、ブレーキを
で踏んだ地点、衝突した地点など
といったことが書かれ、これに事故現場の見取図や写真などが添付されます。
また、加害者と被害者それぞれに聞き取り調査を行ない、供述調書を作成します。
実況見分調書と供述調書は、事件を再現するための客観的な事実と当事者の記憶を形にしたもので、刑事事件のもっとも重要な証拠の1つになります。
また、当事者の「どちらの言い分が正しいか」を決める判定基準になるため、過失割合の決定にも大きく影響します。
警察の聞き取り調査には素直に応じて協力し、正しい記憶に基いて、正しく説明することが大切です。
事実とは異なることが記載されてしまうと、被害者の方には不利な状況が生まれてしまいます。
後から内容を訂正することはできないので注意してください。
警察から「あなたは100%
悪くない」と言われたら?
ところで、警察の聞き取り調査の際、被害者の方が「あなたは100%悪くない」と言われることがあります。
ここで知っておいていただきたいのは、これは示談交渉や民事裁判での過失割合とはまったく関係がないこと。
警察は当然、刑事事件に関わりますが民事には介入しませんから、「あなたには刑事責任はありませんよ」と言っているわけです。
ですから、「警察から言われたのだから自分には過失も責任もない」とは思わないようにしてください。
過失割合はどのように
判断するのか?
過失割合には一定の基準があり、裁判所、弁護士、保険会社はすべて同じ基準により算定します。
なお、過去の裁判例から「基本となる過失割合」の目安は決まっていますが、実際の交通事故には全く同じものは1つもありません。
そのため、個別の事故状況(スピード超過や脇見運転の有無など)に応じて、被害者と加害者双方の基本過失割合に5〜20%程度の「修正(加算・減算)」を行って、最終的な過失割合を調整していきます。
過失割合が10対0になるのは
どんな事故か
被害者の方としては、「自分には過失はない」「一方的に被害にあった」と感じることもあると思いますが、多くの場合、交通事故は当事者双方に過失(責任)があるとされます。
交通ルールを守っていたとしてもです。しかし、中には被害者の方の過失が0、加害者が10と認められるケースもあります。
ここでは、自動車(四輪車)同士の事故で過失割合が「10:0」になりやすいケースを見ていきます。
追突事故
いわゆる「もらい事故」ともいわれるのが次のような追突事故の被害です。
- 信号待ちで停車中に、後方から
走行してきた自動車に追突された - 駐車場などに止めていたら、後ろから車に
追突された
自分が運転する自動車が少しでも動いている場合は過失を認められることが多いので、過失割合が0と判断されるのは停車中の場合です。
ところが、被害者の方に何の過失もないにも関わらず、加害者側(加害者が任意保険に加入している場合は、その保険会社)が、こんなことを主張してくる場合があります。
- 「突然、前方の自動車がブレーキを
踏んだから衝突してしまった…」 - 「追い越しをしようとしたら
妨害されたので衝突してしまった…」
突然のもらい事故ですから、事故当時のことは完全に覚えていなかったり、時間の経過とともに記憶は薄らいでいくものですから、「自分にも非があったかもしれない…」と思ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、それを認めてしまうと、当然ですが過失割合は10対0にはならないので注意してください。
なお、駐車場の駐車禁止の場所に停車していた場合の追突事故被害では過失を問われます。
対向車の車線はみ出し
対向車がセンターラインを越えてはみ出してきて衝突された場合、10対0と判断される場合が多くあります。
ただし、道路にセンターラインがある場合でも被害者の方の過失割合が0にならない場合があります。
なお、センターラインがない道路では、被害者も注意をするべきだったとされ10対0にならないことが多くなります。
信号無視
加害者の信号無視による交通事故の場合も、10対0になる場合が多いといえます。
なお、自動車同士の事故では次のような場合が被害者、加害者どちらかにある時には、その当事者側に過失割合が加わります。
- 大型車
- 速度超過
- 前方不注意
- 左右折禁止違反
- 早回り左右折
- 大回り左右折
- 直近左右折
- 徐行なし
- ウィンカーなし
- 著しい過失・重過失
なお、10対0になるかどうかは事故の類型ごとに判断が分かれます。右直事故・車線変更・一時停止無視など、類型別の詳しい過失割合は次の記事で解説しています。
自転車や歩行者が被害者となる事故でも、過失割合が10対0になるケースはあります。ただし判断の基準が自動車同士の場合とは異なるため、それぞれ次の記事で詳しく解説しています。
過失割合10対0を認めさせるために
被害者ができること
交通事故には1つとして同じものはなく、事故状況や被害者、加害者それぞれの属性や家庭での立場などすべて違ってきます。
ですから、ここまでお話ししてきた交通事故の状況と過失割合が絶対的に認められるわけではありません。
実際の損害賠償実務では、さまざまな「修正要素」が考慮されます。そのうえで10対0を認めさせるには、被害者側が客観的な証拠を示すことが欠かせません。
具体的には、次の3つが重要になります。
ドライブレコーダーの映像を
