脳脊髄液減少症とは?交通事故との関係と損害賠償金の相場
脳脊髄液減少症は、交通事故を契機に発症することがある、見逃されやすい疾患です。
適切な診断や後遺障害の認定が行われなければ、交通事故が原因で発症したとしても、適正な損害賠償請求ができなくなる恐れがあります。
本記事では、脳脊髄液減少症の特徴と認定される後遺障害の等級、損害賠償金の相場までを体系的に解説します。
目次
脳脊髄液減少症とは?
交通事故との関係
脳脊髄液減少症は、交通事故以外が原因で発症することもあるため、症状と事故との因果関係を適切に把握することが求められます。
脳脊髄液減少症が起きる原因と
主な症状
脳脊髄液減少症とは、脳や脊髄を保護する髄液が何らかの原因で漏れ出すことで、脳脊髄液が減少し、頭蓋内圧が低下することによって生じる疾患です。
脳脊髄液は、脳と脊髄を浮かせて保護する役割を持つため、漏出すると神経系に広範な影響を及ぼします。
症状としては、頭痛、めまい、倦怠感、視力低下などがあり、外見からは判断しにくいのが特徴です。
発症原因には、交通事故やスポーツなどの外傷によるもののほか、原因を特定できないケースもあります。
交通事故が誘因となる
メカニズム
脳脊髄液減少症は、髄液が漏れることで発症するため、追突事故など、頭部や頚部に強い衝撃が加わる交通事故ほど、発症リスクが高いとされています。
初期症状には、頭痛、吐き気、めまいなど、むち打ち症と類似する点が多いため、誤認されることもあります。
そのため、むち打ち症に似た症状が現れたとしても、事故後に症状が長引く場合は脳脊髄液減少症の可能性を疑う必要があります。
脳脊髄液減少症の見逃されがちな
「初期サイン」
脳脊髄液減少症は、他の疾患との判別が難しく、早期発見が困難なケースもあるため、初期サインを見逃さないことが重要です。
頭痛・めまいだけではない
症状の多様性
脳脊髄液減少症の代表的な症状としては、起立性頭痛があります。
起立性頭痛とは、立ち上がる際に強い頭痛が生じ、横になると症状が改善する頭痛です。
頭痛以外にも、めまい、耳鳴り、吐き気、視覚障害、集中力の低下、感覚過敏など、現れる症状は多様です。
そのため、事故後一定期間が経過しても症状が治まらない場合は、脳脊髄液減少症の可能性も含めて、専門的な診察や治療を検討する必要があります。
医療機関で検査する方法
脳脊髄液減少症は、現在も医学的な解明が進められている段階にある傷病です。
厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業の資料(※)によれば、脳脊髄液の量を臨床的に直接計測する手段は、現時点では確立されておらず、脳脊髄液の減少という病態は、あくまで推論に基づくものとされています。
画像診断においては、「低髄液圧」「脳脊髄液漏出」「RI(ラジオアイソトープ)循環不全」などを確認できる範囲に留まります。
一方で、硬膜肥厚に代表される頭部MRIの所見は、「低髄液圧」の間接的な画像所見とされており、「脳脊髄液漏出症」と「低髄液圧症」は密接な関連性を有しています。
そのため、「低髄液圧症」の診断は、「脳脊髄液漏出症」の補助的な診断手法として有用であるとされています。
出典:平成22年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班
交通事故後の経過観察の重要性
交通事故直後の症状が軽微であっても、数日から数週間後に脳脊髄液減少症特有の症状が現れることがあります。
そのため、事故後一定期間は経過観察を行い、初期症状に変化が見られる場合には、再診や専門医への診療を検討すべきです。
また、事故後の経過記録は、損害賠償請求や後遺障害等級認定においても不可欠です。
脳脊髄液減少症が交通事故によって発症したと客観的に判断されなかった場合、後遺障害として認定されません。
後遺障害の認定の有無は、慰謝料や損害賠償金の額に大きく影響するため、事故との因果関係を証明することは非常に重要です。
脳脊髄液減少症の治療方法
脳脊髄液減少症は、時間の経過とともに自然治癒することもありますが、一定期間が経過しても症状が改善しない場合には、積極的な治療が必要になります。
治療法としては、「ブラッドパッチ」が有効とされています。
ブラッドパッチは、髄液が漏れている付近に自身の血液を注入し、漏出の原因となった穴を塞ぐ治療法です。
血液を注入した直後から数日間で症状が改善するケースもありますが、効果が得られない場合もあるため、継続的な治療と経過観察が必要です。
脳脊髄液減少症は後遺障害として
認定されるのか?判断のポイント
脳脊髄液減少症が交通事故による後遺障害として認定されるには、医学的・法的な根拠の提示が不可欠です。
後遺障害の意味と認定の重要性
後遺障害とは、交通事故によって負った傷病が治癒した後も、身体や精神に症状が残り、労働能力や日常生活に支障をきたす障害を指します。
治療後に症状が残る「後遺症」とは違い、後遺障害として認定されるには所定の申請手続きが必要です。
後遺障害には、症状の程度に応じた等級が定められており、認定された等級によって請求可能な慰謝料額が変動します。
たとえば、交通事故で同様の後遺症を負った場合でも、適切な手続きを経ていなければ、後遺障害としての慰謝料を請求することはできません。
また、認定された等級が低い場合には、請求できる慰謝料も減額されるため、後遺障害等級の申請手続きは極めて重要です。
脳脊髄液減少症は
後遺障害として認定される
可能性がある
後遺障害認定は、症状の持続性や医学的所見の明確さ、事故との因果関係などを勘案して判断されます。
