高額慰謝料が認められた3つの交通事故裁判例

最終更新日 2019年 05月06日
執筆:みらい総合法律事務所 弁護士 谷原誠

交通事故の被害者には、加害者に対して慰謝料を請求する権利があります。

しかし、慰謝料を手にするためには、やらなければいけない煩雑な手続きがあり、しかも正しい額の慰謝料を受け取ることができないケースが多くあるという問題もあります。

なぜ、被害者は正しい慰謝料を手にすることができないのでしょうか?

どうすれば、慰謝料の増額を勝ち取ることができるのでしょうか?

今回は、交通事故で後遺障害を負ってしまった場合の慰謝料について、高額慰謝料が認定された判例を紹介しながら、その種類や請求手続き、相場の金額、増額するための方法などについて解説します。

交通事故の手続きの流れと慰謝料・損害賠償請求を解説

交通事故が発生した後に被害者がとるべき手続きなどの流れは次のようになります。

交通事故の被害にあってケガをしてしまった場合、まずは病院での治療や入院、通院をすることになります。

その後、主治医から「症状固定」の診断を受けることがあります。

症状固定とは、これ以上の治療を続けても症状がよくならない、完治しない状態のことで、被害者には後遺症が残ってしまいます。

後遺症が残った場合、被害者は損害保険料率産出機構という機関に「後遺障害等級認定」の申請をします。

後遺障害等級には重い等級である1級から順に14級まであり、障害の程度や部位によって細かく分かれています。

自身の後遺障害等級が決定したら、示談交渉が開始されます。

示談交渉の相手は、加害者側の任意保険会社です。

双方が話し合いをして損害賠償金額が決定されますが、通常の場合、被害者が実際に手にすることができる金額よりも低い金額を提示されることになります。

それは、損害賠償金には3つの支払い基準があるからです。

①自賠責保険基準
自賠責保険に基づいて支払われるもので、必要最低限の金額になります。

②任意保険基準
各任意保険会社の内部基準に基づく金額で、示談交渉の際に提示される金額です。

自賠責保険では足りない部分の保険金が任意保険から支払われます。

じつは、被害者が本来受け取ることができる金額より低く設定されていることがほとんどです。

なぜなら、保険会社も営利目的の企業なので、支出をできるだけ抑えたいからです。

③裁判基準
裁判をした場合に認められる可能性のある金額で、弁護士基準ともいいます。

任意保険会社から提示された金額に納得がいかず、示談が決裂した場合、訴訟を提起することになります。

しかし、被害者個人が単独で裁判を起こすのは大変なため、依頼を受けた弁護士が裁判で主張するのがこの金額です。

最終的には、被害者が本来受け取ることができる適正な金額となります。

ところで、損害賠償金、保険金、示談金、慰謝料……さまざまな呼び方がありますが、これらはすべて同じものなのでしょうか?

じつは、同じものではありませんが、かといって、それぞれが別個のものというわけでもありません。

保険契約に基づいて保険会社から払われるので保険金、示談が成立した場合に支払われるので示談金、被害者が被った損害を賠償するので損害賠償金と呼びます。

これらは、状況に応じて呼び方が変わるだけで同じものです。

ただし、慰謝料は別です。

慰謝料は、治療費、通院交通費、休業損害、逸失利益など、さまざまある損害賠償項目全体の中のひとつということになります。

交通事故の慰謝料には、「傷害慰謝料」、「後遺障害慰謝料」、「死亡慰謝料」の3種類あります。

傷害慰謝料とは、ケガをしたことに対する肉体的、精神的苦痛を慰謝するために支払われるものです。

死亡慰謝料とは、被害者が死亡したことにより被った精神的損害に対して支払われるものです。

後遺障害慰謝料とは、被害者に後遺症が残ってしまった場合に、今後生きていくうえでの精神的損害を償うために支払われるものです。

ここでは、後遺障害慰謝料に絞って解説をしていきます。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料とは、精神的に被った苦痛に対して償うものですから、本来は事故ごと、被害者ごとにその程度は異なるはずです。

しかし、人の心の中を見て、それぞれの事案によって判断することはできないため、概ね相場が決められています。

後遺障害慰謝料の裁判基準による相場金額は次の通りです。

後遺障害等級 慰謝料

等級 保険金額
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
4級 1670万円
5級 1400万円
6級 1180万円
7級 1000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

