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交通事故の脊髄損傷で慰謝料が大幅アップした事例

最終更新日 2021年 06月08日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

交通事故の脊髄損傷で慰謝料が大幅アップした事例脊髄損傷(脊損)は交通事故で負う傷害の中で重い部類に属し、生涯に渡って介護・介助を必要とする後遺症に苦しめられがちです。

被害者については適切な慰謝料・逸失利益・将来介護費用等を含む十分な支払いが行われるべきですが、残念ながら、加害者が提示する金額は低くなる傾向にあると言わざるを得ません。

そのため、主張すべき点は毅然と主張し、丁寧な立証を重ねて交渉する必要性がますます高まります。

示談交渉で簡単に納得せず、十分な金額の獲得しようとする行動は、事故被害者の将来における不安を解消するための第一歩です。

本記事では、脊損の予後と慰謝料増額の実例を紹介した上で、等級認定や示談交渉のポイントを紹介します。

【動画解説】   交通事故の脊髄損傷の示談交渉のポイント

脊髄損傷の症状

交通事故による脊髄損傷(脊損)は、脊椎椎体の骨折等による「骨傷性脊髄損傷」と、強い衝撃や過伸展・過屈曲により脊髄中心部を損傷する「非骨傷性脊髄損傷」の2種類に分かれます。

いずれにしても、脊髄が傷つくと、損傷髄節がつかさどる部位より下に運動障害や感覚障害が現れるのが問題です。

まず、損傷したのがどの部位であっても、脚の感覚とその運動機能に障害が残る傾向にあります。

損傷部位が胸髄より上であれば、腕・手指・胸腹部臓器に機能に問題を残し、幸いごく軽いものであっても「洋服のボタンが留めづらい」等の症状が残存します。

最も重い頚髄の損傷では、寝たきりの状態になる可能性が高く、人工呼吸のための気管の切開で潰瘍や狭窄が起きるケース等の副次的な症状・障害も危惧されます。

そして、脊損はその部位に関わらず、現在運用されている医学的な処置では完治が見込めません。

程度に差こそあれ、ほとんどの場合は生涯に渡って介護・介助等を必要とするのが、この診断の特徴です。

【参考記事】
「脊髄損傷」公益社団法人日本整形外科学会

保険会社提示の慰謝料が低くなりやすい理由

交通事故で脊髄損傷と診断された場合、以上のような後遺症の特徴を受け、被害者に支払われるべき慰謝料等は高額化します。

そのため、負担を極力減らしたいと考える加害者側の保険会社は、判例等を踏まえて作成された「弁護士基準」の算定額より著しく低い金額を提示することがあります。

また、金額の差が大きい分、提示額を適正額(弁護士基準による算定額)に修正するための交渉は難航します。

結果、少なくない数の事故例が訴訟に発展し、代理弁護士による主張と丁寧な立証がますます重要性を帯びることになります。

以降では、弁護士が解決した4つの事例を元に、交渉して得られる交通事故慰謝料の多寡を確認してみましょう。

【動画解説】なぜ、交通事故の示談金は弁護士が代理すると増額することが多いのか?(不合理な真実)

