交通事故で自動車など物損事故にあった場合の損害賠償

最終更新日 2021年 09月01日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

交通事故(物損事故)の損害賠償について弁護士が回答!

物損事故の損害賠償


交通事故は、物損事故と人身事故に分けられます。物損事故とは、交通事故によって、自動車、電柱、塀、家屋など、物が破損した事故で、死傷者がでない場合の事故を言います。人身事故とは、死傷者がでた場合の事故を言います。

物損事故によって自動車が破損した場合、加害者に請求できる損害賠償の項目としては、修理費、評価損、買い替えに伴う登録手続関係費用、代車料、休車損などが考えられます。

物損事故が起きた時の対応

危険防止と警察への連絡

交通事故に遭った場合には、ただちに運転を停止して、道路に生じている危険を防止する措置をとることが法律上義務づけられています。

これは、人身事故だけではなく、物損事故も同じです。

そして、直ちに警察官に対して事故に関する報告をすることも法律上の義務です。

これらの義務に違反した場合には、刑罰が定められていますので、注意が必要です。

刑罰は、危険防止に違反した場合は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金、報告義務違反は、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。

相手の確認

次に、相手の連絡先、保険の有無などを確認します。

名刺をもらったり、運転免許証の写真をとったりします。

相手の身元がわからないと、示談交渉もできず、損害賠償ができない可能性があります。

保険会社への連絡

多くの場合に、自分も任意保険に加入していると思います。

その場合には、保険会社に連絡を入れるようにします。

保険約款上、一定期間内に連絡をするよう規定されています。

交通事故が起きた時、すぐやるべきことについて、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
交通事故の被害にあってしまった場合、すぐにやるべきこと。

証拠収集

物損事故の場合には、示談代行サービスがありませんので、自分で加害者側と交渉することになります。

物件事故報告書、修理見積書などを集めて、示談交渉に備えることになります。

示談交渉

資料を収集したら、いよいよ示談交渉を行います。

損害額、過失割合などを話し合い、交渉します。

示談が成立したら、示談書を締結し、加害者本人あるいは加害者の保険会社からの入金をもって示談交渉は終了となります。

交通事故の示談交渉について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
交通事故の示談交渉で被害者が避けておきたい7つのこと

自動車の物損の修理費


自動車の物損の場合、自動車の修理が可能な場合は、適正な修理費相当額を請求することができます。修理費の金額については、通常は、修理工場からの見積書や請求書に基づいて請求することになります。被害者と加害者の間で修理費用について争いがあるような場合には、さらに別の修理工場に見積もりをお願いするなどして平均値をとるなど、交渉や裁判で決着を図ることになります。

全損として買替えをすることができる場合というのは、物理的又は経済的に修理不能と認められる状態、またはその買替えをすることが社会通念上相当の認められる場合です。

経済的に修理が不能な時というのは、修理費が高額で、車両の時価額に買い替えたときの諸費用を加えた金額よりも多くなる場合です。

この場合の車両の時価額は、事故直前の中古車価格を参考にし、当該車両と同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得できる価額となります。

中古車価格については、市販の自動車専門誌や「中古車価格ガイドブック」(自動車公正取引協議会認定)、通称「レッドブック」などを参考にして決められます。

被害車両を買い替えることが社会通念上相当と認められる場合とは、フレーム等車体の翻意質的構造部分に重大な損傷の生じたことが客観的に認められるような場合です。

全損と認められた場合には、車両時価額と売却代金の買替差額が認められます。

なお、被害者が、その自動車に愛着を持っていて、買い替えた場合より修理費の方がかかる場合でも修理してほしいと思ったとしても、その価値を上回る修理費を損害とは認めないという裁判例がでています。(東京高裁 平成4年7月20日判決)

自動車の評価損

自動車は、一度交通事故に遭ってしまうと、修理を行って完全に直したとしても、その自動車の価格は下がってしまいます。この自動車の価値が下がってしまうことを、評価損、あるいは、格落ちといいます。たとえば、時価額200万円の自動車が事故で破損し、修理をして、その後の時価額が150万円になってしまった場合、差額の50万円が評価損となります。

評価損についても、加害者に請求することはできますが、実際に金額がいくらになるかについては、先程の例のように明確に50万円という金額がすぐにでるわけではありません。通常、自動車の査定は修理工場などが行いますが、修理工場によって査定額が変わってきたりと、中古車の時価額に変動があったりと、明確な金額を出すのが難しい場合が多いからです。過去の裁判例をみると、事案によって様々な解決がされていますが、修理費の2~3割としたものが多いようです。

買い替えに伴う登録手続関係費用


自動車を買い替える場合、登録手続きに関する費用や、自動車に関する税金などがかかります。

主に、以下のような費用です。

・廃車手数料

・自動車取得税(取得価格が15万円以下は非課税)

・自動車重量税(中古車にはかかりません)

・自動車税(4月1日現在の所有者)