なお、すでに保険会社から提示があった場合は、「損害賠償の内訳書」をよく見てください。

「後遺障害」の部分が「逸失利益」と「後遺障害慰謝料」に区分されていればいいのですが、一括して損害額が計算されているような場合は問題があります。

また、多くの場合、上記の金額より低い金額が提示されていると思いますが、いずれの場合も、その金額は正しいものではありません。

被害者個人では、加害者側の保険会社との示談交渉が難しいと感じたならば、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。

後遺症慰謝料が増額される場合

慰謝料には相場があるとはいえ、場合によってはその基準を超える判決がなされることがあります。

それは、次の3つのケースです。

・通常の場合に比べ精神的苦痛の程度が大きいと判断される場合

・他の損害項目に入らないものを慰謝料で斟酌(しんしゃく)しようとする場合

・被害者に特別の事情がある場合

それぞれ詳しく見ていきます。

(1)通常の場合に比べ精神的苦痛の程度が大きいと判断される場合

加害者側の過失の大きさや、事故後の態度の悪さなどにより、事故に対する被害者の精神的苦痛が増大したと認められる場合は、次のような事情が斟酌され、慰謝料が増額されることがあります。

なお、斟酌とは、事情や心情をくみ取ることです。

「加害者の過失の大きさ」

①飲酒運転
②スピードオーバー
③居眠り
④無免許
⑤信号無視
⑥未必的故意
⑦脇見運転

「加害者の事故後の態度の悪さ」

①不自然、不合理な供述(否認)
②謝罪なし
③証拠隠滅(同乗者に虚偽証言強要、事故後に飲酒等)
④救護せず
⑤逃走、ひき逃げ、逃走しようとする
⑥加害者側からの訴訟提起
⑦被害者に責任を転嫁するような言動

これらの事実がある場合は、迷わず慰謝料増額事由を主張して、増額賠償を勝ち取らなければなりません。

なぜ被害者が主張しなければいけないのかというと、民事訴訟では「弁論主義」というものがあり、主張しない以上、裁判所は取り上げてくれないからです。

(2)他の損害項目に入らないものを慰謝料で斟酌しようとする場合
たとえば、次のようなケースでは裁判所は後遺症逸失利益を認めず慰謝料を増額することで、結果としての賠償額のバランスを取ろうとすることがあります。

・接客業の女性の外貌醜状事案や歯牙傷害事案
・生殖機能障害や嗅覚障害等で後遺障害が認定されても、後遺症逸失利益が算定しにくいような事案

これは、法的に「慰謝料の補完的作用」と呼ばれるものです。
なお、逸失利益とは、交通事故で後遺障害を負わなければ仕事などで得られていたはずの利益のことです。

また、将来的に手術を行なうことは確実であるが、どの程度の時期に、どのくらいの費用がかかるのか現時点では不明であり、さらに手術により失われる労働能力も判然としない場合にも、それら損害は認めず慰謝料を増額することにより、結果としての賠償額のバランスを取ろうとすることがあります。

(3)被害者に特別の事情がある場合
後遺障害を負ったことで、被害者が次のような状況になった場合、被害者に特別の事情があり、通常の場合に比べて被害者の無念さがより大きいものと認められ、慰謝料が増額されることがあります。

①人工妊娠中絶
②将来、音楽教師になる夢を持ち努力したことが水の泡となった
③被害者の子が重度の肢体不自由児であったが、事故により子の訓練介護ができなくなり、子の身体機能に後退が見られた
④婚約破棄
⑤離婚

これらの事案は類型化できませんが、被害者側に何らかの特別事情があった場合には、裁判所は杓子定規ではなく、事案に応じた慰謝料を認定してくれることを示しています。

ですから、慰謝料が増額するような事情がある場合は、被害者は裁判を起こして、その理由を主張する必要があるのです。

その際には、交通事故問題に精通した弁護士が強い味方になってくれますので、一度相談してみることをお勧めします。

高額慰謝料が認められた判例を解説

ここでは、高額慰謝料が認められた判例を解説しますので、参考にしてください。

1.「ドライブレコーダー等の証拠から被告(加害者)の過失認否が慰謝料増額になり得ると認められた判例」

28歳男子の原告が、2006(平成18)年1月15日午後4時6分頃、京都市中京区内の交差点を自動二輪車で直進中、右折してきた被告が運転する、被告会社所有のタクシーと衝突し、遷延性意識障害で自賠責後遺障害等級1級3号の後遺障害を負った交通事故。