【事例1】後遺障害等級1級で1億3200万円獲得できた例

被害者(66歳男性)が自転車で交差点を進行したところ、右折自動車にはねられた事故です。

この事故で負った脊髄損傷により、被害者の身体には四肢麻痺の後遺症が残り、寝たきりの状態(後遺障害等級1級)になってしまいました。

保険会社との交渉では、将来治療費・将来介護費・将来介護器具等の費用、さらに慰謝料が争点となりました。

訴訟の結果、1億3200万円の支払いを条件に和解しています。

【事例2】後遺障害等級1級で約9000万円の増額に成功した例

被害者(50歳男性)が、交通事故による脊髄損傷で寝たきりの状態(後遺障害等級1級)になり、生涯介護を要することとなった事例です。

保険会社は当初、損害賠償として1億558万円2694円の支払いを提示していました。

ご家族ではなく弁護士が示談交渉に臨んだ結果、1億9300万円(約9,000万円増額)の獲得に成功しています。

【事例3】後遺障害等級1級で約2億円の増額に成功した例

被害者(46歳男性)が交通事故で頚髄損傷の傷害を負い、四肢麻痺の後遺症で後遺障害等級1級に認定された事例です。

保険会社は当初、既払分を除いて7800万円の支払いを提示していました。

弁護士が交渉に臨んだところ、2億7664万2032円(約2億円増額)の支払いで合意できています。

慰謝料算定や交渉の方法を知らないまま合意していれば、多額の損失になっていたところでした。

【事例4】後遺障害等級併合10級で約1400万円増額できた例

被害者(40歳男性)が、頚髄不全損傷・頚髄骨折・胸椎圧迫骨折・頭部打撲症等と複数の部位に傷害を負い、後遺症について併合10級の等級認定を得た事例です。

被害者加入の人身傷害保険特約から145万4120円の支払いがあったものの、加害者側の保険会社は「被害者の過失が大きい」として支払いを拒否しました。

弁護士が増額の可能性を指摘し、保険会社と交渉した結果、1599万1542円(約1400万円増額)の獲得に成功しています。

この事例では、逸失利益が主な争点となりました。

【参考記事】
みらい総合法律事務所の解決実績はこちら

脊髄損傷の後遺障害等級認定とその基準

脊髄損傷のどの事例であっても、損害保険料率算出機構が認定する後遺障害の等級が解決の要です。

慰謝料等の算定のベースとして、獲得した等級に対応する「慰謝料の基準額」と「労働能力喪失度」を用いるためです。

なお、脊髄損傷で認定される可能性のある等級は、症状の重い順に1級から12級まであります。下記表では、自賠法施行令の別表1・別表2から認定基準を引用します。

後遺障害の
等級
概要
1級1号
(別表1)
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級1号
(別表1)
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級3号
(別表2)
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級2号
(別表2)
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級4号
(別表2)
神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級10号
(別表2)
神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12級12号
(別表2)
局部に頑固な神経症状を残すもの

後遺障害等級の認定基準

個別の等級認定では、医師等から成る専門部会が、申請時に提出した資料(後遺障害診断書等)から審査します。

この際、脊髄損傷の後遺障害等級認定では、「麻痺が現れる場所」「麻痺の程度」を基準として、日常生活や労働への影響が推し量られます(詳しくは下記表の通り)。

なお、主治医による診断は、CTやMRI撮影で得られた画像がベースです。

これに反射テストや手指巧緻運動検査といった神経学的検査、さらにSEPやMEPといった電気生物学的検査を組み合わせることで、症状の全容を医学的に把握できます。

麻痺の分類麻痺の現れる場所備考
四肢麻痺両方の上肢と下肢および臓器頚髄を損傷すると生じる
対麻痺両方の上肢または両方の下肢胸髄、腰髄、仙髄、馬尾を損傷すると生じる
片麻痺片方の上肢と下肢
単麻痺片方の上肢または片方の下肢
麻痺の程度詳細
高度の麻痺障害のある上肢または下肢について、運動性・支持性がほとんど失われ、基本動作ができない
中等度の麻痺障害のある上肢または下肢について、運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作がかなり制限されている
軽度の麻痺障害のある上肢または下肢について、運動性・支持性が多少失われ、基本動作を行う時の巧緻性および速度が相当程度損なわれている

以降で紹介するのは、等級別の詳しい認定基準です。

1級1号

別表1の第1級1号「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に認定される脊髄損傷の後遺症とは、以下のようなものです。

・高度の四肢麻痺 
・高度の対麻痺 
・中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの 
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの 

2級1号

別表1の第2級1号「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」に認定される脊髄損傷の後遺症とは、以下のようなものです。

・中等度の四肢麻痺が認められるもの 
・軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの 
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

3級3号

別表2の第3級3号「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」に認定される脊髄損傷の後遺症とは、以下のようなものです。

・軽度の四肢麻痺が認められるものであって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの 
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの
 

5級2号

別表2の第5級2号「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に認定される脊髄損傷の後遺症とは、以下のようなものです。

・軽度の対麻痺 
・一下肢の高度の単麻痺 

7級4号

別表2の第7級4号には、等級表の5級2号と比べてやや軽度のものが該当します。具体的には、以下のような症状です。

・一下肢の中等度の単麻痺 

9級10号

別表2の第9級10号は、7級4号よりさらに軽度であるものの、「服することができる労務が相当な程度に制限される」症状が認定されます。

具体的には、以下のようなものです。

・一下肢の軽度の単麻痺 

12級12号

別表2の第12級12号「局部に頑固な神経症状を残すもの」には、以下のようなものが当てはまります。

・運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの 
・運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの 

脊髄損傷における後遺障害慰謝料の目安

脊髄損傷を負った被害者に対する損害賠償は、精神的苦痛に対応する「後遺障害慰謝料」と失われた労働能力に対する「逸失利益」の2点が中心です。

下記表で比較する通り、被害者に本来支払われるべき額に比べれば、国土交通省の告示で決められた補償の最低限度(=自賠責基準)はごくわずかだと言わざるを得ません。

後遺障害
等級
自賠責基準の慰謝料弁護士基準の慰謝料労働能力喪失度
1級1号1650万円
(1850
万円)
2800万円100%
2級1号1203万円
(1373
万円)
2370万円100%
3級3号861万円
(1005
万円)
1990万円100%
5級2号618万円1400万円79%
7級4号419万円1000万円56%
9級
10号
249万円690万円35%
12級
12号
94万円290万円14%

