交通事故で外傷性脳損傷…後遺障害等級の認定と慰謝料

交通事故の被害では、頭部に大きなダメージを受けるケースがあります。

外部からの強い衝撃により脳の組織を損傷してしまうことを外傷性脳損傷といい、被害者には損傷を受けた部位により、さまざまな後遺症が残ってしまう可能性があります。

後遺症が残ってしまうと、その後の人生に大きな支障をきたすことになるので、被害者とそのご家族は、加害者に対する損害賠償請求での示談交渉などを慎重に進めていかなければなりません。

頭部の損傷は3つに分類される

頭部への損傷は、大きく3つに分類されます。

頭蓋骨骨折

頭蓋骨骨折は、頭蓋円蓋部骨折と頭蓋底骨折の2つに分けられ、頭蓋円蓋部骨折はさらに、線状骨折、陥没骨折、粉砕骨折の3つに分けられます。

頭蓋骨骨折では、脳髄液の漏洩や脳浮腫、頭蓋内血腫、硬膜外血腫、また合併症として髄膜炎などを発症する場合もあります。

局所性脳損傷

局所性脳損傷は、特定の部位に外力が作用することで起きる脳損傷です。

「脳挫傷」、「急性硬膜外血腫」、「急性硬膜下血腫」、「脳内血腫」の4つの病態に分類されます。

損傷した部位と頭蓋骨内部の圧力上昇の関係によって、特有な神経症状が現れます。

びまん性軸索損傷

脳全体に強い外力が加わると、脳全体が激しく動きます。

そうした衝撃により、脳の表面部分には損傷が認められなくても、脳の深い部分で損傷が起こります。

大脳の白質、右脳と左脳をつないでいる脳梁、脳の中心部である脳幹部などには細胞から伸びる無数の神経線維(軸索)が集まり、束になっています。

これらの軸索部分が広範囲にわたって伸びたり、断裂してしまうことを、びまん性脳損傷(びまん性軸索損傷)といいます。

詳しい解説はこちら⇒
交通事故でのびまん性軸索損傷による後遺障害と慰謝料の解説

外傷性脳損傷で現れる症状や後遺症について

次に、外傷性脳損傷である「脳挫傷」、「急性硬膜外血腫」、「急性硬膜下血腫」、「外傷性くも膜下出血」等について、それぞれの症状などについて見ていきます。

脳挫傷

脳に局所的な外力が加わることで、外傷を受けた側の脳だけでなく、その反対側の脳も損傷を受ける場合があります。

脳自体の挫滅や出血、浮腫(はれ)などが発生します。

これが、脳挫傷と言われるものです。

急性硬膜外血腫

頭蓋骨の下(内側)にあり脳を覆っている硬膜と頭蓋骨の間に血腫が溜まってしまう状態を急性硬膜外血腫といいます。

急性硬膜下血腫

急性硬膜下血腫は、頭蓋骨の下にあり脳を覆っている硬膜と脳の間に血腫が溜まってしまう状態です。

外傷性くも膜下出血

外傷性くも膜下出血とは、硬膜の下にある、蜘蛛の巣状のくも膜と脳の間で出血が起きた状態です。

これらの傷害では、頭痛、めまい、嘔吐、意識障害、運動知覚麻痺、痙攣発作、言語障害、記憶障害、視野の欠損など、さまざまな症状が発生し、重症の場合は昏睡状態に陥って、死に至ることもあります。

脳の損傷個所の細胞は再生することはないので、根本的な治療がないのが現状です。

そのため、さまざまな後遺症が残ってしまう可能性があるのです。

後遺症が残った場合、被害者はリハビリテーションなどで脳の機能回復を目指していくことになりますが、重傷の場合は「遷延性意識障害」や「高次脳機能障害」などの重い後遺症を背負ってしまうことになり、将来にわたって介護が必要になる可能性もあります。

詳しい解説はこちら⇒
交通事故の遷延性意識障害で慰謝料を請求する時の注意

交通事故で高次脳機能障害になった時の後遺障害等級と示談方法

外傷性脳損傷による後遺障害等級を解説

外傷性脳損傷により治療を受けた場合、担当医師から「残念ながら、これ以上の治療を続けても回復の見込みはありません」というような診断をされる場合があります。

これを「症状固定」といいます。

症状固定時には後遺症が残ることになりますので、被害者としてはご自身の自賠責後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

申請方法には「事前認定(加害者請求)」と「被害者請求」の2種類があります。

詳しい解説はこちら⇒
交通事故における自賠責保険の被害者請求とは?

