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交通事故の脊髄損傷の後遺障害等級と慰謝料増額事例

最終更新日 2026年 06月10日

交通事故の脊髄損傷で慰謝料が大幅アップした事例

交通事故による脊髄損傷(脊損)は、生涯にわたる介護やリハビリを伴うことが多く、被害者やご家族の精神的・経済的負担は計り知れません。

将来の生活を守るためには「適切な後遺障害等級の認定」と「十分な賠償金の獲得」が不可欠ですが、保険会社から提示される金額は不当に低いケースが後を絶ちません

そこで本記事では、後悔しない示談交渉のために知っておくべき以下のポイントを分かりやすく解説します。

大切な将来の不安を解消するための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。

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脊髄損傷とは?

交通事故による脊髄損傷(脊損)は、脊椎椎体の骨折等による「骨傷性脊髄損傷(こっしょうせいせきずいそんしょう)」と、強い衝撃や過伸展・過屈曲により脊髄中心部を損傷する「非骨傷性脊髄損傷」の2種類に分かれます。

それぞれの意味は以下の通りです。

骨傷性(こっしょうせい) 骨折や脱臼など、骨の損傷(傷)が原因であること
脊髄損傷(せきずいそんしょう) 背骨の中を通っている神経(脊髄)がダメージを受けること
非骨傷性脊髄損傷 背骨(脊椎)の骨折や脱臼がないにもかかわらず、中を通っている神経(脊髄)が損傷してしまう状態
骨傷性(こっしょうせい)
骨折や脱臼など、骨の損傷(傷)が原因であること
脊髄損傷(せきずいそんしょう)
背骨の中を通っている神経(脊髄)がダメージを受けること
非骨傷性脊髄損傷
背骨(脊椎)の骨折や脱臼がないにもかかわらず、中を通っている神経(脊髄)が損傷してしまう状態

なお、この非骨傷性脊髄損傷の代表的な類型として、脊髄の中心部が局所的にダメージを受け、足よりも手に強く麻痺が出る「中心性脊髄損傷」という病態があります(※詳しくは後ほど解説します)。

いずれにしても、脊髄が傷つくと、その傷ついた場所から下の部分に、運動障害や感覚障害(麻痺やしびれ)が現れてしまうことが大きな問題となります。

まず、損傷したのがどの部位であっても、脚の感覚とその運動機能に障害が残る傾向にあります。

傷ついた場所が胸の神経(胸髄・きょうずい)より上、つまり首の神経(頸髄・けいずい)であれば、腕や指先、胸やお腹の臓器に障害が及びます。たとえ症状がごく軽いものであったとしても、『洋服のボタンが留めづらい』『手先が思うように動かない』といった後遺症が残ることがあります。

最も重い頚髄の損傷では、寝たきりの状態になる可能性が高く、人工呼吸のための気管の切開で潰瘍や狭窄が起きるケース等の副次的な症状・障害も危惧されます。

そして、脊損はその部位に関わらず、現在運用されている医学的な処置では完治が見込めません

程度に差こそあれ、ほとんどの場合は生涯に渡って介護・介助等を必要とするのが、この診断の特徴です。

脊髄損傷の後遺障害等級認定と
その基準

脊髄損傷のあらゆる事例において、適正な解決を迎えるための最大のポイントとなるのが、審査機関(損害保険料率算出機構)から認定される後遺障害等級です。

なぜなら、最終的に受け取れる慰謝料などの賠償金は、認定されたこの後遺障害等級に応じた「基準額」や、仕事への支障度を表す「労働能力喪失率」をベースに計算されるからです。

脊髄損傷で認定される可能性のある等級は、重い順に1級から12級まであります

国が定める法令(自賠法施行令)の基準を以下に引用しますので、ご自身の症状と照らし合わせてご確認ください。
(各等級をクリックすると、詳しい認定基準を表示します)

後遺障害の
等級
概要
1級1号
(別表1)
神経系統の機能または精神に
著しい障害を残し、
常に介護を要するもの
2級1号
(別表1)
神経系統の機能または精神に
著しい障害を残し、
随時介護を要するもの
3級3号
(別表2)
神経系統の機能または精神に
著しい障害を残し、終身労務に
服することが
できないもの
5級2号
(別表2)
神経系統の機能または精神に
著しい障害を残し、
特に軽易な労務以外の
労務に服することができないもの
7級4号
(別表2)
神経系統の機能または精神に
障害を残し、軽易な労務以外の
労務に服することができないもの
9級10号
(別表2)
神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が
相当な
程度に制限されるもの
12級12号
(別表2)
局部に頑固な神経症状を残すもの

【参考情報】:国土交通省「自賠責後遺障害等級表」

後遺障害等級はどうやって
決まる?

