子供が交通事故に遭った場合の慰謝料の計算
目次
交通事故の損害賠償項目の中でも慰謝料は大きなウエイトを占めるため、とても重要なものですが、みなさんは慰謝料の真実についてご存じでしょうか?
多くの被害者とご家族が正しい金額を受取っていないとしたら……これは怖いことだと思いませんか?
特に子供が被害者になってしまった場合、未来を奪われかねないのですから、親御さんの心痛、心配は計り知れません。
そこで本記事では、交通事故で子供が被害に遭った場合の慰謝料の相場金額について解説します。
これから、子供が交通事故に遭った場合の慰謝料の正しい相場金額などについて解説していきますが、
子供の交通事故の入通院慰謝料の計算
自賠責基準による入通院慰謝料
・自賠責基準での入通院慰謝料は、1日あたりの金額が4300円と定められています。
・対象となる入通院の日数によって金額が変わってきます。
・1日でも通院していることが受け取る条件になります。
<入通院慰謝料の計算式>
4300円(1日あたり) × 入通院日数 =
入通院慰謝料
※改正民法(2020年4月1日施行)により改定されたもので、2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は4200円(1日あたり)で計算する。
<慰謝料計算における注意点>
次のどちらか短いほうが入通院慰謝料として採用されます。
B)「実際に治療した日数×2」
たとえば入院はせず、治療期間が3か月(90日)で、平均して3日に1回(計30日間)通院した場合だと……
B)4300円×(30日×2)=258,000円
となり、入通院慰謝料はB)の258,000円が採用されることになるので注意が必要です。
弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料
算出する際は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している『損害賠償額算定基準』に記載されている算定表を用います。
これは弁護士や裁判所も使用するもので、ケガの程度によって「軽傷用」と「重傷用」の2種類があります。
<弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料の算定表(むち打ちなどの軽傷用)>
「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料の算定表(重傷用)」
たとえば、入院はせずに通院期間が3か月の場合は、軽傷用の「入院0か月」と「通院3か月」が交わったところの数字を見ます。
「53万円」が弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料になります。
後遺障害慰謝料は等級によって金額が変わってくる
主治医から症状固定の診断を受けて後遺障害が残ってしまった場合は、後遺障害等級の認定を受けると、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の金額表>
後遺障害慰謝料は表のように概ねの相場金額が決められているのですが、入通院慰謝料と同様に自賠責基準と弁護士(裁判)基準では金額に大きな違いがあることに注目してください。
やはり、弁護士(裁判)基準で算出した慰謝料で示談をすることが大切になってきます。
死亡慰謝料は事故の状況によっても金額が変わる
自賠責基準による死亡慰謝料の相場金額
自賠責基準による死亡慰謝料は、「被害者本人の死亡慰謝料」と「ご家族などの近親者慰謝料」を合計した金額として支払われます。
(一律)
・近親者慰謝料:配偶者・父母(養父母も含む)・子(養子・認知した子・胎児も含む)の人数によって金額が変わります。
1人の場合 | 550万円 |
---|---|
2人の場合 | 650万円 |
3人以上の場合 | 750万円 |
※被扶養者の場合は上記の金額に200万円が上乗せされます。
弁護士(裁判)基準による死亡慰謝料の相場金額
弁護士(裁判)基準の場合、被害者の方の家庭での立場の違いなどによって、次のように相場金額が設定されています。
<死亡慰謝料(弁護士(裁判)基準)の相場金額>
被害者が一家の支柱の場合 | 2800万円 |
---|---|
被害者が母親・配偶者の場合 | 2500万円 |
被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合 | 2000万~ 2500万円 |
ただし、これはあくまでも相場の金額であり、事故の状況や加害者の悪質性(ひき逃げ、信号無視、飲酒運転等)などの要因によっては慰謝料額が増額する場合があります。
こうした判断は交通事故に強い弁護士でなければ判断できない部分ですから、「正しい慰謝料額がわからない」「加害者側との示談交渉がなかなか進まない」といった場合は一度、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
死亡慰謝料は相続人の相続順位によって分配割合が変わってきます。
詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
近親者慰謝料は誰が受け取ることができる?
近親者慰謝料は、受取人が両親(父母)、配偶者(夫・妻)、子供の場合、概ね被害者ご本人の慰謝料の1~3割ほどの金額になります。
なお、内縁の夫や妻、兄弟姉妹、祖父母にも認められる場合があります。
よくわかる動画解説はこちら
本人分とは別の近親者慰謝料を
請求できる場合とは
(傷害、後遺障害、死亡)
実際に慰謝料を計算してみましょう!
