交通事故の示談までの流れと手続き大全
「交通事故の示談」とは、裁判によることなく、話し合いで交通事故による損害賠償問題を解決することです。
交通事故の解決における示談の流れと手続きは、怪我の場合、以下のようになります。
② 治療
③ 自賠責後遺障害等級認定
④ 示談交渉
⑤ 示談成立
⑥ 入金
しかし、交通事故が発生してから、示談が成立して、被害者の方やご遺族が慰謝料などの損害賠償金を受け取るまでには、さまざまな手続きがあり、簡単に解決できるものではありません。
そこで今回は、損害賠償金(状況によって示談金とも保険金ともいいます)の支払い(受取り)が完了して、交通事故の問題に一区切りつけられるまでの流れと手続きをフロー図解でわかりやすく解説します。
☑交通事故の被害者になってしまった時、「すぐにやらなければいけないこと」とは?
☑怪我の治療中に注意するべきことは?
☑症状固定から後遺障害等級が認定されるまでで知っておくべきポイントは
☑等級が間違っていた時の対処法は?
☑死亡事故で慰謝料などの損害賠償金を受け取ることができるのは誰なのか?
☑提示された慰謝料などの損害賠償金が正しい金額なのか判断する方法は?
☑示談でもめて、なかなか交渉がまとまらない場合はどうすれば解決できるのか?
☑被害者やご遺族が受け取るべき適切な金額はいくらなのか?
これらのことでお困りの方にとって、求めていた答えが見つかるはずです。
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怪我の場合
1:事故発生 |
●直後の情報収集が大事です ●自分の任意保険会社に連絡しましょう ●警察に連絡して、怪我をしたときは、「人身事故」扱いに ●異変を感じたらすぐに病院で診察を! |
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2:治療 |
●まずは治療に専念しましょう ●治療費の確保について |
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3:症状固定 |
●症状固定とは? ●症状固定時に気をつけること ※間違いやすいポイント:保険会社から症状固定を理由に治療費を打ち切られても、医師が治療効果を認める場合は症状固定となりません。 ●症状固定時に障害が残ったら、自賠責後遺障害等級認定を申請しましょう |
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4:後遺障害等級 |
●等級認定が間違っている時は、「異議申立」を。 自賠責後遺障害等級認定は、1級~14級が定められています。 この段階になると、素人ではわからないでしょうから、専門の弁護士に相談することをおすすめします。 |
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5:示談交渉 |
●示談金額が正しいかどうか、弁護士に確認を! 示談交渉が始まると、保険会社の方から、示談金の提示があります。 交通事故の損害賠償は、項目ごとに金額提示されるのが通常ですので、内訳を示してもらいましょう。 したがって、交通事故を専門的に扱う弁護士事務所に相談することをおすすめします。 |
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6:裁判 |
●示談がまとまらなければ、躊躇せず裁判へ! 示談交渉をしても、保険会社が正当な金額を提示してくれない場合があります。 裁判は、弁護士に委任しなければなりませんが、依頼者の負担はそれほど大きくありません。 また、判例上、弁護士費用相当額や遅延損害金が、判決で賠償額に上乗せさせる傾向にありますので、弁護士費用は、それほど大きな負担にはならないと思います。 |
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交通事故の発生後の流れと手続き
被害者の方がやるべき7つのこと
交通事故が発生したら、被害者の方がやらなければならないことは7つあります。
交通事故後の対応で間違いや不足があると、あとで取り返すことができないので十分注意してください。
①加害者の確認
・運転免許証の提示を求め、加害者は誰なのかを確認します。
・名刺を持っていればもらっておきましょう。
※従業員が勤務中に交通事故を起こした場合は、雇用主も損害賠償責任を負う場合があります。
・車検証の提示を求め、写真を撮っておきます。
※自動車損害賠償保障法により、運転者だけでなく、車両の保有者も損害賠償責任を負うからです。
- 住所
- 氏名
- 携帯電話や自宅の電話番号
- 会社名や連絡先
- 加害車両のナンバーや保有者