交通事故後に脳脊髄液減少症を発症したとしても、交通事故が原因であると判断されなければ、後遺障害としては認められません。
脳脊髄液減少症は、症状が多岐にわたるため原因の特定が難しく、一般的な検査では診断に至らない場合もあります。
後遺障害の認定は容易ではありませんが、MRIやRI検査による漏出所見が確認できた場合において、神経系の後遺障害として認定された事例も存在します。
そのため、脳脊髄液減少症の疑いがあるときは、専門医に相談し、必要な検査を受けることが大切です。
後遺障害の認定を受けるための
ポイント
後遺障害等級の認定申請は、治療を継続しても症状の改善が見込めない「症状固定」と判断された段階で行うことになります。
症状固定とは、怪我や疾病の治療を続けても回復の見込みがなく、症状が安定した状態をいい、その判断は主治医が行います。
事故後に継続的な治療を受けていない場合、医師が症状固定と判断することが困難となるため、症状の程度にかかわらず、通院を継続することが重要です。
認定申請の際に必要となる資料
後遺障害等級の認定申請には、医師が作成する後遺障害診断書に加え、交通事故証明書や検査所見などの客観的資料が必要となります。
医師が交通事故と脳脊髄液減少症との因果関係を証明する必要があるため、他の疾患との鑑別が適切に行われていることも、審査の重要な要素です。
医学的根拠が乏しい場合には、申請が認められないだけでなく、認定される等級が低くなる恐れもあるため、必要書類を漏れなく揃えることが求められます。
交通事故による脳脊髄液減少症の
損害賠償額の相場
脳脊髄液減少症が交通事故の後遺障害として認定された場合の損害賠償額は、認定等級や症状の重度、生活への影響などによって大きく変動します。
損害賠償の内訳
交通事故の被害者となった場合、治療費や通院交通費に加え、精神的苦痛に対する慰謝料、就労制限による逸失利益などが加算されます。
脳脊髄液減少症が後遺障害として認定された際には、治療にかかった費用だけでなく、将来的な損害も含めた請求が可能です。
ただし、後遺障害と認められない場合には、後遺障害に対する慰謝料は請求できなくなるため、後遺障害として認定の有無によって損害賠償額は大きく変動します。
脳脊髄液減少症の後遺障害等級
後遺障害認定における等級は、1級から14級まで存在します。
交通事故が原因で脳脊髄液減少症となった場合、次の後遺障害等級として認定される可能性があります。
等級 | 症状 |
---|---|
9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
たとえば、9級に認定された場合、後遺障害慰謝料として約690万円が認められる可能性があります。
一方、12級では約290万円、14級では約110万円が目安とされており、認定される等級は損害賠償額に直結します。
後遺障害慰謝料を算定する際の
基準
後遺障害慰謝料には、以下の3種類の算定基準が存在し、どの基準を用いるかによって受け取れる慰謝料の額は大きく異なります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
算定される慰謝料の額は、自賠責保険基準が最も低く、弁護士基準が最も高額となります。
任意保険基準は、保険会社が独自に設定する基準であり、加害者側の保険会社と示談交渉を行う際には、この基準に基づいた慰謝料が提示されます。
自賠責保険基準による算定では、十分な慰謝料が得られないことが多いため、弁護士基準による請求が望ましいとされています。
ただし、弁護士基準による算定には専門的な知識が必須となるため、後遺障害慰謝料を弁護士基準で請求する場合は、弁護士への依頼を検討することが重要です。
後遺障害認定をスムーズに
進めるには?
専門医・弁護士の活用法
脳脊髄液減少症が交通事故による後遺障害として認定されるためには、医師および弁護士による専門的な支援が不可欠です。
専門医による診断と証拠化の
ポイント
脳脊髄液減少症を後遺障害として認定されるには、診断書に加え、漏出箇所の画像、症状の持続性、事故後の経過を詳細に記録した資料などが必要です。
骨折などと異なり、脳脊髄液減少症は一般的な画像検査では診断が困難な場合があります。
そのため、脳脊髄液の漏れを確認するには、RI脳槽シンチグラフィーなどの特殊な画像検査を実施できる専門医による診断が求められます。
後遺障害認定に強い
弁護士の選び方
脳脊髄液減少症は、事故との因果関係の立証が難しいため、交通事故および後遺障害認定に関する実績が豊富な弁護士を選任することが望まれます。
示談交渉や裁判においては、医学的証拠の整理や申請書類の構成に加え、保険会社との交渉力、過去判例の活用経験などが、認定の可否や損害賠償額に大きく影響します。
医学的知見に理解のある弁護士は、医師との連携や証拠の整備においても高い効果を発揮するため、適正な賠償を得るには弁護士の選定が極めて重要です。
交通事故後の後遺障害申請は
弁護士に相談を
交通事故により脳脊髄液減少症を発症した場合、後遺障害慰謝料を請求することが可能ですが、症状の立証や後遺障害認定には高度な専門知識を要します。
保険会社との示談交渉において不利な状況を避けるためには、交通事故に精通した弁護士の支援が不可欠です。
被害者自身が事故対応を行うことは、心身に大きな負担を伴うため、適正な賠償を得るには、早期に弁護士へ相談・依頼することが望まれます。
交通事故による脳脊髄液減少症でお困りの場合は、まずは一度、みらい総合法律事務所の無料相談をご利用ください。
↓↓
弁護士へのご相談の流れ
↑↑
代表社員 弁護士 谷原誠