親の交通死亡事故で胎児に損害賠償請求権があるか?

最終更新日 2022年 05月27日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】死亡事故のご遺族が示談交渉でやってはいけないこと

 

質問

主人が交通事故で死亡してしまいました。

私は現在妊娠中で、もうすぐ第一子を出産の予定です。

まだ生まれていないお腹の子供にも損害賠償請求の権利はあるのでしょうか?

また、主人の両親は健在なのですが、主人の両親にも損害賠償請求の権利はありますか?

 

今回は親の交通事故で、胎児に損害賠償請求権があるか、
について、弁護士が解説します。

損害賠償請求権者

タクシーの死亡事故

胎児が損害賠償請求権を有するかどうかについては、死亡事故の場合に法律上の損害賠償請求権者は誰かを理解しておく必要があります。

死亡事故の場合の損害賠償請求権については、被害者が、損害賠償請求権を取得し、死亡により相続人にその損害賠償請求権が承継されると理解されています。

そうなると、相続人が損害賠償請求権を有することになります。

相続の順位としては、結婚していれば、配偶者が常に相続人になります。

そして、子がいる場合には、子が配偶者とともに相続人となりますが、配偶者がいなければ、子が全てを相続します。

子がいない場合には、親が配偶者とともに相続人となりますが、配偶者がいなければ、親が全て相続します。

子も親もいない場合には、兄弟姉妹が配偶者とともに相続人になります。

相続分の割合は、配偶者と子の場合には、それぞれ2分の1ずつ。

配偶者と親の場合には、配偶者が3分の2、親が3分の1です

配偶者と兄弟姉妹の場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

【参考記事】
【交通死亡事故の相続】被害者の親族で誰が慰謝料受け取ることができるのかを解説

死亡事故の損害賠償の内訳

死亡事故の損害賠償の内訳

死亡事故の場合には、葬儀費用、死亡慰謝料、逸失利益、近親者慰謝料等を請求することができます。

葬儀費用は、葬儀にかかった費用であり、原則として、150万円を限度として、実際にかかった金額を請求します。

死亡慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛に対応するものであり、家族での地位によって金額が違ってきます。

・被害者が家族の中で一家の主の場合には2800万円、
・配偶者又は母親である場合には250万円、
・その他の場合には2000万円~2500万円

 

とされています。

逸失利益は、被害者が生きていれば、将来稼げたはずのお金に対応するものです。

計算式としては、

基礎収入額× (1 −生活費控除率) ×就労可能年数に対応するライプニッツ係数)

です。

基礎収入額は、交通事故のあった前の年の実際の収入額を基礎とするのが原則です。

生活費控除率と言うのは、収入の中から必ず生活費が出ていくのでその割合を控除するものです。

ライプニッツ係数と言うのは、逸失利益は、将来稼げるであろうものを今受け取ることになるので、その分の中間利息を控除するものです。

近親者慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛である死亡慰謝料等は別に、近親者の精神的苦痛を受けることからこれに対応するものです。

【参考記事】
【交通死亡事故】慰謝料請求…ご家族がやるべきことは?

慰謝料が相場より増額する場合がある

慰謝料が相場より増額する場合がある
上記のように、死亡慰謝料には、一応の相場があります。

しかし、裁判所は、相場に拘束されるわけではなく、必ず相場の金額で判決を書かなければならない、というわけではありません。

事案によっては、相場より総額させて支払を命じることがあります。

どのような場合に増額するか、ということですが、加害者に飲酒運転などの悪質性がある場合、被害者の親族が精神疾患になったような特別な事情のあらう場合などです。

慰謝料を相場より増額した裁判例を紹介します。

被害者は、33歳男性です。加害者は車上荒らしをしたことにより、パトカーに追跡されたことから、逃げるために時速80キロで反対車線を走っていて、被害者と衝突しました。

しかし、加害者は、被害者を救護せず、また、被害者は結婚式を挙げたばかりであった、という特別な事情もありました。

そこで、裁判所は、慰謝料の相場としては、2800万円のところ、本人分3200万円、妻分400万円、父母合計500万円の合計4100万円を認めました。

 

【参考記事】
交通事故の慰謝料を相場金額以上に増額させる方法

胎児の権利

胎児の相続については、民法886条1項で、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」と規定されています。

また、民法721条では、「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。」と規定されています。

したがって、まだ生まれていないお子さんにも、加害者に対して損害賠償を請求する権利があります。

この場合の相続分は、配偶者であるあなたと、生まれてくるお子さんと、それぞれ2分の1ずつとなります(民法900条1号)。

しかし、もし死産であった場合には、886条1項の規定は適用されません(民法886条2項)。

その場合には、あなたとご主人のご両親が相続人となり、相続分は、配偶者であるあなたが3分の2、ご主人のご両親が3分の1となります(民法900条2号)。

被害者の両親の権利

上記で説明した通り、あなたのお子さんが無事に生まれた場合には、相続人はあなたとお子さんになるため、ご主人のご両親は相続人となることはありませんので、ご主人のご両親は、ご主人の損害賠償請求権を相続することはできません。

では、ご主人のご両親はなんの請求もできないかというと、そうではありません。

民法711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と規定しており、被害者の父母、配偶者、子という近親者に固有の損害賠償請求権を認めているからです。

これは、被害者が亡くなったことによって、被害者と近い関係にあった近親者自身も精神的苦痛を被るであろうことから認められたものです。

したがって、ご主人のご両親も、加害者に対し慰謝料の請求をすることができます。

ただし、死亡慰謝料の総額については、過去の裁判例からある程度の基準が設定されており、相続人の数によって慰謝料の総額が増減するわけではありません。

被害者であるご主人が一家の支柱であった場合、死亡慰謝料は2800万円が裁判基準となっていて、それを被害者の妻、子、両親で分けることになるのです。

配分については、遺族間の具体的な事情などを考慮して決められることになります。

たとえば、本人分2100万、配偶者300万、子200万、父母各100万などというように分けられることになります。

交通事故における胎児の法律問題については、難しいと思いますので、弁護士にご相談ください。

 
【参考記事】
【近親者慰謝料】交通事故の被害者のご家族が受け取ることができる慰謝料を解説

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