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交通事故で示談に応じないとどうなるのか?

最終更新日 2024年 02月18日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠


交通事故の示談交渉で被害者の方が示談に応じないと、どうなるのか? について解説します。

通常、加害者が任意保険に加入している場合、その保険会社と示談交渉を行ない、慰謝料や逸失利益、将来介護費などさまざまある損害項目の金額を話し合によって、決めていきます。

ところが、この示談交渉、なかなかすんなりとは進まない、成立しないことが多いのです。
なぜかというと、加害者側の任意保険会社が提示してくる示談金は、本来であれば被害者の方が受け取るべき金額よりもかなり低いことが多いからです。

2分の1,3分の1ならまだいいほうで、中には10分の1やそれ以下というケースもあります。
(その理由については、のちほど詳しくお話します)

そのため、納得がいかない被害者の方やご遺族が示談を成立させない、あるいはできないのは当然のことなのです。

しかし、ここで知っておいていただきたいのは、示談がいつまでも成立しないと被害者の方には不利な状況=リスクが生まれることです。

本記事では、被害者の方が示談に応じない場合、慰謝料などの損害賠償金はどうなってしまうのか? 消滅時効とは? そもそも示談とはどういったものなのか? などについて詳しくお話ししていきます。

交通事故の示談で知っておくべき5つの重要ポイント

知っておくべき5つの重要ポイント

交通事故の示談とは?

☑示談とは、交通事故の損害賠償問題を民事上の裁判ではなく、被害者の方と加害者の間で話し合いによって解決することです。

☑示談交渉とは、次のことを話し合いによって解決するプロセスです。
・その交通事故によって、どのような損害が発生したか。
・損害額は、いくらになるのか。
・損害賠償金の支払い方法は、どのようにするのか。

チャートで知る!事故発生から示談成立までの手続きと流れ

交通事故が発生してから示談が成立(解決)するまでのプロセスをチャートにしてみました。

今後、加害者側と示談交渉を行なっていくうえで、全体の流れを知っておくことは非常に重要になってきます。

示談交渉で後遺障害等級が重要な理由

☑ケガの治療を続けたものの、これ以上の改善は見込めない、完治は難しいという段階にくると、医師から「症状固定」の診断を受けます。

☑症状固定後は残念ながら後遺症が残ってしまうので、被害者の方はご自身の後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

☑示談交渉で重要なもののひとつが、被害者の方の「後遺障害等級」です。
後遺障害等級は全部で14等級あり、後遺障害がもっとも重度の場合は1級になります。

☑被害者の方の後遺障害等級が決まることで、加害者側の任意保険会社は慰謝料などの損害賠償金の算定ができるようになります。
つまり、後遺障害等級が決まらないことには示談交渉は始められないのです。

☑被害者の方の中には、すぐに示談交渉を行なおうとする方がいますが、焦らなくて大丈夫です。
ご自身の後遺障害等級が認定され、損害賠償金額が提示されてから示談交渉を始めるようにしてください。

参考情報:「自賠責後遺障害等級表」(国土交通省)

詳しい解説はこちら

交通事故の後遺障害等級表

慰謝料は損害賠償項目のひとつ

☑交通事故の被害者の方が受け取ることができる損害賠償金には治療費や交通費、休業損害、慰謝料、逸失利益、将来介護費など、さまざまな項目が含まれます。

☑ところで、交通事故の損害賠償実務では、さまざまな用語が出てきますが、損害賠償金と示談金、そして保険金の違いをご存知でしょうか?

「損害賠償金」
被害者側の立場から見た場合、加害者から被った損害について金銭的に賠償してもらうもの。

「保険金」
加害者側の任意保険会社の立場から見た場合、保険契約に基づいて被害者に支払うもの。

「示談金」
被害者側と加害者側(保険会社)の示談によって賠償金額が合意されて、加害者側(保険会社)から被害者側に支払われるもの。

つまり、これら3つは被害者側と加害者側の視点や立場の違いによって呼び方が変わるだけで、同じものということになります。

示談が成立したら、もう後戻りはできない

一度、加害者側と示談を成立させると、その後に内容を取り消すことや示談のやり直しなどは原則としてできません

あとから後遺症が現れたり、後遺症の状態が悪化して後遺障害が重くなったような場合、あるいは請求し忘れた項目があった場合などでも示談内容は変更できないのです。

この点、被害者の方はあせらず、慎重に示談を行なうことが大切です。

わかりやすい動画解説はこちら

示談交渉の現実と注意するべきポイント解説

示談交渉の現実と注意するべきポイントとは

示談成立までにはどのくらいの期間がかかる?

