交通事故で、被害者は、被った損害を賠償してもらわなければなりません。
そのために、多くの場合、保険会社と示談交渉をしますが、現実問題としては、保険会社は、適正金額より低い金額を提示してきて、交渉しても滅多に増額に応じてくれません。
しかし、弁護士が交渉すると、賠償金が増額することが多くあります。
その理由は、以下のとおりです。
理由1 | 保険会社が営利企業のため |
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理由2 | 被害者では法的強制力がないため |
理由3 | 弁護士には法的強制力があるため |
理由4 | 保険会社が出費を抑えるため |
本記事では、交通事故の示談交渉において、被害者が交渉しても増額しないのに、弁護士が交渉すると増額する理由について解説します。
交通事故の被害者の方、ご遺族の方は、本記事を最後まで読んで、交通事故の示談交渉で決して損をしないようにしてください。
目次
なぜ、交通事故の被害者が弁護士に示談交渉を依頼すると、賠償金額が増額することが多いのでしょうか。
それには理由があります。
しかも、被害者にとっては、とても不合理な理由です。
以下に、その理由について解説していきます。
保険会社は、示談交渉において、適正な金額よりも低い金額を提示してくることが多いのですが、まず、その理由について説明したいと思います。
それは、保険会社が株式会社の場合には、営利企業であるためです。
保険会社が株式会社である場合には、営利企業となります。
営利企業は、売上を増大し、支出を最小化することが求められます。
会社の方針は、経営者が決めますが、経営者を選ぶのは、株主となります。
株主は、自分の利益のために、利益を最大化してくれる経営者を選びます。
そのため、保険会社の経営者としては、利益を大きくするために、支出をなるべく抑えようとします。
支出の中には、交通事故の被害者に対する示談金も含まれますので、保険会社としては、示談金をなるべく低い金額にしようとします。
そのために、保険会社は、交通事故の示談金として、適正な金額ではなく、それよりも低い金額を提示してくるのです。
そして、被害者が、示談金を適正金額にするために、保険会社に譲歩を迫っても、なかなか保険会社は譲歩してくれません。
それも、これまで述べたように、保険会社が営利企業であり、支出をなるべく抑えようとするためです。
では、被害者が保険会社と交渉しても保険会社が譲歩しない理由は、どこにあるのでしょうか。
それは、被害者には法的強制力がないためです。
被害者が、保険会社に対して「示談金額が低すぎるから、もっと増額して欲しい」と要求するとします。
これに対して、保険会社の担当者としては、どう対応するでしょうか。
「被害者から増額の要求をされた。じゃあ、もっと増額しよう」となるでしょうか。
そうはなりません。
安易に示談金を増額していたら、上司の決裁が通らないでしょう。
保険会社の担当者としては、なるべく示談金額を低くしようとするのです。
そのため、被害者に対して、「この金額が限界です」というような対応をします。
理由付けは様々です。
「被害者側にも過失がある」
「収入が減ってないので、逸失利益は認められない」
「慰謝料は裁判なら満額出しますが、示談なので、この金額です」
「既存障害があるから減額します」
そして、一向に増額してくれません。
その時、被害者は強制的な手段を持ちません。
自分で裁判を起こすこともできますが、現実問題としては難しいでしょう。
そうすると、保険会社の担当者としては、「この金額が限界です」と言い続けていれば、示談金を増額する必要がないことになります。
保険会社としては、特に示談が成立しなくても困ることがないからです。
示談が成立しないからといって、金融庁から行政処分を受けることはありません。
なぜなら、それは、業務の怠慢ではなく、被害者との見解の相違であるからです。
このような理由から、被害者が保険会社と示談交渉しても金額が増額しないということです。
これに対して、弁護士が交渉する場合には、賠償金が増額することが多いです。
なぜかと言うと、弁護士の場合には、法的な強制力があるためです。
弁護士が保険会社と交渉する場合、交渉が決裂すると、裁判を起こすことになります。
裁判では、裁判所は、判決において、慰謝料の計算をするのに、最も高額な弁護士基準を用いて計算をします。
そして、判決が出た場合、保険会社が支払いをしないと、強制執行をすることになります。
つまり、弁護士との交渉において、保険会社が、譲歩せず、低い金額のまま交渉していると、強制的に、最も高額な弁護士基準で計算され、強制的に損害賠償金を回収されてしまうということです。
強制的に弁護士基準の計算で賠償金を払わないといけないのであれば、少しでもその金額から減額して示談で終わらせた方が保険会社としては得ということになります。
参考記事:交通事故の裁判をすべき場合の手続と注意点 | メリットとデメリット
さらに、被害者側から弁護士が出てくると、保険会社が賠償金を増額させて示談解決をしようとする理由があります。
それは、保険会社が出費を抑えるためです。
弁護士との示談交渉が決裂し、裁判で判決までいくと、被害者が負担するべき弁護士費用の一部を加害者側に負担させることができます。
これは、賠償金とは別に付加されます。
参考記事:交通事故の弁護士費用の相場と加害者に負担させる方法
さらに、判決では、事故の日から、遅延損害金という利息のものをようなものをつけてくれます。
つまり、本来の賠償金より多く支払いをしなければならない、ということです。
参考記事:【遅延損害金】交通事故の損害賠償金に利息をつけて払ってもらえる?
そして、保険会社側も、裁判を遂行するには、加害者に弁護士をつけなければならず、その弁護士費用も負担しなければなりません。
つまり、弁護士との交渉で譲歩しないと、保険会社の出費が膨らんでしまい、利益を増やすことができなくなってしまうということです。
そうであれば、被害者が弁護士に依頼して弁護士が出てきた場合には、裁判までいかずに、交渉で終わるように、ある程度譲歩して、弁護士基準に近づけた計算で示談をした方が保険会社としては得と言う判断になります。
これが、弁護士が交渉すると、示談金額が増額する理由となります。
被害者としては、不合理だと感じると思いますが、これが現実問題となります。
以上からわかるように、被害者が自分で交渉しても、なかなか増額を引き出すことが難しいことが多いです。
もちろん、中には弁護士基準満額で提示をしてくる場合もありますので、一概にはいえませんが、多くの場合には、保険会社は適正金額より低い金額を提示してきて、被害者が交渉しtめおなかなか増額しないのが現実です。
そのような場合には、被害者は、弁護士費用の負担はあるものの、弁護士への相談・依頼を検討することをおすすめします。
参考記事:交通事故を弁護士に相談・依頼するメリットとデメリット|注意点も解説