これらをしっかり確認しておくことが大切です。
②警察との連携
事故後は必ず警察に連絡してください。
そうしないと次のような問題が起きてしまいます。
・交通事故の手続に必要な交通事故証明書が作成されない
交通事故発生の日時や場所、状況の立証が難しくなるので、「加害者が交通事故の発生を否定する」といったリスクがあります。
・事故状況を検証した実況見分調書が作成されない
実況見分調書は加害者の刑事裁判でも、その後の示談交渉や民事訴訟でも、もっとも重要な証拠資料になるものです。
これがないと、過失割合で不利になる、示談交渉がもめてしまうなど、被害者の方は大きなリスクを負ってしまうことになります。
警察官が現場に到着すると実況見分が行なわれ、被害者の方と加害者双方には聞き取り調査が行なわれます。
それらをもとに「実況見分調書」や「供述調書」が作成されるので、できるだけ記憶の通りに証言して、警察に協力してください。
交通事故の被害を受けた時は警察に必ず通報して、たとえ軽傷だと感じても警察に「人身事故」の扱いにしてもらうことが大切なのです。
③事故状況と加害者の言い分の確認
加害者は、事故の直後は自分の過失を認めていても、あとになって言い分をひっくり返すことがあります。
そのため、スマートフォンで現場を撮影したり、加害者との会話を録音しておくといいでしょう。
また、事故が起きた場所の確認も大切です。
事故発生の場所、信号の色、歩行中だったのか、道路等を横断中だったのか、車両のスピードなどが刑事裁判でも民事の示談交渉でも重要になってくるからです。
④目撃者や物証の確認
目撃者がいる場合には協力をお願いして、氏名、住所、連絡先等を聞いておきます。
目撃者の証言も重要な証拠になるからです。
また、近年ではドライレコーダーの普及にともない、重要な証拠になることが増えているので、映像を確保しておくことも忘れないでください。
⑤加害者側の保険会社の確認
加害者が加入している自賠責保険、任意保険の会社名や保険の証明書番号などもメモしておきます。
同時に、加害者には保険会社に連絡をしてもらうようにしてください。
この後に治療費や慰謝料、逸失利益などの受け取りがあるので大切になってきます。
⑥自身が加入している保険会社に連絡
被害者ご自身が加入している保険の内容を確認して、保険会社に連絡してください。
事故後の対応、手続について何をどうすればいいのか、わからないことは教えてもらえると思います。
「人身傷害補償特約」や「弁護士費用特約」、「搭乗者傷害特約」など、使用できるものがある場合がありますし、加害者が保険に加入していない場合では、ご自身の保険の「無保険者補償特約」を使うこともなります。
なお、見落としがちですが、ご自身の保険以外にも使用できる特約がある場合があるので、同居のご家族や独身の場合は実家の両親の保険内容も確認しておきましょう。
⑦必ず病院に行って診察を受ける
その場では痛みもなく、怪我はしていないと感じても、念のため病院に行って診察を受けてください。
むち打ちなどでは、後日痛みが出てくる場合もありますし、そうした場合に最初に病院に行っていないと交通事故との因果関係を否定されてしまい、争いになる可能性があるのです。
被害者の方が不利にならないよう、少しでも体の変調を感じたら必ず病院に行ってください。
怪我の治療に関する注意ポイント
まずは怪我の治療に専念してください。
というのは、怪我の治療中から加害者側の保険会社と慰謝料や過失割合について交渉する方がいるのですが、じつはあまり意味がないことだからです。
怪我の治療が終了し、後遺症が残った場合は、その時点で後遺障害等級認定の申請をします。
そして、被害者ご自身の等級が認定されてからでないと保険会社も慰謝料や逸失利益などの損害賠償金額を算定できないのです。
治療ではどの保険を使えばいいのか、健康保険か労災保険か、ということについて動画を作成しましたので、ぜひご覧ください。
症状固定から被害者のステージが変わる
病院に入院・通院して治療を受けたものの、これ以上の治療を続けても治療効果が上がらない、完治の見込みがないと判断された場合、医師から「症状固定」の診断を受けることになります。
症状が固定するので、残念ながら被害者の方には後遺症が残ってしまうことになります。
ここで注意していただきたいのは、医師から症状固定の診断がある前に、加害者側の保険会社が症状固定を求め、治療費の支払いを拒否してくる場合があることです。
保険会社が株式会社であれば、利益を追求することがその運営目的ですから、被害者の方に支払う金額を抑えるために、こうしたことを言ってくるわけです。
しかし、症状固定を決めるのは医師です。
医師から症状固定の診断がなければ、そのまま治療を継続してください。
後遺障害等級がとても重要な理由
後遺障害等級とは?