自賠責保険金の請求手続きを解説(後遺障害編)

この後に始まる加害者側との示談交渉では、後遺障害等級によって慰謝料などの損害賠償金額が数百万円から数千万円単位で変わってきますので、この等級はとても重要なものです。

後遺障害等級は、もっとも重い1級から順に14級までが設定されています。

詳しい解説はこちら⇒
自賠責後遺障害認定等級とはどのようなものですか?

外傷性脳損傷により認定される後遺障害等級には次のものがあります。

後遺障害等級1級1号(別表第1)

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
・自賠責保険金額:4000万円 
・労働能力喪失率:100%

後遺障害等級2級1号(別表第1)

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
・自賠責保険金額:3000万円 
・労働能力喪失率:100%

後遺障害等級3級3号(別表第2)

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
・自賠責保険金額:2219万円 
・労働能力喪失率:100%

後遺障害等級5級2号(別表第2)

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
・自賠責保険金額:1574万円 
・労働能力喪失率:79%

後遺障害等級7級4号(別表第2)

・神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
・自賠責保険金額:1051万円 
・労働能力喪失率:56%

後遺障害等級9級10号(別表第2)」

・神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
・自賠責保険金額:616万円 
・労働能力喪失率:35%

後遺障害等級12級13号(別表第2)

・局部に頑固な神経症状を残すもの
・自賠責保険金額:224万円 
・労働能力喪失率:14%

後遺障害等級14級9号(別表第2)

・局部に神経傷害を残すもの
・自賠責保険金額:75万円 
・労働能力喪失率:5%

各後遺障害等級の詳しい解説はこちら⇒
後遺障害等級1級の認定基準・慰謝料の増額ポイントを解説

後遺障害等級2級の認定基準・慰謝料の増額ポイントを解説

後遺障害等級3級の障害と慰謝料とは?

後遺障害等級5級は等級が誤りの可能性があります!

後遺障害等級7級が妥当かどうかは専門的な知識が必要

後遺障害等級9級の障害の内容とは?

後遺障害等級12級とは、どのような障害か?

後遺障害等級14級とは、どのような障害か?

外傷性脳損傷で争いが起きやすい損害賠償項目とは?

外傷性脳損傷により後遺症が残った場合、加害者側の任意保険会社に請求できる損害賠償項目には次のものなどがあります。

「治療費」
「入院付添費」
「入院雑費」
「傷害慰謝料」
「後遺症慰謝料」
「逸失利益」
「将来介護費」
「将来雑費」
「装具・器具等購入費」
「損害賠償請求関係費」(診断書費用、成年後見開始の審判手続き費用など)

このうち、将来介護費について説明をしたいと思います。

交通事故による頭部外傷で、重度の後遺障害が残った場合、他人の介護を受けなければ生命を維持できなくなってしまうため、被害者は将来介護費を請求することができます。

将来介護費の算出は次の計算式で行ないます。

「将来介護費 = 年間の基準額 × 生存可能期間に対するライプニッツ係数」

年間の基準額とは?

・職業介護人に介護を依頼した場合は実費全額、近親者が介護を行なう場合には1日につき8000円が目安。

・被害者の症状や具体的な看護の状況によって金額は増減する。

・複数の介護人が必要な場合などでは、基準よりも高額な介護費が認められるケースもある。

・具体的にどのような介護を行なっているのか、また今後どのような介護が必要になるのかなどを証明して費用を算出する。

後遺障害等級が重度の場合、相対的に金額も大きくなりますが、中でも逸失利益や将来介護費は金額が大きいものであることから、加害者側の保険会社との間でしばしば争いになることがあります。

保険会社としては、できるだけ保険金額を押さえることができれば、自社の利益が上がるのですから法人の立場としては当然、示談金額を低く提示してきます。

そのため、被害者と加害者の間で争いになることが多いのです。

3つの慰謝料と3つの支払い基準

交通事故における慰謝料には、「傷害慰謝料」、「後遺障害慰謝料」、「死亡慰謝料」の3つがあります。

外傷性脳損傷で死亡に至らない場合は、被害者は傷害慰謝料と後遺障害慰謝料を請求することができます。

なお、慰謝料には3つの基準があります。

自賠責基準とは?