実際の後遺障害等級認定の審査では、医師らで構成される専門部会が、提出された後遺障害診断書などの資料をもとに審査を行います

脊髄損傷の審査では、「麻痺が現れている場所」と「その麻痺の程度」を基準に、日常生活や仕事にどれだけ大きな影響が出ているかが厳しくチェックされます。

なお、適切な等級を勝ち取るためには、CTやMRIによる画像検査だけでなく、神経や筋肉の働きを調べる『神経学的検査(反射テストや手の細かい動きの検査)』や、電気の伝わり方を見る『誘発電位検査(SEP・MEP)』などを組み合わせ、症状の全容を医学的に正しく証明することが極めて重要です。

等級を左右する「麻痺の場所」と「程度」の基準

脊髄損傷の審査では、「麻痺が現れている場所」と「その麻痺の程度」を基準に、日常生活や仕事にどれだけ大きな影響が出ているかが厳しくチェックされます。

これから紹介する等級別の基準(○級○号など)には、「高度の四肢麻痺」や「中等度の対麻痺」といった専門用語が何度も登場します。

ご自身の症状がどこに当てはまるかを正しく理解するために、まずは国が定めている麻痺の場所麻痺の程度の分類(定義)を確認してください。

麻痺が現れる場所の分類

麻痺の分類 麻痺の現れる場所 備考
四肢麻痺
(ししまひ)
両方の上肢(手)と
下肢(足)
および臓器
頚髄を損傷
すると生じる
対麻痺
(たいまひ)
両方の上肢または
両方の下肢
胸髄、腰髄、仙髄、馬尾を損傷すると
生じる
片麻痺
(へんまひ)
片方の上肢と下肢(右半身・左半身)
単麻痺
(たんまひ)
片方の上肢または
片方の下肢

麻痺の程度の分類

麻痺の程度 詳細
高度の麻痺 障害のある上肢または下肢について、運動性・支持性がほとんど失われ、基本動作ができない
(麻痺した手足の機能がほとんど失われ、立つ・歩く・物を掴むなどの基本動作が自力でできない状態)
中等度の麻痺 障害のある上肢または下肢について、運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作がかなり制限されている
(手足の機能がかなり失われ、歩行や日常動作に強い制限(杖や車椅子、他人の手助けなどが必要)がある状態)
軽度の麻痺 障害のある上肢または下肢について、運動性・支持性が多少失われ、基本動作を行う時の巧緻性および速度が相当程度損なわれている
(動作自体はできるものの、筋力や感覚が鈍くなっており、細かい作業(巧緻性)や素早い動きが著しく損なわれている状態)

あなたは何級に当てはまる?
脊髄損傷の後遺障害等級と症状の目安一覧

ここからは、脊髄損傷の後遺障害等級(第1級〜第12級)について、それぞれの認定基準を分かりやすく解説します。

法律上の定義だけでなく、「具体的にどのような麻痺や生活の支障があると、その等級に該当するのか」を等級ごとにまとめました。

ご自身やご家族の症状に該当するクラスがないか、順番にチェックしてみてください。

1級1号

自賠法上の条文では「神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」と定められています。
脊髄損傷において、具体的には以下のような状態が1級1号に該当します。

高度の四肢麻痺
(両手・両足がほとんど動かない)
首(頸髄)の神経を激しく損傷し、寝たきりで自力では手足のコントロールが
一切できない状態
高度の対麻痺
(両足がまったく動かない)
胸や腰の神経を激しく損傷し、下半身が完全に麻痺している状態。
自力で座った姿勢を保つことも難しく、ベッドからの移動も含め、
すべての動作に介護が必要
中等度の四肢麻痺・対麻痺
(重い麻痺があり、常に介護が必要)
手足に少し感覚や動きが残っていたとしても、「食事・入浴・トイレ・着替え」
といった毎日の基本的な動作において、常に他人の手助け(常時介護)が
欠かせない状態
高度の四肢麻痺
(両手・両足がほとんど動かない)
首(頸髄)の神経を激しく損傷し、
寝たきりで自力では手足のコントロールが
一切できない状態
高度の対麻痺
(両足がまったく動かない)
胸や腰の神経を激しく損傷し、下半身が完全に麻痺している状態。
自力で座った姿勢を保つことも難しく、ベッドからの移動も含め、すべての動作に介護が必要
中等度の四肢麻痺・対麻痺
(重い麻痺があり、常に介護が必要)
手足に少し感覚や動きが残っていたとしても、「食事・入浴・トイレ・着替え」といった毎日の基本的な動作において、常に他人の手助け(常時介護)が欠かせない状態