後遺障害等級はもっとも重度の1級から14級まであります
被害者の方が負った機能障害や運動障害、神経症状などの後遺症に次の要件が認められることで後遺障害と定義され、損害賠償請求の対象となります。
- 交通事故が原因であると医学的に証明されること
- 労働能力の低下や喪失が認められること
- その程度が自動車損害賠償保障法(自賠法)で定める後遺障害等級に該当すること
【参考資料】:「自賠責後遺障害等級表」(国土交通省)
後遺障害等級認定の申請方法
「被害者請求」と「事前認定」という2つの申請方法があります。
それぞれにメリットとデメリットがあるので、被害者の方は経済状況やご家族の状況などを考えながら選択します。
等級に不満があれば異議申立ができる
正しい後遺障害等級が認定されるわけではないことに注意が必要です。
本来より低い等級が認定されたり、等級自体が認定されないような場合は「異議申立」をすることができます。
示談交渉は弁護士に依頼したほうがいい理由
保険会社が提示する損害賠償金額が低い理由
加害者が任意保険に加入している場合、通常はその保険会社から慰謝料などの損害賠償金が提示されます。
しかし、ほとんどの場合、保険会社の提示額はかなり低く、それは被害者の方が本来受け取るべき適正な金額ではありません。
残念ながら、被害者の方が単独で示談交渉を続けても、加害者側の保険会社は増額希望を受け入れることは、ほとんどないのが現実です。
示談交渉が成立せず、長い時間がかかることも被害者の方の損失になってしまいます。
金額提示から3か月以上、示談がまとまらないようなら、交通事故に精通した弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
後遺障害慰謝料の適正な相場金額は?
交通事故の慰謝料の算定では、次の3つの基準が使われます。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士(裁判)基準
自賠責基準がもっとも金額が低くなり、任意保険基準はそれより少し金額が高くなるように設定されています。
加害者側の任意保険会社が提示してくるのは、これらの基準で算定した金額です。
弁護士(裁判)基準は、もっとも高額になる基準で、被害者の方が本来受け取るべき金額になります。
ここでは、自賠責基準と弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の相場金額をまとめてみたので、ご確認ください。
たとえば後遺障害14級では、自賠責基準で32万円、弁護士(裁判)基準で110万円となっており、その差は約3.4倍にもなります。
後遺障害慰謝料も弁護士(裁判)基準で算定した金額で解決するべきだということが、おわかりいただけると思います。
最終的に裁判で解決した時のメリットは大きい
示談交渉で納得のいく解決ができない場合は裁判を検討しましょう。
「裁判は気が重い」「裁判まではしたくない」という被害者の方もいますが、裁判を行なうことで高額に増額して解決する可能性が高くなります。
また、最終的に判決が出た場合は損害賠償金(示談金)に「遅延損害金」や「弁護士費用相当額」が加算されます。
裁判に進むことを嫌がらないでください。
じつは、裁判で解決するメリットは大きいのです。
動画で解説しましたので、ご覧ください。
死亡事故の場合
1:事故発生 |
●事故状況の把握 ●加害者への対応について
・被害者側の保険会社にも連絡をしましょう。ご遺族の方が加入されている保険会社でも対応する場合があります。一度確認を取って下さい。 ※動画でも詳しい解説をしています。 |
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2:示談交渉 |
●示談交渉はいつから? ●示談交渉時に気をつけることは? ●提示額が相当かどうか ※弁護士(裁判)基準とは? ・当サイトでは、無料の自動計算ソフトをご用意しております。ご利用ください。 示談交渉には、その他にも専門的な知識と経験が必要になります。 |
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3:裁判 |
●示談がまとまらなければ、躊躇せず裁判へ! 示談交渉をしても、保険会社が正当な金額を提示してくれない場合があります。 裁判は、弁護士に委任しなければなりませんが、依頼者の負担はそれほど大きくありません。 また、判例上、弁護士費用相当額と遅延損害金が、判決で賠償額に上乗せさせる傾向にありますので、弁護士費用は、それほど大きな負担にはならないと思います |
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死亡事故の発生後の流れと手続き
死亡事故が発生した場合も、怪我をともなう交通事故の場合と基本的な流れ、手続きは同じになります。
詳しい内容は、こちらからご確認ください。
死亡事故の示談交渉で注意するべきポイント
死亡事故でご遺族が受け取ることができる損害賠償項目は?