原告は、既払金を控除して3億4053万4372円、両親は各550万円を求めて訴えを提起した。

裁判所は、「本件事故発生の原因たる過失の大半は被告側にあり、このことは事故類型からも被告らにおいて容易にその内容を知ることができたし、被告会社所有のドライブレコーダーはじめ、関係証拠からも疑う余地が乏しいにもかかわらず、被告らが過失責任を一切否認する態度を、本件訴訟の口頭弁論終結時に至るまで、ほぼ一貫して取っていることは、慰謝料の加算増額の理由となり得る事情ではあるが、原告が主張する金額を考慮すると、その金額の通り、傷害慰謝料は440万円、後遺障害慰謝料は2800万円、両親の慰謝料額は各500万円とするのが相当である」と認定した。

2.「弟が運転する大人用自転車の荷台のない後部に立ち乗り同乗中、被告の運転する乗用車と衝突し、後遺障害等級1級1号を負った13歳女子に、極めて危険な乗車姿勢等で45%の過失相殺を適用した判例」

12歳の弟が運転していた大人用自転車の荷台のない後部に13歳女子中学生が立ち乗り同乗中、T字路交差点に左折進入して被告が運転する乗用車に衝突され、脳挫傷等を受傷した交通事故。

約1年2ヵ月後、症状固定し、自賠責後遺障害等級1級1号が認定され、常時介護を要する後遺障害を残したことから、既払金880万円を控除して1億2311万6117円、両親は各375万円の慰謝料を求めて訴えを提起した。

裁判所は、「12歳の弟が運転していた大人用自転車の荷台のない後部に立ち乗り同乗していたこと、ヘルメット不着用で脳挫傷を負ったこと等から原告の乗車姿勢は極めて危険で、これが重大な障害を残す原因になった」として、45%の過失相殺を適用して、入通院分400万円、後遺障害分2800万円、両親分各500万円の合計4200万円を慰謝料として認めた。

3.「重度後遺障害を残した25歳の大手企業勤務の独身男子の慰謝料が5000万円認定された判例」

1988(平成元)年4月13日午後10時30分頃、夜食を買うために乗車定員4人の原告所有の自動車に6人が乗車し、酒に酩酊した同僚が運転して起こした交通事故。

静岡県浜名郡内を進行中、大型貨物車と正面衝突し、原告は頭蓋亭骨折、遷延性意識障害等で637日間入院の後、自賠責後遺障害等級1級3号相当の精神・神経障害を残した。

そこで、損害の填補を控除して1億6951万0668円を求めて訴えを提起した。

裁判所は、酩酊していることを承知で同僚に運転することを許した被害者に対して、3分の1の飲酒承知同乗減額を適用し、総額1億8406万9630円、慰謝料は5000万円を認定した。

困った時は交通事故に詳しい弁護士に相談を!

ここまで、交通事故で後遺障害を負った場合の慰謝料について解説しました。

・任意保険会社から提示される慰謝料は本来、被害者が手にすることができる適切な金額よりも低い。

・慰謝料が増額される条件はさまざまあるが、実際に認定されるためには法的な立証・主張が必要である。

これらの理由や、前述の判例からも、被害者が単独で加害者側の任意保険会社と示談交渉したり、裁判で闘って正しい慰謝料を勝ち取ることは、並大抵のことではないことがおわかりいただけたと思います。

このような場合は、一度、弁護士に相談してみることをお勧めします。

詳しい解説はこちら⇒
「交通事故を弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点」
https://www.jikosos.net/basic/basic6/bengoshi

みらい総合法律事務では、交通事故被害者の弁護に精通した弁護士たちが無料相談を行なっています。

まず、無料相談を利用して、納得のいく説明を受けたならば、本格的に依頼をするという相談者も多くいらっしゃいますので、後遺障害等級が認定された方は、ぜひご連絡いただければと思います。