2級1号

別表1の第2級1号「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」と認定される状態です。

具体的には、以下のような後遺症が該当します。

中等度の四肢麻痺(両手・両足の麻痺により、日常動作にかなりの支障がある) 自力で歩くことはできず、車椅子での生活になる。
日常生活の多くの場面で手助けが必要
軽度の四肢麻痺(または中等度の対麻痺)が
あり、食事・入浴・用便・更衣等について
随時介護を要するもの
手足(または下半身)に少し動きは残っているものの、
「食事・入浴・トイレ・着替え」のいずれかで、必要なときに
他人の手助け(随時介護)が欠かせない状態
中等度の四肢麻痺(両手・両足の麻痺により、日常動作にかなりの支障がある)
自力で歩くことはできず、車椅子での生活に
なる。日常生活の多くの場面で手助けが必要
軽度の四肢麻痺(または中等度の対麻痺)が
あり、食事・入浴・用便・更衣等について
随時介護を要するもの
手足(または下半身)に少し動きは残っているものの、「食事・入浴・トイレ・着替え」の
いずれかで、必要なときに他人の手助け
(随時介護)が欠かせない状態

3級3号

別表2の第3級3号「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができない(生涯、働くことができない)もの」に認定される脊髄損傷の後遺症とは、以下のようなものです。

・軽度の四肢麻痺が認められるものであって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの 
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの

1級や2級のように「他人の介護」までは必要としませんが、麻痺のために仕事に復帰することは不可能なケースが該当します。

5級2号

別表2の第5級2号「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務(ごく軽い事務作業など)以外の労務に服することができないもの」に認定される脊髄損傷の後遺症とは、以下のようなものです。

・軽度の対麻痺(下半身の軽度の麻痺)

両足にしびれや麻痺があり、杖なしでの歩行が難しい、または長距離を歩けないため、立ち仕事や肉体労働ができない状態

・一下肢の高度の単麻痺

「単麻痺(たんまひ)」とは片方の手足だけが麻痺すること。片方の足が完全に麻痺し、引きずるようにしか動かせないような重い状態

7級4号

別表2の第7級4号には、等級表の5級2号と比べてやや軽度のものが該当しますが、一般の仕事を行うには明らかな制限がある状態です。

具体的には、以下のような症状です。

・一下肢の中等度の単麻痺
片方の足の筋力が著しく低下している、または感覚が麻痺しており、歩行や階段の上り下りに強い支障が出ている状態

9級10号

別表2の第9級10号は、7級4号よりさらに軽度であるものの、「就くことができる仕事の種類が相当制限される」症状が認定されます。

具体的には、以下のようなものです。

・一下肢の軽度の単麻痺 
片方の足に麻痺が残っており、つま先が上がりにくく躓きやすい、あるいは足をスムーズに動かせないため、移動を伴う仕事などに支障が出る状態

12級12号

別表2の第12級12号「局部に頑固な神経症状を残すもの」には、以下のようなものが当てはまります。
麻痺としては最も軽微なクラスです。

・運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
歩く・走る・手先を使うといった動作自体は問題なくできるものの、本人にしか分からないレベルで「力が入りにくい」「動作がワンテンポ遅れる」といった支障が残っている状態

・運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの
足は問題なく動かせるものの、太ももやふくらはぎなどの広い範囲で「触られた感覚がない」「お湯を当てても熱さを感じない」といった知覚麻痺が残っている状態

自賠責後遺障害等級認定について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

脊髄損傷における後遺障害慰謝料の目安

ここでは、脊髄損傷における後遺障害慰謝料の目安を解説します。

脊髄損傷の損害賠償金で、特に高額になるのが「後遺障害慰謝料」と「逸失利益(いっしつりえき)・・・失われた将来の収入」の2点です。

ここで非常に重要なのが、賠償金を計算する「基準」の違いです。

法律上の最低限度の補償である「自賠責基準」の金額は、被害者の方が本来受け取るべき適正な金額(=弁護士基準)と比べると、驚くほど低く抑えられているのが実情です。

下の比較表をご覧いただくと分かる通り、どの等級であっても、弁護士が交渉することで適用される「弁護士基準」の金額の方が圧倒的に高額になります

後遺障害
等級
自賠責基準の
慰謝料
弁護士基準の
慰謝料
1級1号 1,650万円
(1,850万円)
2,800万円
2級1号 1,203万円
(1,373万円)
2,370万円
3級3号 861万円
(1,005万円)
1,990万円
5級2号 618万円 1,400万円
7級4号 419万円 1,000万円
9級10号 249万円 690万円
12級12号 94万円 290万円
※自賠責基準の慰謝料に記載したカッコ内の金額は、被害者に被扶養者がいる場合の金額です。