死亡事故の場合の損害賠償項目は次のようになります。
- 治療費(治療後に亡くなった場合)
- 葬儀関係費
- 弁護士費用
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
①治療費
被害者の方が病院に搬送され、治療を受けた後に亡くなった場合は、必要かつ相当な実費全額が認められます。
②葬儀関係費
「自賠責保険から支払われる金額」
・60万円(定額)になります。
・この金額を超えた場合は、「社会通念上、必要かつ妥当な実費」として認められれば100万円まで支払われる可能性があります。
「加害者側の任意保険会社が提示してくる金額」
加害者が任意保険に加入している場合、通常その任意保険会社が提示してくる金額は120万円以内です。
「裁判で認められる上限金額」
・弁護士に依頼して訴訟を提起した場合は、150万円(原則)まで認められます。
・150万円を下回る場合には,現実に支出した金額の限度で認められます。
「その他の項目」
・遺体搬送料等の費用:葬儀とは直接関係がない費用のため、葬儀関係費とは別に相当な範囲で認められます。
・墓石建立費、仏壇購入費、永代供養費などは、それぞれの事案ごとに判断されことになります。
- たとえば、葬儀費用に100万円がかかった場合、ご遺族はまず60万円を自賠責保険から受け取り、残りの40万円は加害者側の任意保険会社と示談交渉していくというやり方があります。
- ここで任意保険会社が拒否してきた場合は、示談交渉を行ないます。
もしくは、初めから任意保険会社と100万円について示談交渉をしていく、という選択もあります。
③弁護士費用
・加害者側の任意保険会社との示談交渉が決裂した場合、弁護士に依頼して提訴し、裁判での決着を図ります。
・最終的に判決まで進んだ場合は、ここで認められた損害賠償金額の10%程度が相当因果関係のある損害として、弁護士費用相当額が損害賠償額に加算される傾向にあります。
・弁護士費用相当額は示談交渉では認められず、裁判で判決までいった場合に認められます。
つまり、本来であればご自身で負担しなければならない弁護士報酬の一部を加害者側に負担させることができる、ということです。
死亡慰謝料の相場金額と算出方法
交通事故の慰謝料には、①入通院慰謝料(傷害慰謝料)、②後遺障害慰謝料、③死亡慰謝料、④近親者慰謝料(近親者固有の慰謝料)の4種類があります。
死亡事故の被害者の方の精神的苦痛や損害に対して支払われるのが、死亡慰謝料です。
被害者の方が病院で治療を受けた後に亡くなった場合は、入通院慰謝料(傷害慰謝料)も受け取ることができます。
また、ご家族の精神的苦痛・損害が大きい場合は、近親者慰謝料を請求することができます。
死亡慰謝料の相場金額について
慰謝料算定基準別(自賠責基準と弁護士(裁判)基準)に相場金額について早見表を作成しました。
基準の違いが、どのくらい金額に影響するのか確認していただきたいと思います。
「自賠責基準による死亡慰謝料の金額早見表」
家族構成 | 金額 |
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本人 | 400万円(一律) |
遺族が1人の場合 | 550万円 |
遺族が2人の場合 | 650万円 |
遺族が3人以上の場合 | 750万円 |
扶養家族がいる場合 | 200万円が加算 |
注1)遺族には被害者の方の両親、配偶者、子が含まれる。
注2)自賠責基準による死亡慰謝料は、「被害者本人の死亡慰謝料」と、「ご家族などの近親者慰謝料」を合計した金額で支払われる。
たとえば、死亡した被害者の方が家族の生計を支えていて、妻と2人の子供がいる場合の相場金額は次のようになります。
<弁護士(裁判)基準による死亡慰謝料の相場金額早見表>
被害者の状況 | 死亡慰謝料の目安 (近親者への支払い分を含む) |
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一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
独身の男女、子供、幼児等 | 2000万円~2500万円 |
上記のように、弁護士(裁判)基準での死亡慰謝料は、あらかじめ金額が設定されています。
ただし、この金額はあくまで目安となります。
事故の状況、悪質性などによっては増額する場合があることに注意が必要です。
たとえば、加害者が無免許や飲酒運転、著しいスピード超過などの悪質運転だった場合や、被害者の方に特別な事情がある場合などでは慰謝料が増額する可能性があります。
死亡慰謝料等を受け取ることができるのは誰か?