示談交渉を開始してから、示談が成立するまでどのくらいの時間がかかるのか、概ねの期間についてまとめてみました。

<示談成立までの期間>

物損事故 交通事故発生日から2~3か月
後遺障害のない人身事故 治療終了(症状固定)から半年程度
後遺障害がある人身事故 後遺障害等級の認定から半年~1年程度
死亡事故 葬儀・相続確定後から半年~1年後

これらの期間を超えているのであれば、示談成立に時間がかかっているといえるでしょう。

交通事故の示談交渉はもめてしまう!?

率直に申し上げて、交通事故の示談交渉というのは、もめることが多いのが現実です。
なぜかというと、次のような理由があります。

1.保険会社が示談金の支払い(計算)基準の限界を主張してくる
じつは慰謝料などの計算では、次の3つの基準が使われます。

・自賠責基準⇒金額がもっとも低くなる
・任意保険基準⇒自賠責基準より少し金額が高くなる
・弁護士(裁判)基準⇒もっとも金額が高くなる⇒被害者の方が受け取るべき金額

加害者側の任意保険会社は、自賠責基準か任意保険基準で計算した金額を提示して、「これが適正金額です」「当社の支払限度ギリギリです」と言ってくる場合があります。

しかし本来、被害者の方が受け取るべきなのは、弁護士(裁判)基準で計算した金額であることを忘れないでください。

わかりやすい動画解説はこちら

2.保険会社が被害者の過失割合を高く主張してくる
過失割合とは、その交通事故が発生した責任(過失)の割合のことで、たとえば「加害者70対被害者30」といったように表現されます。

被害者の方の過失割合が大きくなれば、それだけ減額されてしまい、受け取る損害賠償金が減らされてしまうのです。

3.保険会社が被害者の逸失利益を低く主張してくる
交通事故による後遺障害によって、以前のように働くことができなくなったために、将来的に得られなくなった収入(利益)を逸失利益といいます。

保険会社は、被害者の方の逸失利益を低く見積もってくることがあるので注意が必要です。

4.保険会社の態度・対応が悪い
心ない言葉を言われるなど、加害者側の任意保険会社の担当者の態度や対応が悪いことで、被害者の方が二次被害的な精神的苦痛を受けるケースが報告されています。
そのために被害者の方が交渉を拒絶してしまい、示談が進まないということがあります。

5.保険会社の提示額が低すぎる
上記1から5のケースすべてが当てはまるのですが、
保険会社は基本的に慰謝料などの損害賠償金(示談金)を低く提示してきます。

保険会社は営利法人のため、利益を上げることが経営の目的です。
被害者の方に支払う示談金は会社にとっては支出ですから、これを低く見積もってくるわけです。

ですから、被害者の方が示談に応じないのは、正しい選択だともいえるのです。

示談に応じない場合のデメリット、消滅時効に要注意

デメリットは消滅時効に要注意
では、被害者の方が示談に応じないと、どのようなデメリットが発生するのでしょうか。

まず、示談が成立しないのですから、いつまでたっても被害者の方が加害者側から慰謝料などの示談金を受けとることができなくなってしまいます

そして、もっとも注意していただきたいのが、「消滅時効」です。

消滅時効とは?

一定の時間が経過したために、あることの権利が消滅することを消滅時効といいます。

交通事故の被害者の方は、慰謝料などの損害賠償金を受け取る権利(損害賠償請求権)があるわけですが、消滅時効が成立して、加害者がその制度を利用して(援用といいます)しまうと、損害賠償金の一切を受け取ることができなくなってしまいます。

これは法的には、権利があるのに行使せずに放置する人まで保護する必要はない、と考えられているからです。

被害者の方が示談に応じないでいると、消滅時効が成立してしまうというリスクがあることに注意してください。

損害賠償請求権の時効の期間について

損害賠償請求権の時効の期間は、2020年の民法改正により、2020年4月1日以降に発生した事故の場合は次のようになっています。

<損害賠償請求権の消滅時効>

・物損事故の損害:事故発生日の翌日から3年
・人身事故の損害(後遺障害なしの傷害(ケガ)の場合):事故発生日の翌日から5年
・人身事故の損害(後遺障害がある場合):症状固定日の翌日から5年
・死亡事故の損害:死亡した時の翌日から5年
・加害者が不明の事故による損害:事故発生日の翌日から20年
・その後に加害者が判明した場合:物損事故は判明した時の翌日から3年
                人身事故は判明した時の翌日から5年

※事故発生日に加害者および損害が判明しない場合は、加害者および損害を知った時の翌日を起算日とします。
※起算日が民法改正以前の事故で,2020年4月1日時点で時効が完成していないものについては、改正民法の時効が適用されます。
※なお、あとで加害者が判明した場合、「加害者を知った時の翌日から5年」と「事故発生日の翌日から20年」のどちらか早いほうが時効期間になります。

自賠責保険への被害者請求にも期限があります!