なお、被害者本人についての後遺障害慰謝料と逸失利益は損害賠償全体のほんの一部にすぎません

脊髄損傷のような重い後遺症が残った場合、以下のような費用も請求できます。

近親者慰謝料 支えるご家族の精神的苦痛に対する慰謝料
将来の
介護費用
今後ケアしていくための介護費用や車椅子などの器具代
家屋・自動車の改造費 バリアフリー化のための自宅の
リフォーム代など

脊髄損傷事案に特有と思われる請求できる損害項目

慰謝料や逸失利益のほかにも、脊髄損傷の重い後遺障害が残った場合、以下のような実費(積極損害)を請求できます。

ここでは、脊髄損傷事案に特有と思われる以下の損害項目について解説します。

車椅子代

一般的には、脊髄損傷において、腰髄以上で損傷がなされた場合には、両下肢の対麻痺が生じ、車椅子が必要となります。

過去の裁判例においては、脊髄損傷による後遺障害において、現実に車椅子を使っているのか、使っているとすれば何台の車椅子をどのように使っているのか立証し、室内用と屋外用の2台の車椅子など複数の車椅子の費用を認めているものがあります(大阪地判平成19年7月26日、名古屋地判平成18年8月29日、千葉地佐倉支部判平成18年11月29日、名古屋地判平成17年10月4日等)

介護ベッド、マットレス等

布団ではなくベッドにすることにより、介護動作が容易になります。

さらに電動ベッドであれば、高さ調整やギャッチアップ等により、座位体勢の保持・変換動作や起居・移乗動作等も容易になることから、下肢麻痺があれば通常認められます

また、褥瘡予防のために特殊マットレスや体位変換用具等も必要性があれば認められます。

自宅改造費等

脊髄損傷による後遺障害によって生じる被害者の日常生活上の困難をできるかぎり回避するために建物を改築あるいは新築したり、移動に便利なように設備を設置する必要が生ずることが多いです。

その場合、現実に改築、購入するのに必要な費用(支出した費用)がそのまま損害額になることもありますが(大阪地判平成19年12月10日、千葉地佐倉支部判平成18年11月29日、さいたま地判平成17年6月17日等)、その改造の必要性、支出額の相当性、さらには被害者以外の家族も改築などによって利益を得ている場合などが問題となることもあり、現実の費用額の一部に限定して損害賠償を認める裁判例(被害者側がもともと現実の費用の一部を損害として主張していることもある)も多いです(名古屋地判平成20年12月2日、東京地判平成17年10月27日、大阪地判平成17年9月21日、さいたま地判平成16年1月14日等)

自宅改造に関する費用として裁判例上認められたものとしては、

  • ・玄関電動引き戸システム、センサー付照明(名古屋地判平成20年12月2日)
  • ・玄関、ホール、洗面所、ユニットバスの拡大、幅広建具の設置、段差の解消、昇降機取付費用(名古屋地判平成20年1月29日)
  • ・身体障害者用のトイレ、浴室、天井走行リフト、昇降リフト、電動シャッター、換気扇等の換気設備等の設置費用に加え、身体障害者用トイレに設置されたウレタン製台座、電動シャッター、天井走行リフト、昇降リフト、換気扇等の換気設備の将来の交換費用(さいたま地判平成17年6月17日)

などがあります。

車両購入・改造費

脊髄損傷者が自立した生活を営む上では、移動手段の確保が重要になります。

上肢のみで自動車の運転ができるように車両を改造したり、あるいは車椅子のまま乗れる自動車が必要になります。自動車についても、家屋と同様、他の家族も乗るような場合には、その家族の利便性を考えて車両購入費の一部のみを損害とする場合もあります。

将来の雑費

脊髄損傷のように重度の後遺障害が残った場合には、紙おむつ等の衛生用品が継続的に必要となることが多く、将来の雑費として認められるものがあります。

しかし、将来の雑費の算定においては、健常人の日常生活においても必要とされる食費、日用品購入等については、生活費として考慮されるべきものであり、損害賠償の対象となる雑費としては認められないものもあります。

