交通事故の保険金と解決方法を弁護士が解説~交通事故被害者のための必須知識~



交通事故の被害にあった場合、生命保険に加入している人であれば、契約内容に応じて、怪我や病気、または死亡した場合に「保険金」が支払われます。
これは、生命保険が人の生命や傷病にかかわる損失を保障するものだからです。

では、自動車保険はどうでしょうか。

自動車保険といっても、交通事故の被害者の人身損害に対する保険や物の損害に対する保険、そして運転者と同乗していた人への保険などさまざまありますが、この中でも最も主要となる自動車保険の柱といえるものが「対人賠償保険」です。

対人賠償保険とは文字通り、交通事故の被害によって死傷した相手に対する保険で、加害者が加入している保険会社から被害者に保険金が支払われます
保険金額が「無制限」となっているものが一般的ですが、これは被害者を救済する目的があるからです。

しかし、現実には正当な金額の保険金が支払われず、被害者とその家族、遺族が泣き寝入りをしていたり、後遺症が残ったうえに得られるはずの保険金を手にすることができずに大きな損害を被ったりしているケースがあります。

一体なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか?
そもそも、保険金とはどのようなものなのでしょうか?

そこで今回は、交通事故被害者の立場に立って、本来受け取るべき保険金の基礎知識から、損をしないための実践的な対処法までを解説します。

交通事故の発生から示談成立までの流れを確認する

万が一、不幸にも交通事故に巻き込まれてしまった場合、被害者とその家族は何をしなければいけないのでしょうか?
また、どのように示談成立まで進めていけばいいのでしょうか?

交通事故は人生で何度も経験するものではありません。ですから当然、知識を持っている被害者の方は少ないでしょう。
また、突然のアクシデントに気が動転してしまう方がほとんどです。

しかし、交通事故にあったときに行うべきこととその流れ、段取りを理解しておくことで、交通事故被害のスムーズな解決と適正額の保険金(損害賠償金)を得ることができます。

交通事故の示談が成立するまでの流れ

交通事故発生から示談成立までの流れは、おおよそ次のとおりです。

①交通事故の発生
②加害者(相手)の身元確認
③警察への通報と実況見分による調書の作成
④加害者、被害者それぞれが保険会社へ連絡
⑤被害者の怪我の治療
⑥治療の完了または後遺障害等級の認定により賠償損害額確定
⑦加害者側保険会社との示談交渉
⑧示談の成立(もし、示談が不成立の場合は紛争処理機関、法的機関へ)

 

「交通事故の被害に遭ったとき、すぐやるべきこととは?」

(弁護士による交通事故SOS)

 

加害者(相手)の身元を確認する

今後、加害者側と交渉していく必要があるので、相手の名前と連絡先を必ず確認しておきます。
加害者が、どこの誰なのかわからなければ、被害を補償してもらうことができなくなってしまうからです。

また、事故直後に相手方から名刺をもらっておくようにします。
加害者が仕事中に起こした事故の場合は、勤務先の会社も損害賠償責任を負担する義務がありますし、もし、加害者が保険に加入していない場合、給料を差し押さえるケースもあるからです。

もし、相手が会社の名刺を持っていない場合は、会社名、部署、連絡先をメモしておきます。
ウソの電話番号を教える不誠実な加害者の場合や、被害者の書き取り間違いの場合も考えられます。
そこで、その場で電話をかけて、加害者の電話番号が正しいかどうか確かめるようにしましょう。

できれば、「車検証」、「自賠責保険」、「任意保険」を確認し、携帯電話やスマホのカメラなどで写真を撮っておきます。

車検証には自動車の所有者情報などが記載されています。
自動車の所有者と運転をしていた加害者が別の場合は、自動車を所有する人も被害について損害賠償を負担する可能性がありますので、しっかりチェックしておきましょう。

警察への通報と実況見分による調書の作成

その場で加害者が「示談をしよう」と提案してくることがありますが応じてはいけません。
必ず警察に通報することが重要です。

なぜなら、保険会社との示談や裁判は、警察が作成する「交通事故証明書」や「物件事故報告書」をもとに行うことになるからです。

最悪の場合、警察へ通報しないと交通事故そのものが発生していなかったことになってしまう可能性もあるので注意が必要です。

加害者・被害者双方の保険会社への通知

加害者に自身の保険加入の有無を確認し、保険会社へ連絡をしてもらいます。
これは、交通事故の示談交渉において重要なポイントになります。必ず事故直後に行うようにしてください。

なお、被害者ご本人が加入されている任意保険を利用できる場合もあります。この通知も忘れずに、速やかに行うことが大切です。

任意保険にはさまざまな種類があります。ご自身の怪我の治療費などを負担してくれるものもありますので必ず確認しましょう。

自賠責保険と任意保険の違いとは?