自賠責保険の特徴ついて

・自動車やバイクなど、すべての車両に加入が義務づけられているのが自賠責保険です。
・自賠責保険は、被害者の方の救済を目的として、加害者側との示談なしに最低限の補償を受け取るために設立されています。
・そのため、自損事故や物損事故には適用されません。
・自賠責保険には支払限度額が設定されています。
<自賠責保険から支払われる保険金(損害賠償金)の限度額>
・傷害(ケガ)部分/120万円
※120万円を超える金額については、加害者側の任意保険会社に請求していくことになります。

・後遺障害部分/・介護が必要な場合(自賠責法別表第1)は4,000万~3,000万円
・その他の後遺障害の場合(自賠責法別表第2)は、1級から14級の後遺障害等級に応じて3,000万円~75万円です。

なお、被害者の方が重傷の場合、自賠責保険金だけでは被害者の方への補償をすべてまかなえないケースがあります。
そうした事態に備えて運転者が加入するのが任意保険になります。

自賠責保険への被害者請求の時効期間

自賠責保険に保険金を請求するには、被害者請求と事前認定の2つの方法があります。

「被害者請求」
被害者ご自身が、加害者が加入している自賠責保険に損害賠償金を請求する方法。

「事前認定」
加害者が加入している任意保険会社を通して損害賠償金を請求する方法。

このうち、被害者請求への時効の期間は次のようになっています。

<自賠責保険への被害者請求権の消滅時効>

・後遺障害なしの傷害(ケガ)の場合:事故発生日の翌日から3年
・後遺傷害がある場合:症状固定日の翌日から3年
・死亡事故の場合:死亡事故発生日の翌日から3年

加害者側への損害賠償請求よりも、基本的に時効期間が短いことに注意が必要です。

時効を完成(成立)させないための方法を解説

時効を完成(成立)させないために

時効の援用の意思表示とは?

☑時効が成立するには、加害者側から被害者の方に対して「時効援用の意思表示」が必要になります。

☑時効の期間がきても、加害者側から時効援用(利用)の意思表示がなければ消滅時効によって損害賠償請求権がなくなることはありません。

☑しかし、加害者側が内容証明郵便を被害者の方に送り、これが届いた時点時効が成立してしまうことになります。

時効を完成させないための方法とは?

では、被害者の方が時効を完成させないためにはどうすればいいのかというと、次のような方法があります。

1.加害者に内容証明郵便を送付する
時効の完成を猶予(ゆうよ)させるために、加害者側に「催告」をする方法があります
催告とは、被害者から加害者や保険会社に賠償金を支払うように求めることで、通常は内容証明郵便を送付して行ないます。

被害者の方が加害者側に対して催告することで、時効の完成が6か月間のみ猶予されます。
ただし、時効の完成の猶予は1回しか認められないことに注意が必要です。

2.協議する旨の合意をする
被害者の方が、書面または電磁的記録(メールなど)によって、「損害賠償に関して協議を行なう旨の合意」を加害者との間で取り交わした場合は、次のいずれか早い時までの間、時効は完成しません。

  • ・その合意があった時から1年(通算で最長5年まで延長が可能)
  • ・その合意において当事者が協議を行なう期間を定めた時は、その期間(1年未満)
  • ・相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知がされた場合は、通知の時から6か月を経過した時

 
3.加害者側に債務を承認する書面(同意書)を書かせる
加害者や加害者側の任意保険会社が、損害賠償責任や保険金支払債務の存在を承認すれば、時効が更新されることになります。

ですから、時効が完成してしまう前に、保険会社から「債務を承認する書面(同意書)」をもらっておくのを忘れないようにしてください。

4.加害者側に損害賠償金の一部を支払わせる
1の内容証明郵便の送付後、損害賠償金の一部を加害者側に支払わせることで、「債務の承認」となる場合があります。

5.裁判を起す
訴訟を提起して裁判を起すことでも時効の完成が猶予されます。

裁判で損害賠償請求権が確定すると、その手続き終了時に時効が更新され、それまでの期間がリセットされます。
この場合、時効が更新された時点から新たに10年間の時効期間が始まることになります。

なお、被害者ご自身が契約している保険会社に対する時効と、加害者側の保険会社に対する時効は別のものなので注意してください。

示談交渉の消滅時効でお困りの方は弁護士に相談してください!


今回の記事では、被害者の方が示談交渉に応じないことによるリスク=消滅時効について解説しました。

しかし、そもそも、加害者側の任意保険会社との示談交渉を行ない、損害賠償金額に納得がいって、時効の前に示談が成立すれば消滅時効を心配する必要はありません。

被害者の方が納得のいく示談を成立させるためには、交通事故に強い弁護士が心強いパートナーになることができます。

交通事故の解決を弁護士に依頼すると、被害者の方には次のようなメリットがあります。

・加害者側の任意保険会社の担当者と顔を合わせたり、直接、示談交渉をしないで済む
・最終的には慰謝料などの損害賠償金(示談金)を増額することができる。

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