また、将来の雑費として請求するものが、将来の治療費や介護費用に含まれるものであれば、二重に請求していることになるため認められないこととなります。

認定された将来雑費については、日額1,000円(名古屋地判平成20年12月2日)あるいは1,500円(東京地判平成20年1月30日)程度として計算するものと、より細かく個々の費用を分析して算出しているもの(名古屋地判平成20年1月29日、痰を切るために使用する器具のレンタル費用とその他のおむつ、ガーゼ等の介護用品を分けて算出)とに分かれます。

一般的には、現在の介護状態が続くのであれば、実際にかかっている費用を具体的に主張・立証することが不可欠です。

なお、裁判例上認められた雑費としては、

・摘便用手袋、落とし紙、ベビーオイル、ティッシュペーパー、特殊箸、特殊フォーク(大阪地判平成19年7月26日)

・カテーテルやその消毒器具、冷却シート(千葉地佐倉支部判平成18年11月29日)

・人工導尿のために、ネラトンカテーテル、セルフカテーテルセット、オールシリコンバルーンカテーテル、レッグパック、排尿袋であるハイポット、コンビーン、集尿袋であるユーローズバック、医療用粘着テープ、ゴム手袋(東京地判平成17年10月27日)

・尿器、プラスチック手袋、ヒビスコール、濡れティッシュ、おむつ拭きティッシュ、チューブクリップ、リハビリのためのプライムウオーク用靴(名古屋地判平成17年10月4日)

などの費用があります。

しかし、加害者側の保険会社は、後遺症の重さや将来の負担を低く見積もり、賠償金をできるだけ少なく抑えようとする傾向があります。

当然、相手の主張する額をそのまま受け入れてしまえば、被害者とその家族の将来に長く深刻な悪影響を残すでしょう。

この点を踏まえ、増額できる部分はしっかり資料を揃えて主張し、粘り強く交渉しなければなりません

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交通事故の慰謝料について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

脊髄損傷の裁判を有利に進めるには?知っておくべき主要な争点

脊髄損傷は、被害者の方のその後の人生やご家族の生活に極めて重大な影響を及ぼす後遺障害です。

そのため、損害賠償をめぐる裁判では、請求できる金額が非常に高額になることから、相手方(保険会社)からも激しい反論がなされる傾向にあります。

裁判において正当な賠償金を獲得するためには、どのようなポイントが議論の中心になるのか(争点となるのか)をあらかじめ把握しておくことが重要です。

典型的な症状や所見との違い

交通事故で脊髄(背骨の中にある神経の束)を完全に損傷すると、傷ついた場所から下の神経が麻痺し、重い後遺障害が残ってしまいます。

事故直後に骨折や脱臼があり、MRIなどの画像にも神経の損傷がはっきりと写っている場合は、事故との因果関係が認められやすく、重大な後遺障害等級(3級以上など)が認定される可能性が高くなります。

しかし実務でよく問題になるのは、画像上は骨折や目立った異常が見当たらないケースです。

この場合、加害者側は「そもそも本当に脊髄損傷なのか?」と存在そのものを疑ってきます。

そのため裁判などでは、画像以外の「神経の異常を示す客観的なデータや事実」をどれだけ集められるかが、結果を分ける重要なポイントとなります。

脊髄損傷の存否が争点となる
場合

交通事故などで「本当に脊髄損傷があるのか」が争われる場合、その判断を左右する要素は主に次の3点です。

1つずつ詳しく解説します。

事故の態様が脊髄を損傷するほどの
規模のものであったか

そもそも事故の規模が、脊髄を損傷するほどのものであったかが問われます。

軽微な事故であるならば、脊髄を損傷するような衝撃は加わっていないと主張される(争われる)ケースが多いからです。

被害者に現れている症状と通常の脊髄損傷によって生じうる症状との異同

被害者に見られる症状が、一般的な脊髄損傷の症例と一致するかどうかも重要です。

通常想定される症状と異なる場合、そもそも脊髄損傷が生じているのかが疑問視されるためです。

医学上、脊髄を損傷すると受傷直後から上下肢の麻痺(手足が全く動かない、あるいは動かしにくい状態)などの症状が生じるのが一般的です。

そのため、診断書に脊髄損傷とあっても、特有の症状が事故後しばらくしてから現れたり(遅発)、時間の経過とともに悪化していったりしたような場合には、その「症状の遅発・悪化」を理由に脊髄損傷の存否が激しく争われることになります。

既往症の存在

事故後に痺れなどの症状が出ても、それが事故前の持病(既往症)によるものかどうかが争われます。

既往症の影響も含めて脊髄損傷の発症が認められるケースがある一方で、「脊髄損傷自体は生じておらず、痺れは事故の衝撃によって既往症が悪化したことによる神経症状にすぎない」として、事故と後遺障害との因果関係(範囲)が争点になるケースもあるためです。