ところで、自動車保険には「自賠責保険」と「任意保険」がありますが、この違いをご存知でしょうか。

自賠責保険は、正式名称を「自動車損害賠償責任保険」といいます。自動車やバイクを使用する際に、すべての運転者が加入を義務づけられている損害保険です。(「自動車損害賠償法」第5条)
強制加入のため、強制保険とも呼ばれます。

法律で定められたものですので、違反すると当然に罰則が科せられます。
違反者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。(「自動車損害賠償保障法」第86条の3)

自賠責保険は、人身事故の被害者を救済するために作られた保険です。
そのため、人身事故にのみ適用され、自動車が壊れるなどの物損事故には適用されません

自賠責保険には支払限度額があります。
死亡による損害の場合は3000万円、傷害による損害の場合120万円、介護を要する後遺障害の場合4000万~3000万円、その他の後遺障害の場合、1級から14級の後遺障害等級に応じて3000万円~75万円となっています。

「自賠責法別表第1」
第1級 4000万円
第2級 3000万円

「自賠責法別表第2」
第1級 3000万円
第2級 2590万円
第3級 2219万円
第4級 1889万円
第5級 1574万円
第6級 1296万円
第7級 1051万円
第8級  819万円
第9級  616万円
第10級 461万円
第11級 331万円
第12級 224万円
第13級 139万円
第14級  75万円

任意保険は、ドライバーが任意で加入する保険で、1997(平成9)年に保険が自由化されたことで各損保会社がさまざまな内容の保険を扱っています。

対人賠償保険」は、契約している車両(自動車やバイク等)で事故を起こしてしまい相手が死傷した場合、相手に保険金が支払われます

対物賠償保険」は、相手の車両や家屋等の建物などを壊してしまった場合に相手に保険金が支払われます

なお、自賠責保険は必要最低限の保障のため、実際の交通事故では自賠責保険だけでは損害賠償金をカバーしきれないケースが多く発生します

たとえば、相手の被害者が頭部を強く打ったことで寝たきりの植物状態(遷延性意識障害)になったり、脊椎損傷で下半身に麻痺が残ったりした場合、将来の介護費用が多額になるため、損害賠償金が1億円を超える場合がざらにあります。

しかし、自賠責保険の補償は最大で4000万円です。
では、残りの6000万円はどうしたらいいのでしょうか?
誰が支払ってくれるのでしょうか?

そこで必要になってくるのが任意保険です。
任意保険は、自賠責保険でカバーしきれない部分を補うものなので、交通事故による損害賠償金額が自賠責保険金額を上回る場合にのみ、その上回る部分について支払われるのです。

詳しい動画解説はこちら

自賠責保険と任意保険の関係は?

 

交通事故に適用される自動車保険の任意保険とは?

 

被害者が自分の保険を確認したほうがいい理由

交通事故の被害にあった時、通常は加害者側の保険を使うことになります。

しかし、被害者ご自身が契約している自動車保険の中にも使えるものがあります
加害者側の保険を使ったうえで、さらに自分が加入している保険からも保険金が出る場合があるのです。

これを知らない方、または忘れてしまっている方がいます。

せっかく保険料を支払っているのですから、もらえるものはしっかりともらい、交通事故による被害を少しでも回復しなければなりません。
損をしないためにも、ご自身の契約している保険を必ず確認するようにしましょう。

搭乗者傷害保険」は、運転者(契約者)だけでなく家族や友人など同乗していた人に対して保険金が支払われるものです。
対人賠償保険と対物賠償保険が相手(被害者)に対しての補償であるのに対して、搭乗者傷害保険は事故を起こした自分に対して補償をしてくれるものです。

人身傷害補償保険」は、保険の契約者が被保険自動車や他の自動車に搭乗中の交通事故、または歩行中の交通事故により傷害を被った場合に、約款で規定された基準に従って算定された損害額が支払われる保険です。

交通事故で被害者にも過失がある場合、「過失相殺」によって加害者からは被害者の過失割合を差し引いた保険金(賠償金)しか支払ってもらえません。

しかし、「人身傷害補償特約」があれば、自分の過失割合に対応する分についても、一定限度で支払ってもらえる場合があります。

つまり、被保険者の損害賠償責任の有無や過失の程度を問わず支払いを受けることができる点が最大の特徴です。

この場合、ご自分の任意保険だけでなく、同居のご家族や、独身の場合には実家のご両親の任意保険も確認することが大切です。
実は、自分の任意保険だけでなく、家族などの任意保険からも保険金が支払われる場合があるのです。

また、自宅に複数の自動車があり、それぞれ任意保険をかけている場合には、すべての確認が必要です。

これらの保険を使う場合、保険代理店に確認するだけでは十分とはいえません。
過去には、口頭での確認や回答で間違えている例が実際に何度もあったからです。
必ず事故当時のパンフレットや保険証券などを確認してください。

詳しい動画解説はこちら

交通事故における人身傷害補償保険とは?