・登録手数料

・自賠責保険料

・車庫証明手数料

このうち、自動車所得税、未経過期間の自動車重量税は、損害として認められます。

ただし、自動車税は、自動車が廃車となった翌日からの分については、納税者に還付されるため、損害として認められません。また、自賠責保険料も、未経過分は返還されますので、損害として認められません。

その他、車検登録費用、車庫証明費用、車検登録手続等代行費用(登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料等)などは、損害として認められます。

代車料

交通事故により自動車が破損し、修理を行う場合や買い替える場合、その修理期間中や買い替えた自動車が届くまでの期間、代わりの自動車を借りた場合のレンタカー代や、タクシー代などを代車料といいます。代車料は、代車を使用することが必要であり、かつ使用することが相当である場合には、損害として加害者に請求することができます。

営業など仕事で自動車を使用していた場合には、代車が必要不可欠となりますので、代車料が認められます。これに対し、自家用車で、週末にレジャーなどの目的で使用するにとどまっていた場合には、代車料は認められにくいでしょう。自家用車でも、通勤に使用していたという場合には、代車料が認められる可能性はありますが、電車など公共交通機関を使っての通勤が可能であった場合には、代車の必要性が否定される場合もあります。

代車に認められる期間は、通常は修理や買い替えに必要な相当期間で、おおむね1週間から2週間くらいが相場ですが、部品の調達に時間がかかったり、被害者・加害者間の交渉が長引いたりした場合には、長期間認められる場合もあります。

代車料の請求については、どのレベルの代車が認められるのか、も問題となる。たとえば、高級車が交通事故で損壊し、修理が必要となった場合に、その間の代車は高級車で認められるのか、という問題です。

過去の裁判例では、代車は、必ずしも同種・同等・同格の車種である必要はなく、被害車両の車種・利用状況等を勘案し、被害者に不足の損害を負わせないようにすべきであるとして、メルセデスベンツの中でも最高級ランクの代車は、国内最高級クラスの車両が相当であるとしたものがあります(東京地裁平成8年3月6日判決、出典:交民29巻2号346頁)。

休車損


交通事故により自動車が破損し、修理を行う場合や買い替える場合、その修理期間中や買い替えた自動車が届くまでの期間、その自動車を使うことができなかった場合に、自動車を運行していれば得られていたはずの収入の減少のことを、休車損といいます。

休車損が発生するということは、その自動車を使って利益を上げていたという事実が必要ですので、その自動車は営業用の自動車であることが必要です。たとえば、タクシー、ハイヤー、観光バス、路線バスなどが挙げられます。これらの自動車は、代車による営業が難しいからです。なお、代車による営業が可能な場合は、代車料のみが認められることになり、被害者が代車料と休車損を両方請求することはできません。

休車損がいくらになるかについては、理論的に言えば、事故で破損した自動車について1日当たりの営業収入から経費を差し引いた金額に、休車期間の日数をかけて算定することになりますが、実際に金額を算定するのはなかなか難しいです。たとえば、タクシーの場合、1日の平均売上高から、ガソリン代、人件費等を差し引いた金額が1日の休車損となりますが、タクシー会社や、時期や、地域等によっても売上や経費率も変わってくるため、算定は簡単ではありません。裁判例を見ると、事故前3ヵ月あるいは1年の営業収入から1ヵ月の平均収入をだし、その2割5分から3割くらいの目安で算定しているものもあります。

そして、休車損については、遊休車が存在すれば、それを利用すればよいことから、この立証責任が問題となります。

過去の裁判例では、遊休車の存在を加害者が立証することは事実上不可能であるから、遊休車が存在しなかったことについての立証責任は被害者が負担するとしたものがあります(大阪地裁平成21年2月24日判決、出典:自保ジャーナル1815号149頁)。

それでは、物損事故で、電柱、塀、家屋、ペットなど、自動車以外の物が破損した場合には、交通事故の被害者はどのような請求ができるのでしょうか?

塀、ガードレール、電柱などが壊れた場合

交通事故で自動車が塀に衝突し、塀を壊した場合、塀の修理費が損害になります。

ガードレールや電柱を壊した場合も同様です。

全損した場合には、同じ構造の物を新たに作る場合の費用が損害となります。

店舗が壊れたの場合

たとえば、交通事故により自動車がレストランに突っ込んで、壁などを壊してしまった場合、そのレストランが修理のために休業したとすれば、壁などの修理費に加えて、レストランを営業していれば得られたはずの利益(営業損害)について、加害者に請求することができます。

営業損害の額については、本来不確定なものですが、実際には、事故前の売上から1日の平均売上を出して、そこから経費を差し引いた額を請求することになるでしょう。

裁判例では、交通事故により飲食店の壁が破損して7日間の休業を余儀なくされた事案において、事故前3ヵ月の平均の利益を基礎として7日間の休業損害を認めたものがあります。(大阪地裁 昭和59年3月15日判決)