争点になりやすい「不全損傷」とは

前述した「典型的な症状との違い」や「存否の争い」において、実務上最も議論の対象となりやすいのが「不全損傷」の事案です。

脊髄損傷の症状は、脊髄全横断面にわたって神経回路が断絶した完全麻痺(損傷)と、一部でも保たれた不完全麻痺(損傷)に分類されます。したがって、不全損傷とは、文字どおり脊髄を完全には損傷しなかった場合を示します。

完全損傷とは異なり、画像診断や症状の現れ方に個別性が高いことにより裁判での立証には特有の難しさがあるため、この場合に、どのような条件が揃えば不全損傷として、脊髄の損傷が認められるかが問題となります。

不全損傷の場合には、神経が完全には断裂していないため、知覚や運動が完全に消失する「完全損傷」とは異なります。損傷の部位・程度・形態等によって、現れる症状の有無や程度には広範囲の差異(個別性)が生じるのが特徴です。

例えば頸髄損傷において、骨折や脱臼(いわゆる骨傷)を伴う場合は完全損傷に至ることが多く、その場合は受傷高位に応じて後遺障害等級として通常3級以上が認定されます。

他方で、骨折や脱臼を伴わない(画像上、明らかな骨傷がない)頸髄損傷の場合は不全損傷にとどまることが多く、麻痺等の後遺障害が生じた際には、その範囲や程度によって9級をはじめとする各種等級への該当性が検討されることになります。

単なるむちうちと主張される
ことが多い中心性脊髄損傷とは

不全損傷にはいくつか類型がありますが、その中でも、最も脊髄損傷の存否が問題となることが多いものが中心性脊髄損傷と呼ばれる傷病です。

中心性脊髄損傷とは、脊髄の辺縁に存在する索路(白質)よりも中心部にある髄節(灰白質)が主に損傷される障害とされ、脱臼や骨折を認めない非骨傷性頸髄損傷に多く認められます。

中心性脊髄損傷の主要な症状としては、下肢よりも上肢(手)に麻痺が強く出る点に特徴があります。

通常の脊髄損傷では、上肢の麻痺は下肢の麻痺と同一もしくはそれ以下になることが多いです。

なぜなら、前述のように、脊髄の神経は外側が下肢で中心が上肢につながっているところ、交通外傷では外側がもっともダメージを受けるため下肢の麻痺がひどくなることが一般的だからです。

しかし、中心性脊髄損傷では、逆の症状となるところに特徴があります。

中心性脊髄損傷は「骨折などの明らかな骨の異常がない」ケースが大半を占めるため、相手方から「単なるむちうち(頸椎捻挫)であり、脊髄損傷などは生じていない」と主張されやすいという背景があります。

だからこそ、裁判においては「上肢に強く麻痺が出ている」という中心性脊髄損傷特有の典型的な症状(臨床所見)が受傷直後から一貫して存在していること、およびそれを裏付ける神経学的検査の結果(他覚的所見)を的確に証明できるかどうかが、脊髄損傷の存否(成否)を分ける最大の鍵となります。

脊髄損傷の損害賠償額を増額する時のポイント

それでは、脊髄損傷の損害賠償額を増額するにはどうしたら良いのでしょうか?

ここでは、以下2点について詳しく解説します。

将来介護費用を適切に立証する

脊髄損傷の損害賠償には高額化する費目が複数含まれますが、なかでも事案によって金額の差が非常に大きい「将来介護費用」は、裁判でも特に激しく争われやすいポイントです。

将来介護費用とは、交通事故被害者が今後必要とする介護および付添にかかる費用を言います

支払われるべき金額の計算では、まず1日あたりの費用(日額)の見積もらなくてはなりません。

見積もった介護日額に被害者の生存可能年数を掛け、そこから将来の利息分(中間利息)を差し引いた金額が、被害者側が受け取るべき妥当な賠償額となります。

なお、生存可能年数は、被害者の年齢を厚労省の最新統計※に当てはめて判断します。

将来介護費の相場は、近親者であれば
日額8,000円
です。

ただ、上記金額は目安に過ぎません。どの被害者についても、当面実施する介護等の内容(拘束時間や頻度含む)と共に、下記要素も総合的に勘案して判断されるべきものだからです。

  • ・職業介護人(ヘルパー等)の必要性とその程度
  • ・常時介護や随時介護を必要とするか
  • ・被害者をケアする近親者の状況※、人数
  • ・将来において想定されるケア内容の変化