・自賠責保険で補償される最低限の金額の基準。

・自賠責保険には支払限度額があるため、3つの基準の中ではもっとも低い損害賠償金額になる。

自賠責保険金額表

<自賠責法別表第1>
第1級 4000万円
第2級 3000万円

<自賠責法別表第2>
第1級 3000万円
第2級 2590万円
第3級 2219万円
第4級 1889万円
第5級 1574万円
第6級 1296万円
第7級 1051万円
第8級  819万円
第9級  616万円
第10級 461万円
第11級 331万円
第12級 224万円
第13級 139万円
第14級  75万円

任意保険基準とは?

・任意保険会社が損害賠償額を算定する際に用いている基準。

・それぞれの保険会社が独自の基準を設定している。

・自賠責基準より高く、弁護士基準(裁判をした場合の基準)より低い金額である場合が多い。

弁護士基準(裁判基準)とは?

・これまでの交通事故の裁判例から導き出された損害賠償金の基準。

・法的根拠がベースになっているため、裁判をした場合に認められる可能性が高く、弁護士が主張する場合もこの基準に基づいて算出する。

・3つの基準の中ではもっとも高額になる。

被害者としては、金額がもっとも高額になる可能性の高い弁護士基準(裁判基準)での慰謝料を引き出し、示談することが大切になってきます。

詳しい解説はこちら⇒
交通事故示談の慰謝料で損する人、得する人の違いとは?

交通事故を弁護士基準で示談する方法

後遺障害等級で気をつけたい注意点とは?

ご自身の自賠責後遺障害等級が決定すると、まずは自賠責保険から損害賠償金が支払われます。

たとえば、びまん性軸索損傷などにより遷延性意識障害や高次脳機能障害を負ってしまった場合、もっとも重い後遺障害等級は1級が認定されます。

この場合の自賠責保険金は最高で4000万円ですが、重度の後遺障害では、慰謝料や入通院費、将来介護費用など、さまざまな損害賠償項目を合わせれば損害賠償金額は億単位にもなります。

すると、自賠責保険金だけではすべての賠償金を賄えない、という事態が起きてしまうのです。

そこで被害者としては、足りない分の損害賠償金を加害者が加入している任意保険会社に請求することになります。

詳しい解説はこちら⇒
自賠責保険と任意保険の関係はどのようになっていますか?

また、ここでもうひとつ、認定されたご自身の後遺障害等級が本当に正しいものなのかどうか、という問題も出てきます。

じつは、後遺障害等級認定で必要な書類を提出していなかった、そもそもの後遺症の診断が間違っていた、などの理由で正しい等級が認定されないケースがあるのです。

被害者としては、認定された後遺障害等級に納得がいかなければ「異議申立」をすることができます。

異議申立では、何が足りなかったのか、どこに不備があったのかを確認しながら、新たな資料や書類を用意して、提出しなければいけません。

被害者やご家族にとっては難しい部分もあると思いますので、その際は交通事故に詳しい法律のプロである弁護士に相談することをお勧めします。

後遺障害等級の詳しい解説はこちら⇒
交通事故で正しい後遺障害等級が認定される人、されない人の違いとは

後遺障害等級申請する際に交通事故被害者がやってはいけない5つのこと

交通事故の後遺障害等級が間違っていたら?

示談交渉で注意するべきポイント

後遺障害等級が認定されると、加害者側の任意保険会社から示談金(損害賠償金)の提示があり、示談交渉がスタートします。

提示された金額に納得がいって、契約書に押印すれば示談は成立しますが、不満がある場合には示談交渉が継続されます。

しかし、被害者がいくら主張しても保険会社は損害賠償金を増額してくることはほとんどありません。

それは、なぜなのでしょうか?