すでに被害者の方は亡くなっているので受取人はご家族などの相続人になります。
ただし、法的に相続順位や分配割合が規定されていることに注意してください。
配偶者:2分の1
子:2分の1
・たとえば子供が2人の場合、2分の1を分けるので、1人の相続分は4分の1になります。
・すでに子供が死亡している場合、子供の子供(被害者の方の孫)がいれば、「代襲相続」により「孫」が相続人順位の第1位になります。
配偶者:3分の2
親:3分の1
・被害者の方に子供がいない場合は、親が配偶者とともに相続人になります。
・両親(父母)がいる場合、3分の1を2人で分けるので、1人の相続分は6分の1となります。
・養子縁組をした場合、その養父母も相続人になります。
配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1
・被害者の方に子供や親がいない場合は、兄弟姉妹が配偶者とともに相続人になります。
・兄弟姉妹が複数人の場合、兄弟姉妹の相続分である4分の1をその人数で分配します。
・兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子供が同順位で相続人になります。
- 前提として、被害者の方に配偶者がいれば必ず相続人になる。
- 遺産相続の対象となるのは認知されている子である。
- 胎児も相続人になる。
- 配偶者がいない場合は、筆頭の親族のみが相続人になり、それ以外の親族は相続人にはならない。
なお、交通事故の慰謝料など損害賠償金の受け取りでは、親族同士で争いが起きるケースがあります。
当事者同士で解決できないトラブルなどがある場合は、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
死亡逸失利益の相場金額と算定方法
死亡逸失利益とは、被害者の方が生きていれば将来的に得られるはずだった収入(利益)のことです。
(年収)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数)×(1-生活費控除率)
=(死亡逸失利益)
「年収」
・事故前年の年収を基本とする。
・幼児、生徒、学生、専業主婦の場合は、全年齢平均賃金または学歴別平均賃金が基準とする。
「就労可能年数」
・18歳から67歳(原則)とされる。
・年長の被害者の方については、年齢や仕事内容等を考慮したうえで、事故時の年齢から67歳までの年数と、平均余命の2分の1のどちらか長期のほうを採用することもある。
・未就労者の場合は、18歳または大学卒業後の年齢から67歳までの年数が基準となる。
「ライプニッツ係数」
・逸失利益は、将来の収入を現在に一時金として受け取ることになるが、現在と将来ではお金の価値に変動があるため、その差額を現時点で調整する(中間利息を控除する)必要がある。
・そのために用いるのがライプニッツ係数で、あらかじめ定められている係数表から調べていく。
【参考資料】:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(厚生労働省)
「生活費控除率」
・生きていれば生活費にお金がかかるが、被害者の方は亡くなったために生活費を支出する必要がなくなるので、その分を控除する。
・被害者の方の家庭での立場によって一応類型化されており、次のように決められている。
<生活費控除率の目安一覧表>
被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 | 40% |
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被害者が一家の支柱で被扶養者2人以上の場合 | 30% |
被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 | 30% |
被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合 | 50% |
死亡逸失利益は年齢、職業などによって金額が変ってきますし、算定は複雑なので交通事故の損害賠償実務に精通した弁護士に相談・依頼されることをおすすめします。
保険会社の提示金額で示談をしないでください
加害者側の任意保険会社が提示してくる金額は、本来ご遺族が受け取るべき金額より、かなり低いことが通常です。
ですから、その金額で示談を成立させてはいけません。
その他にも、ご遺族が「やってはいけないこと」や「解決のプロセス」をわかりやすくまとめましたので、こちらの記事や動画を参考にしてください。
死亡事故の刑事裁判と民事裁判
交通事故の裁判には刑事裁判と民事裁判がありますが、これらはまったく別のものになります。
刑事裁判と被害者参加制度について
交通事故の加害者には次の3つの手続(責任)が発生します。
①刑事手続(刑事上の責任)
加害者が法令上、定められた犯罪行為を行なったとして刑罰を受けることです。
②民事手続(民事上の責任)
「自動車損害賠償保障法」に基づく運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)、「民法」に基づく不法行為責任(民法709条)、使用者責任(民法715条)などにより、被害者が被った損害を賠償する義務が発生することです。
③行政手続(行政上の責任)
免許の停止や取消しの処分を受ける責任です。
刑事裁判は国が加害者を法により裁くものですから、ご遺族は当事者とはならず、民事裁判のように関わりません。
しかし、交通事故の実際の状況や加害者がどのような供述をしているのか知りたい、刑事裁判に直接参加してご自身の感情や意見を述べたい、加害者(被告人)に質問したい、と思う方もいます。
その場合は、「被害者参加制度」を利用することができます。
被害者参加制度により、ご遺族は何ができるのか、誰が参加することができるのかなどについては、こちらの動画でわかりやすく解説していますので、ご視聴ください。
民事裁判でご遺族が注意するべきこととは?
示談交渉が進まない、決裂した状態である、といった場合は、民事裁判で解決を図ることができます。
民事裁判は弁護士に依頼することになるので、交通事故の損害賠償実務に精通した弁護士に依頼してください。
なお、民事裁判で重要な証拠になるのが、「実況見分調書」や「供述調書」です。
これらに、被害者側にとって不利なことが書かれてしまうと損害賠償においても不利益を被ることになってしまうので、十分注意していただきたいと思います。
民事裁判で解決する優位点は大きい
交通事故で怪我をされた場合と同様に、死亡事故の示談解決の場合も民事裁判で解決することで、ご遺族がさらなる損害を被ることを防ぐことができます。
なお、裁判にかかる費用や労力などについては、ご遺族が考えておられるほど負担は大きくありません。
亡くなったご家族のためにも、裁判による解決をご検討ください。