※年齢、介護等による収入への影響、持病等

職業介護人による介護の場合は、実費となりますが、この実費が訴訟で激しく争われますので、適切に立証していくことが大切です。

難しいのは、将来介護費の算定の根拠の立証です。

等級認定の申請で提出する「日常生活状況報告書」や、介護サービス利用時の領収書等だけだと、被害者ケアの実態はなかなか伝わりません。

そこで慰謝料増額の交渉では、過去に訴訟になった例等に基づいて、柔軟かつ丁寧な証拠収集が必要になります。

将来介護費用に関する裁判例

参考までに、訴訟で解決できたケースの代表例で、弁護士が損害賠償金を算定するための指標とされているものを紹介します。
(クリックすると詳細を表示します)

1級1号で日額1万8,000円が認められた
判例
被害者(48歳男性)が、頚髄損傷による四肢麻痺(別表1の1級1号)を負い、症状固定から約3年後に退院して在宅介護へ移行したケースです。

まず、常時介護を要し、職業付添人と妻による介護を平行する必要性および相当性があると認められました。

その上で、精神科受診中の妻による介護の範囲が時間経過と共に広くなっていること、介護サービスの現在の利用状況等と利用料が変化する可能性があることを考慮し、職業付添人と親族によるものを併せて日額1万8,000円平均余命まで合計8,724万円が認められています。(大阪地裁平成28年8月29日)


3級3号で日額5,000円が認められた判例
被害者(67歳主婦)が、第5頚髄損傷による軽度四肢麻痺(3級3号)を負ったケースです。

入浴の全てとボタンのある衣服の着脱に介助を要し、食事等の一応自立とされている日常生活動作についても左手自助具を使用しての自立に留まることから、「随時介護が必要な状態に近い」として日額5,000円、合計2,133万円余が認められました。(名古屋地裁平成23年10月14日)

将来介護費用について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

慰謝料の増額事由や近親者慰謝料を主張する

脊髄損傷のように、被害者が重度の傷害を負った場合には、近親者にも固有の慰謝料が認められることがあります。

近親者固有の慰謝料とは、被害者本人が受け取る慰謝料とは別に、被害者の家族など近しい人が、自分自身の精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。被害者本人の慰謝料とは別枠で認められるため、これが認められれば、その分だけ賠償額の総額が上乗せされることになります。

近親者固有の慰謝料は、「死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けた」ときに請求しうる(最判昭和33年8月5日)とされています。

つまり、「家族を亡くしてしまった時と同等、あるいはそれ以上に過酷な精神的ショックを受けた場合」にのみ認められるという意味であり、非常に高いハードルが設けられています。

脊髄損傷は、麻痺などにより常時介護が必要となるなど、重度の後遺障害が残ることが少なくありません。
そのため、上記の「死亡にも比肩しうる精神的苦痛」が認められやすい類型といえ、近親者慰謝料を積極的に主張する余地があります

実際に主張する際は、次のような点を具体的に示していくことが重要です。

  • ・被害者の後遺障害がどれほど重いか
    (後遺障害等級、介護の必要性の程度など)
  • ・近親者が負っている精神的・身体的負担
  • ・被害者と近親者の緊密な関係性

これらを後遺障害等級認定の資料や介護の実態がわかる資料などで裏づけることで、近親者固有の慰謝料が認められる可能性が高まり、結果として賠償額全体の増額につながりやすくなります。

それでは、過去の裁判例で、脊髄損傷において近親者慰謝料を認めたものをご紹介します。

29歳男性の交通事故です。

後遺障害は、第3胸椎以下の完全対麻痺、自律神経障害の強い残存(体幹・下肢の疼痛著明)、直腸・膀胱障害で、自賠責後遺障害等級1級1号が認定されました。

状況としては、被害者は本件事故により第3、4胸椎破裂骨折等の傷害を負い、上記後遺障害が残りました。

上半身を利用した日常生活動作は可能でしたが、胸より下の部分は、麻痺状態にあり、上半身の動作に係る作業を独力で行うには相当の努力と時間を要し、妻の補助を必要とする場合も多い状況でした。

そして、食事の用意、入浴、着替えのいずれについてもその一部又はほとんどに妻の介助を必要としていました。

就寝中にも3時間程度ごとに体位変換をする必要があり、体位を変換するため、妻も起床して介助していました。

裁判所は、被害者本人に対する後遺障害慰謝料としては、慰謝料の相場金額である2,800万円を認めた上で、妻の近親者慰謝料として100万円、娘の近親者慰謝料として50万円の合計150万円の近親者慰謝料を認めました。東京地判平成20年5月8日(自保ジャーナル第1748号)