※自賠責基準の慰謝料に記載したカッコ内の金額は、被害者に被扶養者がいる場合の金額です。

なお、被害者本人についての後遺障害慰謝料と逸失利益は、一般に「交通事故の慰謝料」と呼ばれる損害賠償の費目の一部に過ぎません。

他にも、後遺症が重ければ「近親者の慰謝料」を請求できます。

これに加え、被害者を今後ケアしていくための器具や家屋改造費等も、損害賠償の費目として当然請求できます。

対する加害者は、脊損による後遺症の重さ、回復の見込みの薄さを軽視する傾向にあります。

被害者について将来生じる負担を過少評価し、慰謝料・逸失利益を含めて様々な費目を少なく見積もろうとするのです。

当然、相手の主張する額をそのまま受け入れてしまえば、被害者とその家族の将来に長く深刻な悪影響を残すでしょう。

この点を踏まえ、増額できる部分はしっかり資料を揃えて主張し、粘り強く交渉しなければなりません。

【参考情報】国土交通省「自賠責後遺障害等級表」

脊髄損傷の慰謝料を増額する時のポイント

脊髄損傷の損害賠償には高額化する費目が複数含まれますが、なかでもケースによって差の大きい「将来介護費用」は、争点になりやすいポイントです。
さらに言うと、近親者介護のケースでは、双方の主張が真っ向から対立する傾向にあります。

・将来介護費用とは

交通事故被害者が今後必要とする介護および付添にかかる費用を言います。

支払われるべき金額の計算では、まず1日あたりの費用(日額)の見積もらなくてはなりません。

見積もった日額に被害者の生存可能年数を乗じ、次に中間利息を控除した分が、被害者がもらうべき金額となります。

なお、生存可能年数は、被害者の年齢を厚労省の最新統計※に当てはめて判断します。

※参考:令和元年度簡易生命表

将来介護費の相場は、近親者であれば日額8000円です。

ただ、上記金額は目安に過ぎません。どの被害者についても、当面実施する介護等の内容(拘束時間や頻度含む)と共に、下記要素も総合的に勘案して判断されるべきものだからです。

・職業介護人(ヘルパー等)の必要性とその程度
・常時介護や随時介護を必要とするか
・被害者をケアする近親者の状況※、人数
・将来において想定されるケア内容の変化

※年齢、介護等による収入への影響、持病等

参考までに、訴訟で解決できたケースの代表例で、弁護士が損害賠償金を算定するための指標とされているものを紹介します。

【判例1】大阪地裁平成28年8月29日

被害者(48歳男性)が、頚髄損傷による四肢麻痺(別表1の1級1号)を負い、症状固定から約3年後に退院して在宅介護へ移行したケースです。

まず、常時介護を要し、職業付添人と妻による介護を平行する必要性および相当性があると認められました。

その上で、精神科受診中の妻による介護の範囲が時間経過と共に広くなっていること、介護サービスの現在の利用状況等と利用料が変化する可能性があることを考慮し、職業付添人と親族によるものを併せて日額1万8000円、平均余命まで合計8724万円が認められています。

【判例2】名古屋地裁平成23年10月14日

被害者(67歳主婦)が、第5頚髄損傷による軽度四肢麻痺(3級3号)を負ったケースです。

入浴の全てとボタンのある衣服の着脱に介助を要し、食事等の一応自立とされている日常生活動作についても左手自助具を使用しての自立に留まることから、「随時介護が必要な状態に近い」として日額5000円、合計2133万円余が認められました。

難しいのは、将来介護費の算定の根拠の立証です。

等級認定の申請で提出する「日常生活状況報告書」や、介護サービス利用時の領収書等だけだと、被害者ケアの実態はなかなか伝わりません。

そこで慰謝料増額の交渉では、過去に訴訟になった例等に基づいて、柔軟かつ丁寧な証拠収集が必要になります。

【参考記事】
交通事故の慰謝料を相場金額以上に増額させる方法

まとめ

交通事故で脊髄損傷を負ったケースでは、被害者本人と近親者についての慰謝料、逸失利益、生存可能年数に応じた介護にかかる費用等の「将来についての費目」が高額化します。

一方で、支払いの多寡を気にする加害者は、主観的かつ著しく低い金額で示談を成立させようとしがちです。

日常の基本的な動作がほとんど出来なくなる、回復の見込みもほぼない……こういった後遺症の重さに見合う金額を獲得するには、弁護士基準で正確に算定した上で、客観的な後遺症の状況を着実に立証しなければなりません。

本記事で紹介した事例は、全てみらい総合法律事務所での解決事例です。

弊社では、「実際に弁護士の前で介護してもらう」「その状況を写真や動画に収める」等の丁寧な立証作業と並行し、被害者の将来を最優先にした粘り強い交渉を行っています。

交通事故によって生じた深刻な被害は、家庭で抱え込みすぎることなく、すぐに弁護士に相談しましょう。