 

弁護士費用特約」がついていれば、交通事故の損害賠償を請求する際に、弁護士に依頼する場合の弁護士費用や裁判費用が一定限度で支払われます

詳しくは後ほど解説しますが、被害者ご本人が保険会社と示談交渉するのと、弁護士が交渉するのとでは損害賠償金額がかなり変わってくることが多いので、弁護士費用特約がある場合は有効に使うべきです。

通常、支払金額は、ひとつの事故で被保険者1名に対し300万円を限度とし、法律相談費用については別途10万円を限度とする契約がほとんど
です。

ちなみに、人身事故に限らず、物損の場合も対象になります。
また、支払いを受けるためには、事前に任意保険会社の同意が必要となります。

無保険者傷害特約」をつけていれば、加害者が任意保険に入っていななくても、保険金が支払われる、という特約です。

ここまで見てきたように、自分が被害者の場合に加害者の加入している任意保険会社に請求する場合の保険金損害賠償金といいます。
一方、被害者ご自身が加入している任意保険から自分に対して支払われるもの保険金と一般的に呼んでいるわけです。

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交通事故被害者が適正な保険金を受け取るための注意点とは?

怪我の治療はいつまで続ければいいのか?

交通事故の被害にあって怪我をした場合は当然、治療をします。
しかし、被害者の方が不安になるのは、怪我の治療を一体いつまで続けるべきか、ということです。

怪我が完治すれば、その時点で治療をストップすればいいので分かりやすいのですが、問題となるのは、何らかの後遺症が残っている場合です。

通常、医師が「治療をこれ以上継続しても、症状の改善が見られない」と判断したときが、治療継続のポイントになります。
これを「症状固定」といいます。

症状固定と診断されたにもかかわらず、まだ体になんらかの障害が残っている場合には、「後遺症」ということになってしまいます。

医師が「症状固定」の判断を下したあとの治療は、原則として、損害賠償の計算に含まれないことになります。そのため、主治医としっかりコミュニケーションをとり、自分の体がどのような状態にあるかを常に把握することが重要になってきます。

後遺障害等級の認定と賠償損害額の確定

被害者の治療が完了したあとは、「損害保険料率算出機構」という機関により、「後遺障害等級認定」が行われます。
これは、後遺障害のレベルを認定する重要な手続きです。

脊髄損傷や高次脳機能障害など後遺症が重いものから1級から14級まであり、等級によって被害者の方自賠責保険からが受け取ることができる金額が変わってくるのは前述の通りです。

なお、認定された後遺障害等級に納得がいかない場合は、異議申立てをしなければいけません。

 

詳しい動画解説はこちら

交通事故で認定された自賠責後遺障害等級に納得がいかない場合にどうするか?

 

保険金の示談で被害者が弁護士に依頼したほうがいい理由

交渉相手は加害者が加入している保険会社の担当者

ところで、交通事故の被害者の方が理解しておくべきことがあります。
それは、「自分自身が損害賠償を立証し、自分で加害者側に請求しなければならない立場にある」ということです。

自分は被害者なのだから、「警察が何とかしてくれるだろう」、「保険会社が何とかしてくれるだろう」などと考えていると後々、痛い目にあいます。

被害者の方が交渉していく相手は、加害者の加入している保険会社の担当者になることがほとんどです。
これは、任意保険には示談代行のサービスがついていることが多いためです。

保険会社の担当者は、あなたの味方ではなく交渉相手です。
しかも彼らは保険のプロです。
そのことを、しっかり理解しておいてください。

加害者側の保険会社は適正な保険金を払ってはくれない?

しばらくすると、加害者側の保険会社から保険金の提示があります。

その内訳は次のようになります。

「損害賠償金を構成する項目例」※怪我をした場合
治療費、入院雑費、通院交通費、付添費、休業損害、傷害慰謝料、弁護士報酬、後遺症慰謝料、将来介護費、将来雑費、損害賠償請求関係費用、装具・器具等購入費、家屋・自動車等改造費、葬儀関係費、修理費、買替差額、評価損、代車使用料、休車損、登録関係費など。

これらをまとめて保険金(損害賠償金)として提示され、被害者の方は示談をするかどうか選択をすることになります。

しかし、実はこの保険金が適正な金額で提示されることは、まずありません。

中には納得がいかないとして示談交渉をする方もいますが、「有名な大手の保険会社が適当な金額を提示するわけないだろう」と考えて示談金の書類に判を押してしまう人もいます。

ではなぜ、適正な金額が提示されないのでしょうか?