その理由については、こちらをご覧ください。

交通事故の示談の流れを徹底解説

この理由について、被害者とそのご家族には必ず知っておいていただきたいと思います。

なぜ交通事故の被害者は弁護士に相談するべきなのか?

ここまで読み進めてみると、さまざまな疑問や不安が湧いてくると思います。

「異議申立といわれても、どうやって行なえばいいのか?」

「損害賠償金額が正しいのかどうか、どうやって判断すればいいのか?」

「そもそも、示談交渉は自分だけでできるのだろうか?」

こんな時、ぜひ一度、相談していただきたいのが交通事故に精通した、法律の専門家である弁護士です。

それは、なぜなのか……下記のサイトで詳しく解説しています。

詳しい解説はこちら⇒
交通事故を弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点

まずは記事をお読みになって、参考にしてみてください。

さまざまな疑問や不安が解消されていくと思います。

弁護士による交通事故問題の解決実例

ここでは、実際に当事務所が解決した事例についてご紹介します。

弁護士に依頼すると、被害者とそのご家族は煩わしく難しい示談交渉から解放され、さらには損害賠償金の増額を手にする可能性が高くなります。

ぜひ参考にしていただき、弁護士に依頼するメリットを実感していただきたいと思います。

みらい総合法律事務所の解決実績①

19歳の男性が友人の運転するバイクの後部座席に乗車していました。

そこに、対向車線から右折してきた自動車が衝突。

被害者男性は、脳挫傷などで高次脳機能障害の後遺症が残ってしまい、自賠責後遺障害等級は3級3号が認定されました。

被害者は、加害者の刑事事件に被害者参加することを希望したため、示談交渉も含めて自力での解決は難しいと判断して、当事務所にすべてを依頼されました。

将来介護費などが争点となりましたが、最終的には1億3500万円で示談が解決しました。

詳しい解説はこちら⇒解決実績①

みらい総合法律事務所の解決実績②

トラックを運転していた28歳男性が交差点に進入したところ、右折してきた自動車に衝突された交通事故。

脳挫傷などのケガのため、高次脳機能障害で7級4号の自賠責後遺障害等級が認定され、加害者側の保険会社からは2133万6908円の損害賠償金が提示されました。

この金額は適切なのかどうか判断できなかった被害者が当事務所の無料相談を利用したところ、弁護士からは「まだまだ増額は可能」との意見があったことから、被害者は示談交渉を依頼しました。

弁護士が加害者側の保険会社と交渉したところ、約2300万円増額の4400万円で示談が成立しました。

詳しい解説はこちら⇒解決実績②

みらい総合法律事務所の解決実績③

交通事故の被害により、74歳の女性が重大な傷害を負って遷延性意識障害に陥りました。

自賠責後遺障害等級は1級1号です。

慰謝料などの示談金として、加害者側の保険会社は5563万2490円を提示。

被害者のご家族は、今後の示談交渉の進め方に不安を感じ、当事務所の無料相談を利用しました。

弁護士の説明に納得したご家族は、増額可能ということで、示談交渉を依頼されました。

逸失利益の基礎収入や将来介護費、後遺症慰謝料などで合意に至らず、弁護士は提訴し、裁判に突入。

最終的には、当方の主張が認められ、9000万円での和解となりました。

保険会社提示額から3500万円の増額でした。

詳しい解説はこちら⇒解決実績③

みらい総合法律事務所の解決実績④

原付バイクで走行中、右折してきた自動車に衝突され、20歳の男性が頭部外傷のケガを負いました。

治療をしましたが後遺症が残り、自賠責後遺障害等級は9級10号が認定されました。

すでに支払った治療費などの他、保険会社は慰謝料などで1005万1444円の示談金額を提示。

この金額の妥当性を確認するため、被害者が当法律事務所に相談したところ、「増額可能」との判断だったことから、被害者は示談交渉などすべてを依頼しました。

弁護士との交渉の結果、最終的に保険会社は3370万8557円を提示したため、示談交渉が成立しました。

約3倍に増額したことになります。

詳しい解説はこちら⇒解決実績④