近親者慰謝料について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

脊髄損傷で慰謝料を相場より
増額した裁判例

交通事故で後遺症が残った場合には、後遺症部分について慰謝料請求をすることができます。そして、後遺症慰謝料については、一応の相場の金額があります。

しかし、事情によっては、慰謝料の相場が増額される場合があります

そのような事情がある場合には、被害者側で積極的に慰謝料増額の主張をしていく必要があります

そこで、ここでは、過去の裁判例で、慰謝料を相場より増額した事例をご紹介します。

32歳の男性が、交通事故で胸髄損傷による両下肢完全麻痺等で自賠責後遺障害等級1級1号が認定された事案です。

裁判所は、

  • ・事故が加害者のあおり行為に起因すること
  • ・日々の自己導尿の際に座薬、消炎剤等の薬剤を将来的にも使用すること

などから、慰謝料の相場金額2,800万円のところ、本人分3,000万円、父母合計800万円の合計3,800万円を認めました(さいたま地裁平成22年9月27日判決、交民43巻5号1232頁)。

賠償金が数倍になることも!?
増額した実例

交通事故の賠償金は、過去の裁判例(弁護士基準)を適用して交渉を進めることで、増額する可能性があります。

「弁護士が介入したことで、いくら変わったのか」という疑問にお答えするため、交通事故で脊髄損傷になってしまい、みらい総合法律事務所にご相談いただいたことで賠償金が大幅にアップした実例をご紹介します。

1億3,200万円を獲得した
実例

被害者(66歳男性)が自転車で交差点を進行したところ、右折自動車にはねられた事故です。

この事故で負った脊髄損傷により、被害者の身体には四肢麻痺の後遺症が残り、寝たきりの状態(後遺障害等級1級)になってしまいました。

保険会社との交渉では、将来治療費・将来介護費・将来介護器具等の費用、さらに慰謝料が争点となりました。

訴訟の結果、1億3,200万円の支払いを条件に和解しています。

約9,000万円増額した実例

被害者(50歳男性)が、交通事故による脊髄損傷で寝たきりの状態(後遺障害等級1級)になり、生涯介護を要することとなった事例です。

保険会社は当初、損害賠償として1億558万円2,694円の支払いを提示していました。

ご家族ではなく弁護士が示談交渉に臨んだ結果、1億9,300万円(約9,000万円増額)の獲得に成功しています。

約2億円増額した実例

被害者(46歳男性)が交通事故で頚髄損傷の傷害を負い、四肢麻痺の後遺症で後遺障害等級1級に認定された事例です。

保険会社は当初、既払分を除いて7,800万円の支払いを提示していました。

弁護士が交渉に臨んだところ、2億7,664万2,032円(約2億円増額)の支払いで合意できています。

慰謝料算定や交渉の方法を知らないまま合意していれば、多額の損失になっていたところでした。

後遺障害等級併合10級で
約1,400万円増額した実例

被害者(40歳男性)が、頚髄不全損傷・頚髄骨折・胸椎圧迫骨折・頭部打撲症等と複数の部位に傷害を負い、後遺症について併合10級の等級認定を得た事例です。

被害者加入の人身傷害保険特約から145万4,120円の支払いがあったものの、加害者側の保険会社は「被害者の過失が大きい」として支払いを拒否しました。

弁護士が増額の可能性を指摘し、保険会社と交渉した結果、1,599万1,542円
(約1,400万円増額)
の獲得に成功しています。

この事例では、逸失利益が主な争点となりました。

【参考記事】
みらい総合法律事務所の解決実績はこちら

まとめ

交通事故で脊髄損傷を負ったケースでは、被害者本人と近親者についての慰謝料、逸失利益、生存可能年数に応じた介護にかかる費用等の「将来についての費目」が高額化します。

一方で、支払いの多寡を気にする加害者は、主観的かつ著しく低い金額で示談を成立させようとしがちです。

日常の基本的な動作がほとんど出来なくなる、回復の見込みもほぼない……こういった後遺症の重さに見合う金額を獲得するには、弁護士基準で正確に算定した上で、客観的な後遺症の状況を着実に立証しなければなりません。

本記事で紹介した事例は、全てみらい総合法律事務所での解決事例です。

弊社では、「実際に弁護士の前で介護してもらう」「その状況を写真や動画に収める」等の丁寧な立証作業と並行し、被害者の将来を最優先にした粘り強い交渉を行っています。

交通事故によって生じた深刻な被害は、家庭で抱え込みすぎることなく、すぐに弁護士に相談しましょう。

みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。

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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠
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