早急に保存する
事故状況を示しやすいのがドライブレコーダーの映像です。多くの機種は一定期間が過ぎると古い映像から上書きされてしまうため、事故のあとはできるだけ早く該当部分を別の媒体に保存してください。相手方や周囲の車両の映像が残っている場合もあります。
実況見分に立ち会い、
記憶どおりに説明する
実況見分調書は、後の示談交渉や裁判で過失割合を判断する重要な資料になります。あとから内容を訂正することはできないため、あいまいな記憶で答えたり、相手に合わせて話を作ったりしないでください。
「自分にも非があった」と
安易に認めない
被害者の方が加害者側に気を遣って「自分にも落ち度があったかもしれない」と口にしてしまうと、それが交渉のなかで不利に働くことがあります。事故直後の謝罪の言葉が過失を認めたものとして扱われることもあるため、事実だけを伝えるようにしてください。
また、これら以外にも交通事故の状況などによって過失がプラス、マイナスされるケースは、さまざまあります。
しかし被害者の方が、こうした状況をすべて把握し、知識を身に着けたうえで加害者側の過失を立証していくのは、現実的には困難だと言わざるを得ません。
ですから、示談交渉で過失割合が争点になった場合は、交通事故に強い弁護士に相談し、強力なサポートを依頼することも大切になってきます。
保険会社は被害者の味方ではありません。それを忘れないでいただきたいと思います。
過失割合10対0の場合の
慰謝料の計算方法
過失割合が10対0の場合、被害者の過失による減額(過失相殺)はありません。そのため、発生した損害の全額を加害者側に請求できます。
ここでは、実際に慰謝料をどのように計算するのか、その手順と計算式を具体的に見ていきましょう。
そもそも「慰謝料」は
損害賠償金の一部
まず前提として、被害者の方が受け取れる「損害賠償金」の全体像を押さえておきましょう。損害賠償金は慰謝料だけではなく、次のような項目の合計です。
- 治療費、入院費
- 通院交通費
- 休業損害
(ケガで仕事を休んだことによる収入減) - 入通院慰謝料
(ケガによる精神的苦痛への補償) - 後遺障害慰謝料
(後遺障害が残った場合の
精神的苦痛への補償) - 逸失利益
(後遺障害・死亡により
将来得られたはずの収入)
このうち「慰謝料」にあたるのは、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料(死亡事故の場合は死亡慰謝料)です。ここからは、それぞれの計算方法を解説します。
①入通院慰謝料の計算方法
入通院慰謝料は、ケガの治療のために入院・通院した期間に応じて計算されます。弁護士(裁判)基準では、「赤い本(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)」の算定表をもとに金額が決まります。
入院・通院の期間が長いほど、また症状が重いほど金額は高くなります。むち打ち症などの他覚症状がないケガの場合は、金額がやや低く設定された別の表を使います。
入通院慰謝料の目安
(弁護士基準・通院のみの場合)
| 通院期間 | むち打ち等 | 骨折等の重傷 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 19万円 | 28万円 |
| 3ヶ月 | 53万円 | 73万円 |
| 6ヶ月 | 89万円 | 116万円 |
※金額は目安です。実際の金額は治療内容や通院頻度により変動します。
②後遺障害慰謝料の計算方法
治療を続けても症状が回復せず後遺障害が残った場合は、後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料は、相場としては、認定された等級によって金額が決まります。等級が重い(数字が小さい)ほど高額になります。
後遺障害慰謝料の目安(弁護士基準)
各等級ごとの詳しい金額や認定基準については「後遺障害等級の一覧表」で解説しています。
過失割合10対0なら「過失相殺」で
減額されない
ここが過失割合10対0のケースの最大のポイントです。①と②で計算した慰謝料に、治療費や休業損害などを加えた損害賠償金の総額から、過失相殺による減額が一切行われません。
損害賠償金の総額が1,000万円の場合
- 過失割合10対0(被害者の過失0%)→
1,000万円を満額受け取れる - 過失割合8対2(被害者の過失20%)→
1,000万円 ×(1-0.2)= 800万円
(200万円減額)
つまり、過失割合が10対0であること自体が、被害者にとって金額面で非常に大きな意味を持つのです。
注意:10対0でも
「弁護士基準」で計算される
とは限らない
過失割合が10対0でも、加害者側の保険会社が最初に提示してくる金額は、自賠責基準や任意保険基準で計算された低い金額であることが多いです。
また前述のとおり、ご自身の保険会社が示談交渉を代行することができません。そのため、被害者自身が加害者側のプロの保険会社と直接交渉しなければならないという高いハードルがあります。
弁護士に依頼すれば、これらの慰謝料をすべて弁護士基準で計算し、加害者側の保険会社に請求することができます。その結果、当初の提示額から慰謝料が増額されるケースが数多くあります。
被害者の過失割合が0の場合に
注意するべきこととは?