積荷が破損した場合

交通事故により、自動車の積荷が破損した場合は、積荷の価値に基づいて損害賠償が認められる場合があります。

裁判例では、呉服や洋服、毛皮など、高級品を積んだトラックが、交通事故により炎上して積荷を消失した事案で、積荷の損害額約2億6000万円という高額な損害賠償額を認めたものがあります(積荷が高額であることを運送会社に申告しなかったという荷主の過失を50%認めたため、実際の賠償金額は約1億3000万円となりました)。(神戸地裁 平成6年7月19日判決)

ペットは物損扱い

ペットは、法律上は物として扱われますので、交通事故によりペットが死亡した場合は、物損となります。

ペットが死亡した場合の損害賠償額は、原則として、そのペットを購入した価格となります。

ただし、飼い主の管理に落ち度などがあった場合には、過失相殺されます。

ペットがケガをした場合には、治療費等の請求をすることができます。

裁判例では、長い間家族同然に飼ってきた犬が死亡した事案で、犬の葬儀費用2万7000円と慰謝料5万円を認めたものがあります。(東京高裁 平成16年2月26日判決)

また、盲導犬が死亡した事案では、盲導犬を1頭育成するのにかかった費用を、盲導犬としての活動期間を10年間とした場合の残りの活動期間の割合に応じて減少した価値として、残りの活動期間が5年間であった盲導犬の価値を260万円と算定した裁判例もあります。(名古屋地裁 平成22年3月5日)

レッカー代、保管料

交通事故により走行不能になった自動車を、修理工場等に搬送する場合にかかるレッカー代は、損害賠償として認められます。

また、自動車を保管する保管料も、損害賠償として認められます。

裁判例では、自動車が破損した事案で、保険会社が長期間交渉を放置した事情も考慮し、修理するか廃車にするかを判断するために必要な期間を3ヵ月間として、その期間の保管料約17万円を認めたものがあります。(東京地裁 平成13年5月29日判決)

時価査定料、見積費用

交通事故で自動車が破損した場合、修理が可能か不可能かを決める際にかかる時価査定料や、修理の見積費用は、損害賠償として認められる可能性があります。

裁判例では、趣味・嗜好に供される希少価値の高いフェラーリが損壊した事案において、修理費用の見積のためにかかった運搬費用及び保管費用を含めた見積費用として、約70万円の見積費用を認めたものがあります。(名古屋地裁 平成21年2月13日判決)

物損に関する慰謝料を請求できるか

慰謝料は、通常は、被害者が死亡したり、ケガをしたりした場合の精神的・肉体的苦痛を慰謝するためのものですので、物損事故の場合には慰謝料が発生しないのが原則です。

ただし、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情がある場合には、認められる可能性があります。

裁判例では、大型トラックが家屋に衝突して損壊した事案について、被害者が高齢で、長年住み慣れた家屋を離れて半年間アパート暮らしを余儀なくされた心労や、借財をして修復工事をするなど、事後処理に奔走したことなどを考慮して、被害者2人に合計60万円の慰謝料を認めたものがあります。(神戸地裁 平成13年6月22日判決)

また、乗用車が、被害者が美術館からの依頼で作成した陶芸作品を損壊した事案について、財産的価値は算定できないが、被害者が多大な労力をかけて制作した思い入れのある作品であり、代替性のない芸術作品であることから、慰謝料100万円を認めた裁判例もあります。(東京地裁 平成15年7月28日判決)

そして、上記ペットの場合で述べましたが、ペットは法律上物として扱われるとはいえ、飼い主らからすれば家族同様にかわいがっていることが考えられますので、交通事故でペットが死亡した場合には、5万円~10万円程度の慰謝料が認められる可能性があります。

人損の慰謝料について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
交通事故の慰謝料で被害者がやってはいけない6つのこと

物損事故を人身事故へ切り替える


当初物損事故として処理をした後、痛みなどが出て治療を必要とする場合もあります。

その場合には、人身事故に切り替えてもらう必要があります。

医療機関を受診する

むち打ち症などの場合、事故直後は痛みなどがなくても、数日して首に痛みや違和感が出てくることもあります。

そのような場合は、ただちに医療機関を受診するようにしましょう。

物損事故を人身事故に切り替えてもらう必要がありますが、事故から日数が経てば経つほど、事故のケガとの因果関係の立証が難しくなってしまうからです。

つまり、首の痛みが事故を原因とするものではなく、他の原因なのではないか、という疑いです。

病院等に言ったら、診断書を作成してもらいます。

診断書を証拠として警察に提出するためです。

警察に切替をお願いする

診断書を取得したら、警察に連絡をし、人身事故への切替をお願いし、診断書をもって訪問する日の約束を取り付けます。

これも早い方がいいです。

時間が経過してしまうと、やはり、「本当に事故でケガをしたのか」と疑われ、人身事故への切り替えに難色を示されてしまう可能性があるためです。

人身事故に切り替えることになった場合には実況見分調書を作成することになりますので、それに協力をします。

人身事故に切り替えた後の示談交渉の流れについて、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
交通事故の示談の流れを徹底解説

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