交通事故の保険金算定には3つの基準がある

実は、加害者側の保険会社から提示される保険金額は、初めから低く設定されていることが多いのです。
その理由は、交通事故の損害賠償算定に次の3つの基準があるためです。

①自賠責基準
自賠責保険から支払いを受けられる金額を基準とするもので、金額は3つの中で最も低くなります。
任意保険会社は、よくこの自賠責基準による金額を交通事故の示談案として提示することがあります。それは、任意保険会社は自賠責基準の範囲内であれば、自賠責から支払いを受けることができるからです。
つまり、この基準で示談できれば、保険会社自らの出費を抑えることができるわけです。

②任意保険基準
任意保険会社それぞれにおける支払基準のことです。自賠責基準のような法的な拘束はなく、あくまで各保険会社内の基準です。
自賠責基準と③の弁護士基準の間で設定されているといえます。
「当社の基準の限界まで出させてもらいました」と保険会社の担当者が言うことがありますが、それがこの基準による金額です。
しかし、これも裁判をした場合に認められる金額より少ないのが通常です。

③弁護士基準
裁判をした場合に見込まれる金額による支払基準のことです。この基準こそが被害者にとって、本来受け取るべき適正な賠償額といえます。
そのため、この基準に基づいて示談交渉を行い、請求をしていくことが大切です。
なお、この弁護士基準は、裁判所を拘束するものではありません。そのため、②の任意保険基準を超えて増額する可能性があります。

つまり、被害者は、自賠責基準や任意保険基準によって提示された保険会社からの金額で安易に示談をしてはならないのです。

死亡事故の場合の保険金

次に、不幸にして被害者の方が亡くなってしまった死亡事故の場合についても解説します。

警察庁が公表している統計資料「平成27年中の交通事故死者数について」によると、2015(平成27)年に起きた交通事故は53万6789件、負傷者数は66万5126人、死者数は4117人でした。

交通事故件数と負傷者数は11年連続で減少していますが、残念ながら死者数は15年ぶりに増加してしまいました。

これは、65歳以上の高齢者の死者が全体の半数を超え、増加傾向にあることが原因のひとつと考えられています。

突然の出来事のため、遺族の方はどうしていいのかわからず途方に暮れてしまったり、あまりのショックから茫然自失となってしまうことが多くあります。

しかし、どなたかが交通事故で死亡された場合、その瞬間から法的な問題が発生します。
死亡事故の場合は、ご遺族(相続人)の方が加害者に対して損害賠償請求を行わなければいけません。

遺族の方の中には、「あの交通事故のことは思い出したくない」という方もいると思いますが、損害賠償金は、被害者の遺族の方が手にすることができる当然の権利です。
亡くなった方のためにも、決して権利の放棄などしないようにするべきです。

怪我の場合と同様に、加害者側の保険会社の担当者と示談交渉をしていくことが通常です。異なるのは、死亡事故の場合、事故後の治療や後遺障害は発生しないため、保険金額がすぐに決まるという点です。

しかし、前述のように保険会社の提示額は、ご遺族が受け取るべき適正な金額よりも低いことがほとんどです。そのため、死亡事故の場合も、その損害額について示談交渉をしていくことになります。

実は、損害賠償請求する権利には時効があり、その期間は通常、事故から3年間です。
時効を過ぎると請求できなくなるので注意が必要です。

ひき逃げのような加害者がわからない事故の場合は、加害者が判明したときから3年です。

但し、民法改正により、2020年4月1日以降は、損害賠償請求権のうち、人身損害については、3年ではなく、5年となります。

加害者が判明しない場合は、事故から20年が経過すると時効となり、被害者側の権利が消滅してしまいますので、この点も注意が必要です。

詳しい動画解説はこちら

交通死亡事故の示談の流れ

 

自賠責保険への請求について(交通死亡事故にあった場合)

 

なお、被害者や遺族の方がご自分で損害賠償額を計算できるように、WEB上の自動計算機を設置しました。
個別の事情があるため完璧ではありませんが、一般論的な数字が算出できるので、ぜひ活用してください。

損害賠償自動シミュレーション
後遺症編 死亡事故編

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