ここでは、被害者の過失割合が0の場合に注意すべきことを解説します。
過失割合0の場合では保険会社は
示談代行してくれない!?
自動車保険(任意保険)に加入すると、近年では多くの契約に「示談代行サービス」が付帯しています。
しかし被害者の方に過失がなく、賠償責任がない事故の場合は、この示談代行が使えません。
というのは、「弁護士法」という法律により、保険会社が被害者の立場で加害者側保険会社と交渉することが禁止されているためです。
つまり、過失のない被害者の場合、自身の保険会社による示談代行は利用できず、加害者側の保険会社と直接交渉を行なっていかなければいけないのです。
なお、双方が動いている自動車同士の交通事故では、被害者側に過失が認められることが多いので、その場合に過失割合0を主張し続けると、示談交渉に時間がかかる傾向があります。示談金をいつ受け取れるかについては、次の記事で解説しています。
よくある質問
Q. 過失割合10対0とは
どういう意味ですか?
A. 交通事故の民事責任が一方(加害者)に100%あり、もう一方(被害者)には一切の過失がない状態を指します。「完全無過失」とも呼ばれます。この場合、被害者の慰謝料から「過失相殺」による減額が行われないため、算定された損害額を満額請求できます。
Q. 「10対0」と「100対0」は違うものですか?
A. 同じ意味です。加害者の責任が100%、被害者の責任が0%であることを、10を基準に表すか100を基準に表すかの違いにすぎません。保険会社や書面によって表記が異なることがありますが、内容は変わりません。
Q. 停車中に追突された場合、
過失割合は10対0に
なりますか?
A. 原則として10:0(被害者完全無過失)になります。赤信号での停車中・渋滞中の停車中など、被害者に回避可能性がない状況での追突事故は、加害者の過失が100%と判断されるケースがほとんどです。ただし被害者側にハザードランプの不点灯など特別な事情がある場合は修正が加わることがあります。
Q. センターラインオーバーの
事故は過失割合10対0に
なりますか?
A. センターライン(中央線)を大きく越えて逆走してきた車両との正面衝突では、多くの場合10:0(逆走車が100%)と判断されます。被害者側が回避行動をとることが困難であるため、過失が認められないケースが多いです。ただし被害者にスピード超過などがあると修正が加わる場合もあります。
Q. 過失割合10対0の事故で
自分の保険会社が示談代行
できないのはなぜですか?
A. 被害者に過失がない場合、自分の保険会社は示談交渉を代行できません。弁護士法第72条(非弁行為の禁止)により、被害者の代理人として加害者側と示談交渉することが禁止されているためです。そのため被害者自身が交渉するか、弁護士に依頼する必要があります。弁護士費用特約があれば被害者本人の費用負担なしで依頼できることがあります。
Q. 過失割合10対0の場合の
慰謝料はいくらですか?
A. 過失相殺がないため算定された慰謝料を満額受け取れます。例えば3か月通院(むち打ち)の場合、弁護士基準では約53万円、自賠責基準では約28万円が目安です。過失割合が30%ある場合と比べると、弁護士基準で約16万円の差が生じます。後遺障害が残る場合はさらに大きな差になるため、弁護士への相談が重要です。
Q. 相手が「10対0ではない」
と主張してきた場合は
どうすればよいですか?
A. まずドライブレコーダー映像・実況見分調書・目撃者の証言など客観的な証拠を収集・保全してください。相手の保険会社が提示する過失割合に納得できない場合は、弁護士に依頼して交渉・ADR(裁判外紛争解決手続)・訴訟といった手段で争うことができます。特にドライブレコーダーの映像は上書きされる前に早急に保存することが重要です。
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代表社員 弁護士 谷原誠




