入通院慰謝料
まず、比較的軽傷の場合で考えてみます。
【ケース①:自賠責基準】
被害者:8歳女児
傷害の内容:腕、足の打撲
後遺障害:なし
入通院期間:入院なし、通院1か月(週2回の通院)
4300円×(2日×4週×2)=6万8800円
【ケース①:弁護士(裁判)基準】
前述の<弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料の算定表(むち打ちなどの軽傷用)>の金額表から、入院0(ゼロ)と通院1か月が交わったところの数字を見てください。
「19」とあるので、この場合の慰謝料額は19万円となります。
【ケース②:自賠責基準】
被害者:10歳男児
傷害の内容:手・足首の骨折
後遺障害:なし
入通院期間:入院1か月、通院3か月(平均週1回の通院)
4300円×(30日+24日)=23万2200円
※30日=入院1か月
※24日=1日×12週×2
【ケース②:弁護士(裁判)基準】
前述の<弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料の算定表(重傷用)>の金額表から、入院1か月と通院3か月が交わったところの数字を見てください。
「115」とあるので、この場合の慰謝料額は115万円となります。
後遺障害慰謝料
次に、治療したものの後遺障害が残ってしまった場合で考えてみます。
【ケース③】
被害者:6歳男児
後遺症の内容:外貌醜状(顔に傷跡が残ったもの)
後遺障害:9級16号
入通院期間:入院1か月、通院3か月(平均週2回の通院)
前述の<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の金額表>の後遺障害等級9級のところを見てください。
「249」とあるので、自賠責基準の慰謝料の相場金額は、249万円となります。
弁護士(裁判)基準の場合も9級のところを見てください。
「690」となっているので、弁護士(裁判)基準の相場金額は、690万円となります。
【ケース④】
被害者:11歳女児
後遺症の内容:高次脳機能障害
後遺障害:3級3号
<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の金額表>の後遺障害等級9級のところを見てください。
「861」とあるので、自賠責基準の慰謝料の相場金額は、861万円となります。
弁護士(裁判)基準の場合は、「1990」となっているので、弁護士(裁判)基準の相場金額は、1990万円となります。
参考記事:国土交通省「自賠責後遺障害等級表」
死亡慰謝料
【ケース⑤】
7歳女児が死亡したケースで考えてみます。
前述の<死亡慰謝料(弁護士(裁判)基準)の相場金額>の表を見てください。
被害者が子供の場合の相場の慰謝料額は、2000~2500万円になるので、通常はこの範囲内の金額が認められることになります。
なお、慰謝料以外の損害賠償項目には逸失利益もあります。
逸失利益とは、後遺障害が残ってしまったり、亡くなることがなければ将来的に得られたはずの収入(利益)のことです。
逸失利益も金額が大きくなる項目の1つですから、交通事故の損害賠償では重要なものになります。
みらい総合法律事務所で解決した実際の増額事例
ここでは、当事務所で実際に解決した慰謝料などの増額事例をご紹介します。
弁護士が示談交渉に入ると、どのくらい増額するのか実感していただきたいと思います。
解決事例①:5歳男児の交通事故で約1500万円増額
5歳男児が道路を横断していた際、直進車に衝突された交通事故です。
被害者男児は、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨骨折など重傷を負い、治療のかいなく症状固定により、高次脳機能障害の後遺症が残ってしまいました。
後遺障害等級は7級4号が認定され、加害者側の任意保険会社から約2123万円の示談金が提示されました。
ご両親が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用したところ、弁護士から「まだ増額が可能」との意見があったため、そのまま示談交渉を依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉し、丁寧に立証をしていったことで、最終的には1500万円以上増額して約3664万円で解決した事例です。
解決事例②:7歳男児の交通事故で約2300万円増額
7歳の男児が道路に座っていたところ、自動車に衝突され、脳挫傷などの傷害を負った交通事故です。
後遺障害等級は2級1号が認定され、ご両親が加害者側の任意保険会社と交渉したところ、慰謝料などで約9742万円となったところで、みらい総合法律事務所に相談にいらっしゃいました。
弁護士が精査したところ、「さらに増額が可能」との判断だったため、そのまますべてを依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉したところ、1億2000万円に増額。
弁護士の見解としては、「提訴して裁判で争えば、まだ増額可能」というものでしたが、ご両親が示談での解決を望んだことで、示談成立となったものです。
保険会社の提示額から約2300万円増額した事例です。
解決事例③:7歳女児の死亡事故で約1800万円増額
7歳の女児が自動車に同乗中、交差点で直進車に衝突され死亡した交通事故です。
四十九日が過ぎたところで、加害者側の任意保険会社が慰謝料などの損害賠償金(示談金)として、4248万円を提示。
この金額に疑問を持ったご両親が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、そのまま示談交渉を依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉しましたが決裂したため提訴。
最終的には高等裁判所まで争われ、6000万円で解決した事例です。
当初提示額から約1800万円増額したことになります。
その他の解決事例はこちらから
慰謝料でお困りの場合は弁護士に相談してください
■加害者側の保険会社から金額の提示があったが、適切なのかどうかわからない
■本当に正しい慰謝料額が知りたい
■示談交渉が進まず困っている
■できるなら増額を勝ち取りたい
このような場合は一度、弁護士に相談してみることをご検討ください。
加害者側の任意保険会社の担当者は保険と交渉のプロですから、被害者の方のご家族が慰謝料の増額を主張しても、まず応じることはありません。
しかし、交通事故の専門家である弁護士が示談交渉に入ると、提示額の2倍、3倍、さらにそれ以上の増額に応じざるを得なくなります。
納得がいかないかもしれませんが、これが交通事故の損害賠償の現実なのです。
代表社員 弁護士 谷原誠